自然に従う
「今日は
俺の部屋へ案内する」
雷馬の部屋は、いたってシンプルだった。
広くてダブルよりもっと大きいサイズのベットが部屋の真ん中にあり余分なものは全て見えないように収納されているようだった。
「俺、先にシャワー浴びる。そのへんにいろ」
そのへんって言われても……
ベットしかなくて
あとテレビもないのに
本もないし
いったいどうやって時間潰せば?
そのうちに疲れてしまったすみれはベットの上ですやすやと寝息を立ててしまっていた。
しばらくして目を覚ましたすみれの目の前には、あの端整な顔が見えていた。
目を瞑って寝てる。
しかも両腕、両足を見事にすみれの体にからめていた。
動けないんだけど……
すみれは、ばたばたと手足を動かした。
ベットが揺れて、その振動で眠っていた雷馬が目をあけた。
「起きたのか?」
「ねちゃってごめんなさい……人のベットで」
「自然だろ?眠りたい時に眠って悪いわけない。自然に従え」
「そんなもの?」
「ああ、お前はシャワーはいいのか?」
「え?シャワー」
どう言う事だろ。
汗はかいたけど人の家で親しくないのにシャワーなんか借りないよ。
「いい。私は遠慮します」
「いいのか?べたべたのままで……」
雷馬は、すみれの首筋を指先で触った。
「ひゃ!あの!急に! やたらとその触らないでくれます?」
「ムリだ」
平然という雷馬。
「へ?」
「俺は自然にしたがって生きている。俺は俺がさわりたくなったものに触る」
そう言ってすみれを、そっと抱き寄せた。
「汗のにおいがする」
雷馬の顔がすみれの首筋に埋まった。
「だ、だから汗臭いの嫌でしょ! 離れてくださいって!」
「俺は汗のにおいが好き。つい我を忘れそうになる」
そう言って、すみれの首筋のにおいを嗅ぐ。
恥ずかしさのあまり、すみれはどこかに隠れてしまいたかった。
でも、それでいてずっとこうして抱きしめられていたい……
そんな気持ちにもなってしまっていた。
すみれが自分の体に巻かれている雷馬の腕をそっと触ろうとして手を伸ばした時、雷馬はすみれからあっという間に離れ
「腹が減った」
といいベルをならして執事に昼食の用意を頼んでいた。
ベットに大の字に寝そべったかと思うと横向きになりすみれをじっと見つめてくる。
その瞳は黒く輝きを放っていた。




