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奪われた愛

「すみれーーーーーーっ!くそっ!」

自分の腕の中から、いなくなったすみれ。


雷馬は急いで外へ走った。


裏庭からつながる山の方へもの凄い速さで走っていく白い影を見た。


「あれは!」


雷馬はケータイで執事に電話をかけた。



「すみれがさらわれた! 早く探さないと!」





「後ろ姿だったが・・・俺には・・・わかった。あれは狼だ。俺と同じ匂いがした。人狼の匂い・・・」




雷馬は自分を責めていた。




なぜ、もっと強くすみれを抱き寄せていなかったのか・・・




狼のくせに女ひとり守れないで・・・


笑える・・・




「あいつに、すみれは渡さない!絶対に!

たぶん山に入った!山を・・・・山の中を探してくれ!」


雷馬は山の中を走り回った。

でも何一つ手がかりもなく、すみれの姿は見つけられなかった。



「すみれ・・・・待ってろ・・・絶対に助ける。命をかけて俺が守る!」


屋敷の庭で

「ウワオーーーーーン・・・・ウウォーーーーーン」

と真ん丸い月に向かって吼える銀色の毛色の狼がいた。



狼は吼え終えると後ろを振り返った。



雷馬の執事が

「必ず・・・無事にお帰り下さい。・・・・雷馬さま」と声をかけると狼は頭を縦に動かした。


狼は銀色の毛をたなびかせながら勢いよく走っていった。





山の中腹に大きな白い毛色の狼が座って何かを待っているようだった。



地面を蹴る獣の足音。


白い毛色の狼は傍に気を失っているすみれを

置いて鼻で匂いをかいだ。


「がるるるるっ・・・・」


唸りながら狼の口に透明な唾液が垂れた。


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