妄想
「にぶいな、どこが才女なんだか。お前とのデートの回数は5回」
「5回って、なんで?」
「5回もデートすりゃあ、お前が俺にふさわしい相手かそうでないかぐらい判断つくからな」
「あの…よく意味が?」
イライラしたように雷馬が早口でまくし立て始めた。
「にぶい!よく聴け。今度から俺と逢う時は聞き返さない! お前から俺に触らない! お前から俺に話しかけない! これを守れ。いいな。でないと約束の金は……やれない」
ーーーお金は…欲しい。お父さんの入院費は正直言って毎月きつい。お母さんの稼ぎだけじゃ毎月赤字続きでお金なんかどんなにあっても困らない。
こんな屋敷に住んでるおぼっちゃんにとって
こんなお金きっとはした金程度のものなんでしょう。
なら、もらったっていいじゃん。
たった5回デートすればいいんなら。
でも、この人が恐ろしく手の早い人だったら?
すみれは勝手に雷馬に襲われる場面を想像して身震いした。
すみれがあれこれ悩んでいると、しびれを切らしたように雷馬が
「遅い! うざい! 悩む事か? この俺様がデートしてやった上に大金まで手に入るんだぞ。いったいどこで悩むんだ? 悩むところが一つも無いだろ。それどころか俺がお金を貰いたいくらいだろが!」
そう叫んで立ち上がり部屋の中をうろうろと
歩き回った。
「あ」
そう言いかけてすみれは口をつぐんだ。
「なんだ? 言いかけてやめんな! 全くなんなんだよ」
「でも私から話かけるなって言われたので」
雷馬は地団駄をふんだ。
「真面目か! 全く。今は話しかけてもいいことにしてやるからさっさと話せ!」