JINROWの宿命
学校を休んで今日は4回目のデート。
体力のなくなっている雷馬を近所の湖に連れてきたすみれ。
「うわー綺麗。光ってるね」
雷馬の手をとり湖のほとりをゆっくりと歩いた。
コレが本当のデートならどんなに嬉しいかわからない
「ねえ、雷馬くん。雷馬くんの好きなものって何?」
雷馬の髪が風に踊っていた。
綺麗な横顔を見てすみれは溜息をついた。
人間じゃないからそんなに綺麗なの?雷馬くん
「肉」
「え?あ、そうだよね。狼だもんね」
ぽろっと言うすみれ。
慌てて口を抑え周りに聞こえてないか確認した。
幸いあたりは静かだった。
「ごめん。つい」
「いい。どーせ聞こえた所で、みんな冗談だと思うさ。それに」
雷馬が突然草むらにすみれを押し倒した。
すみれの体に馬乗りになり両腕を押さえた。
「こういう狼かなって思うかもな」
そう言って雷馬はすみれの首筋にキスをした。
「ちょ!ちょっと!待って!」
足をばたばたさせるすみれ。お構い無しに反対側の首筋にもキスをする雷馬。
「待って!」
雷馬は馬乗りになったまますみれを見おろした。
「何を待つ?俺の事 好きなんだろ?なら、かまわないんじゃ?」
「構うよ!私は好きでも雷馬くんは私を好きじゃないじゃん!」
雷馬はめんどくさそうにすみれを開放すると大の字にごろんと寝転んだ。
「好きじゃなくても……口にキスは出来なくても……する事はできる」
「しなくていい!」
すみれは、ぷんぷん怒っていた。
せっかくデート気分だったのに台無し
やっぱり、ムリなのかな?私じゃ
横に転がっている雷馬をみると雷馬もすみれを見た。
ぐっ!
見てる
じーーーーっと……
どうしよう。なんか言わないと
そうだ。盛り上げないと
「あのね」
すみれが話し出したとき雷馬がすみれの背中についた砂を手ではらった。
「あ」
「ごめんな。俺…単純に考えてた。体がつながれば、お前の事好きになれるかと。馬鹿なこと思いついてさ、わりいな」
爽やかに微笑む雷馬。
でも、どこか寂しそうな横顔を放っておけないすみれは思わず雷馬を胸に抱きしめていた。
「雷馬くん。私雷馬くんが好き。雷馬くんのこともっと知りたいの。話してくれないかな?詳しく。雷馬くんをもっと知りたいから」
真剣なすみれの眼差しに応えるように雷馬はすみれの手を握った。
小さい手だった。
必死な顔のすみれをなんだか少しだけ可愛く思えた。
抱き寄せるとあったかい匂いがする。
陽だまりの中のような……昼寝をしたくなるような
「俺は人狼だ。父親が人狼、母親は人間だ。獣の血は人間より濃いんだ。
それに俺達、人狼には、絶対に破れないおきてがある」
真剣に耳を傾けるすみれの小さな手を握り締めながら雷馬は自分の事、そして自分の人狼としての宿命を話した。
人狼の宿命
それは
人狼は15歳を過ぎると体の変異が著しくなる。
その為、あることをなしえない限り、人狼は、そのまま狼の姿にもどり一生を狼の姿で過ごす事になる。
あることとは……
人狼である自分が命をかけて愛せる人間の相手に巡り逢い、その相手もまた人狼を命をかけて愛せるという関係が築けたとき
人狼は人狼ではなく
人間の姿のまま狼になることもなく一生を終えられる。
もしも、そうした相手が見つからなくても人狼のまま一生を終える方法もある。
それは自分にふさわしい相手の肉体を心もろ共、骨まで食い尽くす事で人狼でいられる。しかも、人狼となった場合は不老不死の体を手に入れられる。
だが、人狼は人間でも狼でもない。正体を知られれば「化け物」と人から嫌われ怖がられるばかりか、何も危害を加えなくても敵対しされる。
もちろん、狼からも仲間とは認められない。
何もしないでいれば、人狼は狼にはなれる。そして、人間として過ごした期間のことを全て忘れ狼としての人生を全うする。
どの人生を選択するかは、人狼しだいだ。
それが人狼の掟であり、代々受け継がれてきた人狼の宿命だった。
全てを語り終えたとき雷馬は哀しげにすみれを見つめた。
「お前を愛する事が出来たらどんなにいいか。でも、人狼のおきてに嘘、偽りは通用しない。
偽りでは駄目なんだ。俺はきっとこのまま」
狼になってしまう……
そういいかけたとき
雷馬の手を強く握り返す、すみれが目の前にいた。




