ある乙女ゲーっぽい学園で働く食堂のおばちゃんの後悔
※食堂の仕事は想像です、お金持ち学園も想像です。違っていても流してくださると嬉しいです。
あんまり後味が良くないのでお気をつけてください。
私の仕事はお金持ちの子女が多数通う学園の、食堂のおばちゃん(他称)である。
夫の浮気が原因で離婚、バツ一子無し、慰謝料は貰ったが働かなくては生きていけない。実家近くの学園の食堂で雑用係を探していると親戚の人に紹介され、パートながらも自給の良さと歩いて通える所だったためとりあえずそこに勤める事にした。
私の仕事は午前中の十時からその日の営業準備手伝いをし食堂の掃除やチェック、お昼休み少し前に食堂を開くと皿洗いや食器の回収――基本的にセルフサービスで食器の返却口もあるのだが――その合間に机や椅子、床などに汚れが無いかを見て回る。お昼休みが終わると食堂を掃除し休憩、そして放課後の営業で茶菓子や軽食なども出すためその準備をする。放課後はそんなに込まないので次の日の下ごしらえや在庫のチェックをし、六時に食堂を閉め、後片付けやごみ捨てなどをして七時前には終わる。立ち仕事で体力のいる仕事だが、職場の雰囲気も良く、私を『食堂のおばちゃん』などと呼ぶ失礼な生徒もいるが――私はまだ三十代前半なのでおばちゃんはやめてほしい――とても充実していた。
◇◇◇
それは、私が食堂に勤め始めて三ヶ月ほどした時だった。
その日の営業を終了し、ごみを捨てに指定の場所へ歩いていると木の下で男女が抱き合っているのに気が付く。私は公共の場でいちゃつく男女に遠慮して――爆発しろと思いながら――違うルートで行こうと踵を返そうとし気づきたくないものに気づいてしまった。
生徒同士だと思った男女は男性が教師だったのだ。
私は二人に気づかれる前に急いでその場を去った。ごみ捨て場へは遠回りになってしまうが仕方がない――こんな人が通るような場所でいちゃつくなよ淫行教師――恋人同士の邪魔をして馬に蹴られたくないので今見た事を忘れる事にした。
◇◇◇
仕事が休みの日、近所のショッピングセンターに買い物へ行くと前から美形の若い男女が腕を組んで歩いてくる。
何となく見覚えがある二人だったのでつい見てしまったのだが、男は学園で生徒会長をしている生徒、女はこの前教師と木の下で抱き合っていた女生徒だった。
私はあれは仲の良い兄妹――仲睦まじい恋人同士に見えたが――念じながらまた、見なかった事にした。
◇◇◇
昼休みの一番食堂が込む時間帯、食器の回収がてら机や椅子などの汚れチェックを――たまに制服が汚れたとクレームが来るので念入りに――していると、男女が隣り合っていちゃいちゃとお互いに食事を食べさせあっていた。
男子生徒は可愛い系の美少年、女生徒は教師や生徒会長と仲良くしていた娘だ。
二人は仲の良い姉弟なのだと念じようとしたが、男子生徒のほうが女生徒を先輩と呼んでいたので無理だった。その時の会話で女生徒と生徒会長が兄妹では無い事も知ってしまった。
――向ける相手が違うとわかってはいても――どうしようもない怒りや悲しみの感情が胸を渦巻いた。元夫も外でこんな風に浮気相手といちゃいちゃしていたのかと。
◇◇◇
数日後、私は秋葉原で小型のカメラを買った。
――こんな事はしてはいけないと思いながら――あの女生徒が見目麗しい男子生徒と逢瀬をしている所を写真に収めた。女生徒が六人の相手と抱き合ったり手をつないでいるもの、中にはキスしているものも。
そして、直前で教師の写真だけ抜いて――六股の上、教員免許剥奪になったら哀れだと――匿名でそれぞれの家と学校に送った。
◇◇◇
写真を送った次の日、学校で修羅場が起こったらしい。あの女生徒の相手はみんな良いところのご子息達で家を交えての騒動だったそうだ。中には婚約者がいる生徒もいたとか。
女子生徒は成績優秀者で奨学金を貰っていたが、今回の事で素行に問題ありとして奨学金なしになったらしい。この学園の学費は高いので騒動が収まっても転校する事になるだろう。
職場の同僚にその話を聞きながら、私は後悔していた。
私の私怨でとんでもない事をしてしまった。六股がいけない事だという思いからの行動だったらもっとやり方があったはずなのに。
私は職場に辞表を出し、仕事をやめた。
◇◇◇
その後、私は彼らがどうなったのかは知らない。
願わくば、あの騒動が彼らの未来に影を射すことがないと良い、私の八つ当たりの感情のせいで大変な目にあっただろうあの女生徒も。
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拙いお話をここまで読んで下さった方お疲れ様でした、ありがとうございました。
※この下は作者の言い訳とかなので見たくない方は戻って下さい。
乙女ゲーで無関係な人(逆ハーぶち壊してたけど)から見た話を書きたくて勢いで書いてしまいました。六股はいけないけど盗撮もいけないですね、主人公は訴えられたら負けますね。
お話を書いていて、小心者な主人公がやってしまった事をかなり後悔したのでこんな中途半端な終わり方になってしまいました。騒動の後、青くなる主人公しか浮かばなかったので。消化不良の方、ごめんなさい。