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ネット小説大賞用あらすじ(公式応援イラストあり)
山の頂には竜が棲んでいる。
大きな牙と鋭い爪に空飛ぶ翼を持ち、鉄をも熔かす灼熱の炎を吐く紅き竜。
竜には毎年、麓から貢物とともに、美しい乙女が生贄として捧げられていた。
ある年、奇妙な乙女が竜に捧げられた。
「悪竜に一言もの申すために魅力を磨いてきた」と意気込み、紅き威容に怯みもしない乙女に興味をひかれた竜は、戯れに話を聞いてみることにした。
実のところ竜は、生贄が運ばれてくる度、人間たちから記憶を消して、貢物以外のすべてを追い返していたのだった。
そしてこの乙女が生贄として捧げられるのは、今回が初めてではない。
竜が種明かしをすると、乙女は、
「あなたと暮らすのはおもしろそうです」
と、名案とばかりに微笑んだ。
これは、強大な力を持ちながらも面倒を厭う紅き竜と、一風変わった生贄の、ゆるやかな日々の物語。
「――って呼んでもいいですか?」