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5回だ
「でも、でも家庭教師のために呼んだんじゃないって。それに家庭教師のバイトでいくらなんでも学校一の成績だとしても……
こんなにもらえるはずないし」
雷馬は、ゆったりとソファにもたれかかる。
「そのとおり。これはデート代金だ」
「デート代金?」
「そ。すみれが俺とデートする。その約束と引き換えにこの金をぜーんぶやる」
「へ? あのなんで私があなたと、そのデートする事に?」
雷馬はさっきとは、うってかわって冷たくてするどい瞳をすみれに向けた。
すみれの全身を値踏みするように上から下まで舐めるように見た後、吐き捨てるように
「俺だって、好きでおまえみたいな女とデートもしねえしキスもしねえ。そもそもタイプじゃないからな」
すみれは雷馬のうって変わった冷たい言い方にかなりびっくりしていた。
ーーーさっきまでかわいいとか、本気になんかしてないけど。してなかったけど言ってたのに……。
気のせいだった?
何? 妄想だった?
嘘…
なに? この豹変振り
「5回」
唐突に雷馬は片手を広げて見せた。
「5回?」