止まる指先
「はい。あの私からも条件いいですか?」
「は? 条件? なんでお前から?」
雷馬は腕組みをし偉そうに突っ立ってすみれを見おろした。
「…駄目ですか?」
「…言ってみろ聞いてから駄目か判断する」
なんとなく苛立っている雷馬。
威嚇された野うさぎのように小さくなってすみれは真っ赤になりながら、もぞもぞと言葉を発した。
「お、おさわり禁止で」
瞳を大きく見開いた雷馬。
顔を赤くして相当怒っている様で
「な! 何言ってやがる。お前おさわり? ば、ばかだろ。ありえねえ」
すみれは、その言葉に心底ホッとしていた。
―――ありえないよね。良かった。
雷馬くんが私の事をどうこうしたいなんて思うわけないよね。
なんだ、そうか。ほっとしたーー。
「ありえねえ。おさわり? そんなのは中年親父がキャバクラで言われる言葉だろが。俺のは」
雷馬はいつのまにかすみれの隣にすわり、すみれの腰をぐいっと引き寄せた。
「俺のは、そういう低俗な言葉で表現される覚えがねえし、好きでなくても
こう近くにいたら、お前ではあっても手を出さないとはいいきれない。ナゼかって? 俺はオスだからな」
雷馬の大きくて長い指がすみれの髪を撫でる。
すみれの首のうしろに雷馬の手がまわって、やがて親指がすみれの顎のラインをそっと撫でた。
そして、甘い声で
「やるの? やらないの? すみれ。俺の女になるバイト」
と聞かれた。
雷馬の指先がすみれの唇に触れ、唇の真ん中に指先が止まった。