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救いの手

朝から体がだるくて動かせない為に雷馬は学校を休んでベッドに横になっていた。


トントン……



部屋がノックされ執事が入ってきた。

「雷馬さまにお会いしたいとすみれさまがお見えです」


雷馬は頭痛のする頭を押さえた。

「帰ってもらえ」


「ですが最後だからとおっしゃって」


最後?

こんな時になんて面倒な女……



雷馬はベッドの上に起き上がると

「呼んでくれ」

と執事に命じた。


髪をかきあげると軽く息をはいた。


すみれ一体ここへ何しに来た?




「こんにちは。その……大丈夫?体は」

ひっこりと顔をのぞかせおずおずと入ってくるすみれ。


「戸を閉めてこっちへ来い。そんな端にぼけっと立たれても話が出来ない」


「はい。そうだよね。うん」



ベットの端にようやくたどり着いたすみれ。


「最後ってなんだ?」


「うん。私やっぱり、その気になって雷馬くんのこと。力になれないかもしれないけど…そのやっぱり 

最初の約束どおり5回のデートする約束だったし。あと2回残ってるから、その分くらい約束果たしたくて

。大金もらったし」

言葉を選びながら話すすみれ。


「つまりお前は時間が無い俺にあと2回無駄なデートをしろと?」



「無駄かどうかわからないじゃない? それにわたしって後からこうじわじわと愛着のわくタイプだって言われるから」

真っ赤な顔のすみれ。


「だからデートしろと?」


「約束はきちんとしたいし、その、きまずいから」


「いいだろう。お前がそんなに望むなら約束のあと2回デートしてやる。そのかわり」

雷馬の瞳は哀しげに光った。


「そのかわり無駄だったときにはお前を食う。それでも構わないのか?」



食われる?



本気で?



私があと2回のデートで雷馬くんに本気で愛されない時は食われる。



2回のデートでなんか、きっと無理かも


でも雷馬くんの事は、なんとか助けたい。力になりたい。


「わかった」


「は?お前食われてもいいのか? 意味わかってるのか? 俺に食われて人生終ってもいいのか?」



「良くない。けど信じて。私きっと雷馬くんを救えるから。私は期待を裏切らないから」


裏切らない


その言葉が雷馬の胸に響いた。


コイツの事をあと2回のデートで好きになるかどうかは正直わからない。

第一はなからムリな話なんだ。


回数決めて逢ったところで人を好きになんかならない

誰かを好きになるなんて事は急に ふいに訪れるもんなんだから


雷馬は、ふっと笑った。




雷馬くんのあんな自然な笑顔見たのはじめてかも。

すみれは ドキドキしていた。


少なくても私は雷馬くんのことがだいぶ好きみたい。


だから、この想いだけでも伝えたい

「私はね、もう雷馬くんのことが好きなの」


雷馬がまっすぐにすみれを見た。

黒目がちな光る瞳で穴があくほどみられると

相当恥ずかしい


すみれは

「だから絶対に諦めないよ。私を好きにさせてみせる。それで雷馬くんの力になりたい」

真っ赤になって力説した。



雷馬は、じっとすみれを見続けていた。


やがて 

「その言葉に……かけてみる。お前に俺の全てをかける。頼むから俺を好きにさせてみろ。時間がないんだ。俺には」


そう、雷馬には人間として生きられるタイムリミットが迫っていた。


これを逃せば俺は掟どおり、生け贄を食わない限り一生狼のまま生きる事になるだろう。

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