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手が早いライアンの事情


ライアンの事情は、その後雷馬から聞いた。幸いライアンは、まだ変身時に苦しくなったりしていないのであせらずに自分の花嫁を探すと勢い込んでいた。




「僕も絶対人間になりたい!狼で一生終われないよ」



朝食の席で朝からステーキにかぶりつきながらライアンは言った。


「はいはい・・・そうだな。頑張って花嫁を探せ」

雷馬は涼しい顔でナプキンで口を拭った。



ライアンは何故かイギリスへ帰らず雷馬のところでしばらく暮らすといい始めていた。




なんでも向こうの家族やら親戚は

みんな事故や病気で亡くなったそうでライアンは孤独らしかった。



だから仲間であるところの雷馬に

親近感を覚え慕うようになっていった。


「じゃあ、先に行く」

雷馬が立ち上がると


「えーーー僕も一緒に行くよ。学校」


いそいで肉を口に放り込むライアン。


「よる所があるんだ。だから学校へは 一人で行け。」

雷馬は、そう言って屋敷を出た。




雷馬が寄りたかったところは、すみれの家だった。



運転手つきの車ですみれの家に乗り付けると雷馬は 、すみれの家のインターフォンを押した。


「はーい、どちら様?」



出てきたのは、すみれに良く似た顔のすみれの母だった。




学校ですみれは雷馬を探していた。


教室にも


屋上にも


裏庭にも姿はなかった。

まだ・・・来てないのかな?



「すみれちゃん!おはよう。傷は平気?」

ライアンが気軽な調子で話しかけてきた。



ライアンは、また留学生としてしばらくこの学校へ通う事になっていた。



「ああ、ライアン。おはよう。傷は大丈夫だよ。気にしないで・・

それより雷馬くんは?」




「なんか用事があるから先に行けって言われた」

ライアンは子供みたいにすねたように言った。



「そう・・・」



雷馬くんに早く逢いたいのに。


すみれは雷馬との極上なキスを思い出し赤面した。


「あれ?すみれちゃん?熱でもある?顔が赤いよ・・・」



ライアンがすみれの顔に顔を寄せ

額同士をくっつけた。


「ひゃ・・・////」

びっくりして固まるすみれ。



「熱・・・ないのかな?

熱いな・・やっぱり・・・うぎゃ!」

ライアンは変な声を出して後ろへすっ飛んでいった。




正確には飛ばされていた。




「雷馬くん!今来たの?」



「ああ」

怒ったように言うと廊下に飛ばされて座り込んでるライアンに

「すみれに気安く触るな!」

と強い口調で言った。




「雷馬くん ・・・・

あのさ・・・ライアンは私に熱があるのかって心配してくれただけだから・・・そんなに怒らないで」


雷馬は息を吐くと、すみれを強い力で抱き寄せた。



「そんなことでもすみれに朝一番で触れるのは俺だけだから。


逢いたかった・・・

片時でも離れたくない・・・んーーーー」


強く抱きしめる雷馬。





「雷馬くん・・・・」



すみれは雷馬の胸に抱かれてますます熱くなっていた。



「おまえ!熱い・・・・本気で 熱があるのか?すみれ」

雷馬が心配そうに腕の中のすみれを見る。

その声は甘くて凄く優しい。



「大丈夫だよ・・・その・・雷馬くんのこと考えてたら・・・

熱くなっただけだから・・・」




「俺のこと考えていたのか?すみれ・・・」


「・・・・うん」


雷馬は、すみれの額にキスをした。


「食べたいくらいに可愛い」



「食べないで!」



「冗談だ。ほんとに食べたりしない。舐めるだけ」



そう言って雷馬は、すみれの手をとりすみれの人差し指をぺろりと舐めた。


「な!////」

ますます赤くなりっぱなしのすみれ。



「・・・はやく、すみれの全てを俺のものにしたい」



「雷馬くん、それって・・・」



「時間がないんだ。すみれ」

真剣に語る雷馬。




そう・・・雷馬には時間がない。




それは生涯をかけて愛する人を見つけただけでは時間は止まってくれない・・・





契り・・・



人狼である雷馬の全てを受け入れ

全てを愛して生涯を結ぶ契約をしなければ雷馬は人間のままでは

いられないのだから・・・



「わかってるよ。私、覚悟は出来てる・・・・その・・・雷馬くんのこと好きだから・・・

雷馬くんにずっと人間でいてもらいたいよ。」

雷馬を見上げるすみれ。



覚悟はできているつもり・・・



「すみれ・・・・じゃあ・・・

改めて言うよ。

・・・すみれ・・・

俺の花嫁になって?」


雷馬のプロポーズだった。




「・・・・よろこんで」


怖くなかった。


雷馬が救われるなら・・・

雷馬が一生一緒にいてくれるなら。




笑顔になった雷馬は、すみれに顔を寄せた。


キスされると思って、すみれは真っ赤な顔で瞼を閉じた。



でも・・・

「ふーーーーっ」

すみれの瞼に雷馬の息がかけられた。



「なに?!」

理由がわからず瞼をあけるとニヤッと笑う雷馬。


「学校内だよ。すみれキスなんて・・・・されると思った?


まさか・・・まさか?


でも・・・期待しちゃった?」




「//////イジワル!」


すみれは雷馬の胸を叩いた。





「ねね!お二人さんの熱々ぶりは

もういいから僕の花嫁も探してって!」




ライアンは、すみれと雷馬の間に

割り込んできた。




「ライアン!邪魔すんな。自分で探せ!」



邪険にされたライアンは野次馬的に集まってきた女子達に片っ端から声をかけた。


「ねね!君!今日から家庭教師になって!」



「ねね!君!うちで狼男のDVD見ない?」



ライアンはどこかで聞いたような台詞で女子をナンパしていた。





「なんかライアンの台詞って」

すみれが考えるように雷馬を見た。


「ま・・・まあ・・・あれだ。

あいつも本格的に花嫁探してやんないと可哀想だからな・・・・

同じ仲間として・・・」



言葉につまりながらも雷馬はライアンを温かい目で見ていた。



次回、明日午前に更新します。


うまくいくと思われた2人に

暗雲が……。




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