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絶望のキス

窓枠にかけていた雷馬の手が震えた。



嘘だろ? 舞香、お前キスしたのか?

俺以外の男と。

しかも嫌がってる風には見えなかった。




雷馬は自分が見た光景が信じられなかった。


だが考えてみると毎週のように逢っていた日曜に舞香とあえなくなり舞香からのメールの回数もみるからに減っていった。



もっと早く気がつくべきだった……


駆け出して舞香をライアンから引き剥がし、いますぐ問い詰めたかった。



だが雷馬は、まだ瞼をとじる舞香を見てもなお舞香の事を信じていた。


舞香が本当に好きなのは俺のはずだから今は少し異国の奴にたぶらかされただけ。




帰りに舞香を校門で待っていたとき舞香がライアンと手を繋ぎながら歩いて来たのを見て、ようやく雷馬は裏切られた気持ちでいっぱいになった。



全身の血が煮えたぎって怒りをどう抑えるべきか考えた。唇を食いちぎれるほどに噛み締めた雷馬。


「舞香!」

仁王立ちで校門にいる雷馬に舞香がやっと気がついた。


「雷馬」

繋がれた手は何故かそのままで、それがさらに雷馬の怒りに火を注いだ。


「これは?どういうことだ?」


「……」


「どういうことだって! 聞いてるんだ! 舞香」



すると、ライアンは背中に舞香を隠し

「怒鳴らないでくれないか? 君が舞香の元彼?」


「は?なんて?」


元彼? どう言う事だよ。舞香。俺は、いつの間に元彼になったんだ?


お前の中で俺とは、もう終ったって事か?



「お前は黙ってろ。舞香と話させろ」

雷馬が舞香の腕を強引に掴んで引っ張ると

「痛い! 雷馬!」

舞香がそう叫んだが雷馬は確かめずにいられなかった。


舞香の本当の気持ちを。




雷馬は野次馬たちの目の届かない静かな路地へ舞香の腕を引っ張って入るとやっと痛がる舞香の腕を離した。



痛そうに腕をさする舞香。



「説明しろよ。いつから俺はお前の元彼になった?」


舞香は下を向いたまま黙っている。雷馬はたまらず舞香の両腕を掴んで自分の方を向かせた。

「舞香!言えって」



「ごめん」


「なんだよ。ごめんって」


「ライアンが 好きなの」

舞香がじっと雷馬を見上げてくる。その瞳は真剣だった。


「ふざけんな!お前は」

雷馬はじっと見てくる舞香の顔に顔を寄せて

舞香の頬を抑えて桜色の唇に噛み付くように

キスをした。


激しい想いを伝えたくて、どうにか舞香の心を取り戻したくて……


むさぼるように舞香の唇から全てを求めた雷馬。何度も角度をかえて乱暴に激しくキスをした。


舞香の心の全てを知りたくて。


でもなにも響いてこなかった……


舞香は、ただ人形のように雷馬にキスされていた。


舞香は冷たい瞳を向け雷馬が離れたあとも

開いたままだった。


あの以前のような極上のキスの味はまったくと言っていいほど、あとかたもなく消えてしまった。




溶けるような瞬間も一向にやってこなかった。





雷馬は、この時初めて知った。








キスは愛する二人の心が繋がっていて初めて

極上な味がするものなのだと。


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