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戸惑い

「こっちへ 来い」

ベットを叩いてすみれを呼ぶ雷馬。

おずおずと近寄ると長い雷馬の手が伸びてきて、すみれを捕まえた。


「きゃっ!」


またベットに倒れこんだすみれは器用に雷馬の懐に体を持ってこられ、もの凄い近距離で

雷馬の顔を見ることになった。


「あ、あの……」

すみれは真っ赤になって雷馬の腕の中に収まり縮こまっていた。


「信頼している奴にしか俺は腹を見せない」


「え?」


そういうと雷馬はすみれを放し大の字になって天井を見上げた。


雷馬の着ている黒いシャツがはだけて引き締まった腹部が見えていた。


その後、昨日と同じようにステーキ肉を山ほど食べた雷馬。昨日と違っていたのはすみれにはサラダがステーキの他に用意されていた事。

すみれは、いつの間にか肉を食べる雷馬の姿もだんだんと素敵だと思うようになっていた。

食べ終わるとあくびをする雷馬。


「すこし寝る」

そう言ってすみれを余所に自分の部屋へ入り

眠ってしまった。


仕方なくすみれはリビングの巨大スクリーンで飽きるほど狼男のDVDを見た。

狼男のDVDしかなかったからだ。


夕方近くになって雷馬は起き出してきた。



リビングで狼男のDVDを真剣に見入って涙を流しティッシュを握り締めるすみれがいた。


雷馬はすみれの隣に腰をおろし、すみれの右手を握り締め片方の手ですみれの体を抱き寄せた。


そうしてから、そっとすみれの頬をつたう涙を舐めた。



「うわっ!また!なに?」


「舐めた。甘い」


「まさか!涙だよ?塩辛いでしょ?」


雷馬は首を横に振った。

「いや……甘くて癖になる」


すみれは恥ずかしくて顔を両手で覆った。

すると


「もう、時間だ。帰れ。また、明日、学校の帰りに寄れ」

雷馬は時間にうるさい人だった。


「うん……わかった」


すみれはあしたもここで雷馬と逢える事が

すでに楽しみになっていた。




学校で雷馬は、すみれに逢っても話しかけても来ないし、なんか二人だけにわかるサインみたいなものも取り立てて送ってこなかった。

そんな時、すみれは雷馬に抱きしめられて舐められた事も全部無かったこと、幻のような気にもなってくる。


でも、帰りに学校から少し離れたところで

「迎えに来ました」

と言う見慣れた執事を見るとほっとしていた。


夢じゃなかった。

現実だった。

雷馬にやっと逢える!



勢いこんで覗いた車内。


いつもは車の中にいる雷馬が今日は見当たらなかった。



「あれ? あの……雷馬くんは?」



「お坊ちゃまは本日学校を休みました」



「え?なんで? 病気?」



「さようです」




車がゆっくりと振動もなく発進していく。


「風邪?」



「いえ、きっとお坊ちゃまが話されると思いますので」


それ以上は聞くなと執事の背中は言っているようだった。


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