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本当の愛

「ちょっと!雷馬!」

後ろから舞香の呼ぶ声が聞こえた。


だが・・・

確かめたかったんだ。


今すぐに・・・




階段を駆け上り3階へつくと長い廊下を走った。


雷馬の目指すところは・・・


ひとつ・・・



裏庭を眺められる窓のある廊下だった。




「・・・・ふえ・・・・っく、ひっ・・・・っく」

廊下の壁に引っ付いてちいさくなって泣いている子供のような影が見えた。


雷馬は息を整え近づいていった。



足音に気がついてその人物が顔を上げた。


「雷・・・馬くん・・・あの・・・」


すみれは目をがしがしこすると

「あの・・・聞いたよ。よかったね。間に合って・・・雷馬くんの好きな舞香さん・・・

戻ってきたって、みんな噂してた」

と無理に笑顔になった。


雷馬は近づくとしゃがんで、まだ泣いた形跡の残るすみれの瞼にキスをした。


涙の雫が残る目じりにもキスをした。



「えっ!////」


「泣いたのか?勝手に覗き見して・・・」


あたふたする すみれ。

「いや・・・えっと、その・・・見るつもりはなくて・・・それより! こんな・・・風にしてたら舞香さんに疑われるよ?」



すみれの腰を引き寄せ、すみれの顔をじっとみつめる雷馬。

「疑わせとけ・・・」

雷馬の瞳は限りなく優しげだった。


「?あの・・・でも」


「怖いか?俺が」


ぶんぶんと首を振るすみれ。



怖い? 違う・・・好き過ぎて。舞香さんが戻ってきたら雷馬くんが人間に戻れる・・・


だから、全て解決して良かったはずなのに・・・


胸が苦しい・・・


狼になっても私だけが雷馬くんを知っていれば・・・

私だけが 好きでいれたら・・・


そんな馬鹿なこと考えてた。



ごめんね。雷馬くん・・・愛せる人が 現れて・・・




これで・・・

わたしもお役ごめんだね・・・・



「俺が狼でも好きか?」


「・・・・う・・・ん」

そっと頷いて作り笑顔で見上げるすみれ。



そんな今にも泣き出しそうなすみれを雷馬は力を込めて抱きしめた。



そして、すみれの首の後ろへ手を置き、すみれの瞳を見つめた。


驚いた顔のすみれ。


すみれの瞳の中に彫刻のように綺麗な雷馬の姿がうつっていた。


雷馬の顔が少し傾きその瞳はすみれの小さな唇をうつしていた。


二人の顔が少しずつ近づいた時、もの凄い速さで来た何かがふいに、猛烈な風と共にすみれの体をさらっていってしまった。



「きゃあああああああ!」




風に巻かれたようにすみれの体は、あっという間に大きな叫び声と共に雷馬の前から忽然と消えてしまっていた。



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