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銀色の毛並み

雷馬くんをすごく好きなわけじゃない・・


でも逢いたくなっていた。ここ最近・・・

雷馬くんに逢える事が嬉しかった。

なのに・・・急にそんな言われ方されちゃうの?




「ひ・・・ひどいよ・・・なんか・・・・そんな事。そこまで言わなくたって良くない?」

手の甲で必死に止まらない涙を拭うすみれ。


そんなすみれを見ながら

「今言わなけりゃならない・・・代々・・・受け継がれてきた忌まわしい血のおかげで俺に課せられた宿命にお前が選ばれたものだから」

雷馬はそう言うと手を上に伸ばした。



その手は気のせいでなければ徐々に伸び大きくなって指の爪が長く伸びてきたようだった。




「・・・・お前を愛せないから・・・悪いが・・・生け贄になってもらうよ」

そう低い声で言い放った雷馬は、見る見るうちに体が大きくなり着ていた服がブチブチッと破れる音が響いて背骨が丸まり、徐々に全身を獣の毛が覆っていく。


やがてベッドの上に銀色の毛をなびかせた大きな獣が4つ足で存在していた。


「!・・・・・」

声も発せずすみれは尻餅をついた。



獣は図鑑や動物園などでみた狼そっくりで・・・・・


「狼・・・・」



ベッドから飛び降りた狼はうろうろと部屋をうろついた。





うろつきながらその瞳だけは確実にすみれを

捕らえていた。狼から離れようと後ずさりするすみれは、やっとドアのところまでたどり着いて壁に背をあてずるずると立ち上がった。


その時、部屋のあかりのスウィッチに背中が

当たり部屋が真っ暗になった。

部屋の中には、うろうろして行ったり来たりする狼。

すみれをじっと見つめる闇に光る鋭利な瞳と

外の空に輝いている月の光だけが存在していた。



いつ襲ってやろうかとすみれに飛びかかってくる機会をうかがっている狼。



これ・・・・・


この狼の瞳が雷馬くんによく似てる・・・





この狼は、もしかして雷馬くんなの?


すみれの足は、がくがくしていた。


やがて部屋の中が真っ暗な闇に包まれた。月明かりがなくなったのだ。


狼が急に苦しげに呻き始めた。床を転がる狼。腹ばいになったり起き上がったり、のた打ち回っている。


外に雷の音が響いた。




ゴロゴロゴロッ・・・・




ピカッ!




稲妻が走った。




「キャ!」

悲鳴を上げすみれは、しゃがんで身を縮めた。

いまだにバタバタとのた打ち回る狼。ひんやりした空気が流れ、やがてザーーーーーッと

いう音と共に雨が激しく振り出していた。



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