表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/32

極上の時間

お姫様だっこをして雷馬が部屋へすみれを連れて行く途中で、すみれがうっすらと瞼をあけた。


「雷馬・・・・くん なの?」



「そうだ。俺以外に誰がお前をこうやって抱いて歩くんだ?」


当たり前のように平然と歩く雷馬。



「雷馬くん・・・濡れてるね・・・」



雷馬の髪から雨の雫がすみれの上にぽたぽたと落ちてきていた。



雷馬の裸の胸にも雨の雫がつたっていた。


「え?雷馬くん・・・服は?」



「狼になったから服は破れた」



すみれは雷馬に抱っこされながら顔を両手で隠した。


「もしかして・・・・下も・・・・はだかなの?」




「当たり前だ」


またしても平然という雷馬。



雷馬は部屋につくとベットの上にゆっくりとすみれを下ろした。



すみれは両手で顔を隠しながら


「ら・・・雷馬くん・・・私・・・大丈夫だよ・・その怪我とかしてないから・・・」




「血が出てる・・・」

雷馬はすみれの腹部あたりの服が少し破れて血が出ていることを指摘した。



「ぁ・・・本当だ・・・気がつかなかったよ・・・」



「待ってろ。かかりつけの医者を呼ぶ」



「そんな大事じゃ・・・・」



「狼に食われかけたんだぞ。狂犬病の疑いもあるからな」

雷馬は傷の大きさを見るためにすみれの服をめくろうと手をかけた。


「きゃ・・・・ちょっと!雷馬くん・・・・」

慌てて、すみれは服を押さえた。


その時、顔を覆っていた手を離したすみれの目に雷馬の全裸が見えてしまった。



「きゃあああ!ごめん!見えちゃった・・・・雷馬くん。早く服を着たほうが・・・・」


真っ赤になって顔を覆うすみれ。



「そうか?遅かれ早かれお前には見せるものだからいいと思ったが・・・」


雷馬は顔をしっかりと覆っていたが覆いきれていない額に軽くキスをした。



「無事で良かった。すみれ・・・。とりあえず・・・医者と着替えだな」


そう言って雷馬が部屋を出て行く音を確認して、すみれはやっと手を顔から離した。


「あ・・・つい・・・凄く・・・恥ずかしい・・・ああ・・・・どうしよう・・・見えちゃったし・・・・」

すみれは独り言を連発してやはり真っ赤になっていた。




「ここにいたんだね。君は・・・」


執事に着替えをもらって、すみれが濡れた服を着替えている途中で部屋にライアンが顔を見せた。



「きゃああああ!誰ですか!」

服で体を隠すすみれ。



「あーーーーごめん。とりあえず・・・・部屋出るから・・・そんなに叫ばないで」

ライアンは苦笑いしてドアを閉めた。




少しして部屋をノックする音。




着替えを即効でし終わったすみれは

「・・・・どうぞ」

と返事をした。





「ごめんねー。たびたび・・・・怪我してない?」

心配そうなライアン。


「あ・・・あなた去年、学校に来てた留学生・・・ですよね?」


すみれは去年かっこいいと評判だった留学生を思い出していた。


クラスは違ったが学校でたくさんの人に取り囲まれているライアンを良く見かけていたから顔も名前も覚えていた。



「そう。覚えてくれてたんだ・・嬉しいな。」


「で?あなたは・・・・どうしてここに?」


「うーーーん。いろいろあって、雷馬くんにここに連れてきてもらったんだ。

ともかく・・・意味わかんないだろうけど・・・謝っておくね。ゴメンナサイ!もう二度としません・・・・」


泣きそうになってる青い瞳を見てると吸い込まれそうになっていたすみれは、慌てて首を振った。


「あの・・・・わかんないから・・・なんで謝るの?あなたが」


そこに雷馬が医者と入ってきた。



雷馬がライアンをどかしてすみれの前にでると

「それは、そいつも俺と同じ種類の人間だからだ。」

そう説明した。




「え?同じ?」


「そうだ。さっきお前をかっさらっていったのはライアンだ。」


「え?それじゃあ・・・・ライアン君も?」



「そう言う事だ」



すみれは医者がいるのにこんな話していいのかと戸惑っていた。


「とりあえず狂犬病の予防注射と傷の手当をするから・・・ライアンは部屋を出てろ」


「ねえ・・・雷馬くん・・・いいの?こんな話して・・・」


医者の顔を窺うすみれ。


「ああ、かかりつけの医者だから大丈夫だ。俺らの仲間だから」

雷馬はベットに腰を下ろした。




ライアンを部屋の外へ出してすみれの腹部の

傷の手当が始まった。





「すみれ・・・俺・・・学校で舞香とキスした」

急に雷馬からそんなことを報告されてすみれは悲しい気持ちになっていった。



「うん・・・少し見ちゃったから・・・知ってる」

すみれは目を伏せた。

聞きたくなかった。


すみれのまつげが震えていた。



「何にも感じなかったんだ」


雷馬は舞香とのキスを思い返していた。



何も伝わらないキスだった。






「え?」



「前は舞香とキスするとこう体が熱くなって

とろけ出すようになって…抑えがきかなくなるような極上のキスが味わえたんだ・・・


でも今日は何にも感じなかった・・・

それどころか嫌悪感さえ芽生えたんだ・・・」


雷馬は、まっすぐにすみれの顔をみつめた。


「でも・・・そのキスのおかげで気がついた。自分の気持ち・・・」


雷馬はすみれの肩に手を置いた。


「俺はお前が好きになってたみたいだ。すみれ」


「雷馬くん・・・ほんとに?」


「ああ、ライアンにお前を奪われて気が狂いそうになった。命をかけてもお前を守りたいって、そう思えたんだ」


雷馬は優しく微笑んだ。



「お前は?俺が狼でも好きだって言ってくれたろ?」


「うん・・・」


「その気持ち・・・今も変わってないか?」

雷馬の真剣な表情。




どの顔も雷馬の顔は全部好き・・・


切なそうなつらそうな顔。


苦笑いする顔。


微笑んだ優しい顔。



それは雷馬が狼でも変わらない・・・



すみれは

「変わらないよ。雷馬くんが好き」

はっきりと雷馬の瞳をみて言えた。


「どんな雷馬くんも、雷馬くんにはかわりないもん。」



雷馬はニッコリ微笑んですみみに顔を近づけた。


額がぶつかるくらいに近づくと

「・・・試したい・・・いいか?すみれ」

低くて甘い声を発した。



「え?なに?」




「お前とのキス・・・きっと・・・・」


きっと極上のキスがすみれとなら味わえるはず・・・



言葉を言い終わらないうちに雷馬の唇が、すみれの唇にそっと触れた。


瞼をゆっくりと閉じたすみれ。



触れただけのキス。



それだけで、すみれは体から力が抜けていくのを感じた。



望んでいたもの・・・・


ずっと待ち望んでいたもの雷馬が愛しい・・・



すみれのファーストキスは 

言い表せないほどに

甘くて


信じられないほどに

極上の味がした・・・・



次回、今夜20時更新です。



やっと、雷馬くんが救われる!


そして、すみれとの愛が

やっと育まれそう……。かな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ