第一話 交渉<帝国歴567年7月2日>
プロローグ見にくいため少し修正しました。三点リーダはなぜか表示されないため、・・・を三点リーダの代わりとします、ご了承お願い致します。
さて、冒険者の都合はついた。
何故、お金をかけずに冒険者を雇うことにしたか・・・・・・念のため、確認しよう。こういう思考の再確認は意外と重要だ。
商人として商売する場合、何をするかによるが・・・・・・冒険者とは切って切れない関係だ。商品としての必要な魔物の素材確保、薬草の確保などなど・・・冒険者ギルドに依頼するのが一般的だけど・・・。
「中間マージンが半端ないのよね・・・。」
冒険者ギルドとはおおまかに言えば依頼人と冒険者を繋ぐための組織だ。その組織運営にもお金がかかる。冒険者ギルドを通さない依頼は何かと依頼料が少ないやら、前もって聞いていた情報と違っただの、そもそも依頼の物と商品が違うなどなど問題が発生してしまうことが多い。つい先月も大きな町で、ギルドを通さなかった依頼人が冒険者と口論になった末殺されてしまうという事件があったばかりだ。
「まあ、素の依頼料だけでもきついけどね」と苦笑してしまう。
だから、生まれたときからの幼馴染であれこれを知っていて多少腕に覚えのあるトムを専属に冒険者にするのは英断のはず・・・実質タダだし。
そんなことを思案しながら目的の場所に向かっていると、だらしなく口を開けにやにやして”きもい顔”をしているトムが話しかけてきた。
「アニタ、どこにいくんだ?」
トムは何を勘違いしたのか慣れ慣れしくあたしの側面に来て肩を抱き寄せる。
「・・・」無言であたしは思いっきり不埒者の足を踏みつける!!
「いっつぅ!」と言いながらトムはぴょんぴょん跳ねる。
あたしは溜息をつきながら肩のごみを払うしぐさをしながら「・・・これは前払い報酬としてもらうからね」といつつ、腰の横にあるポシェットから木の皮のメモ帳を取り出し、色石というペンの代わりになるものでメモをとる。肩抱き・・・50000Gと書き記す。
「・・・行商のおっさんのところに行くからついてこないでね」
「そういえば、月に一回の行商の人がくる日だったな。」と先程踏まれたことなどまるで気にしてないという風体だ・・・よく訓練されているい・・・おっと。
あたしはトムを置き去りにして行商のおっさんのところに向かうのだった。
~・~・~・~・~・~・
あたしはトムの装備と冒険道具などの購入のために行商のおっさんのいる村長宅前に足を運んでいた。
「おう、アニタちゃんいらっしゃい。頼まれたものは用意しているよ」
そこには簡易のイスに座り、布の上に香辛料や低級の魔石などの商品を陳列している行商の商人――でっぷりとした腹が印象的で温厚そうなもうすぐ初老になりかけのいかにも商人っぽい格好であたしを出迎えてくれた。
周りに人がいないことを確認して「ありがとう・・・助かるわ。さっそく商談といきましょう」とにっこりと笑う。
商人はお腹をさすりながら、「アニタちゃんのことは信用しているけど・・・お金500万Gは用意できたのかい?」
「ええ、”商品の取引”に必要なものは揃えたわ」とポシェットに入れていた全財産(村の一般家庭の三年分の生活費)の125万G・・・金貨12枚に銀貨5枚をおっさんの前にあるお金を入れる木の小皿に置く。
このお金はあたしがお手伝いをして稼いだお金やネコバ・・・げふんげふん・・・、誕生日プレゼントを現物ではなくマネーでもらった・・・聞くも涙話すも涙ではない・・・お金だ。(なんか両親とトムは渡すとき泣いていたけど・・・)
それを見て「ふむ・・・アニタちゃん・・・どうしてこの装備品がほしいかはわからないけど・・・身体を安売りしてはいけない」と諭すように言う。
?・・・あぁ、足りない分はおっさんを通して娼館にでも行って払うとでも思ったのだろう・・・「・・・全然違うけど、心配後無用よ」とある紙を地面にばら撒く。
「こ、これは」と慌てておっさんは紙――魔導写真を集める。
これは村に来た奇特な写真家にお願いして取ってもらった写真だ・・・その代わり村周辺の案内などタダ働きさせられたが・・・これは、おっさんの不倫写真だ。そう、おっさんはこの村の未亡人のメアリーさんと逢瀬を重ねに来ていたのだ。
おっさんは可哀想なくらい蒼い顔をしている・・・このおっさんはとある大商人の娘と結婚をしており、さらに子供もいたりする・・・そんな彼が何故こんな辺鄙な村に来ているのか・・・ずばり、愛人がいるからだ。
最初は狼狽していたおっさんだが・・・そこは海千山千の商人だ・・・次第に落ち着きを取り戻し「・・・嫁に秘密にする代わりに値段を負けろというのかい?」といつもとは違う鋭い目つきでこちらをみてくる。
あたしとおっさんとの間に緊張が走る・・・あたしとてこんな大勝負初めてだ・・・ここがターニングポイント。
なるべく緊張を出さずに「いいえ」と否定する。
「では?」とおっさんが聞いてくる。
震える手を背に隠し「残り375万Gはツケにしてほしいの・・・もちろん、利息は払うわ・・・年一割でどうかしら?」
「月五割だ・・・聡いアニタちゃんにはわかるだろうけど・・・おじさんは・・・消すこともできるんだよ?」
「・・・年三割で・・・聡いと思うなら恩を売るのも一つの手だと思うの・・・」背中に嫌な汗が流れる・・・こんなところで負けていられない!!
そんなあたしをおっさんはじっと見て・・・最後には「・・・はぁ・・・わかったよ。どうして今こういう行動をとったかも聞かない・・・それに何か覚悟決めたその眼を信用しよう」と借用書の準備をはじめた。
(「ふぅ」)と内心ほっとした。もし、お金を値切ろうとしたら間違いなくあたしは消されただろう・・・行商でこの村に来ているが本気になれば、この村をまるごと消すくらいの権力は持っている人だ。
商談をまとめたあたしはトムにミスリルの剣とミスリルの軽防具(額・腕・胴体・足のみを覆ったもの)と冒険者セット(ランプや縄など)を渡して驚かれたが・・・「これで当分タダ働きだから気にしないで」と言ったらなんだか残念な顔をしていた・・・ふぅ、まったくイヤラシイ奴だ・・・あのおっさんの縁故で500万Gと格安だったのだ・・・トムの借金の欄に1000万Gと書き込もう。
普通、駆け出し冒険者は皮の鎧や銅の剣を装備し、次に鉄の装備品・・・その次はお好みで上級鉱石を使った装備品、その次がミスリル装備だ・・・さすがに全身ミスリルで覆うものは用意できなかったが・・・きっと重量的にもトムには無理だったのでよしとしよう。
これで多少トムに無理をさせても死なないだろう・・・たぶん。
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時間は夜、お金の捻出などでがらんとした自分の部屋で、町についたら売る商品を麻袋に積めつつ・・・旅に出てからの最終目標を反すうする。
あたしは・・・なんとしても1ヶ月以内に3億Gを貯めなければいけないんだ。あの黒い神様?にもらった力のおかげで・・・あたし以外の死んだ村人全員を生き返らすことができた・・・でも、3億Gを期限までに治めなければ・・・ううん、大丈夫・・・あたしならあたしにしかできないんだからと・・・自分を鼓舞するのだった。