7.家族
表現力が乏しくミユキとルビスの2視点で場面を被らせて進めているため進展が遅くなっております。
少しずつ改善していきたいとは思っております、すいません・・・。
促され、そう長くない階段を降りていくとすぐに扉に行き当たった。
目的地であろう扉の左右にもいくつか扉があり、平均的な日本の家屋に比べるとやはり広い間取りになっているようだ。
階段を降りて右側に廊下を進めば玄関らしきものが有る・・・と、さり気無くチェックしておく。
目の前のルビスは面倒見のいい姉御肌という印象だが出会って間もないし、これから会うであろう彼女の家族からどのような対応を受けるかわからない。
ルビスはどう見ても日本人には見えない、話す言語も知らない言語だ。
しかし意味はわかる、会話が成り立っている。
身の回りの物から受ける印象も日本とはかけ離れている。
間違いなくココは「彼」の言葉通り 異世界 なのだろう。
なにが起きるかわからない、ココでは私の常識は通用しないかもしれない、最悪ここから逃げ出さなければならない状況も想定しなくてはならない・・・・などと若干警戒していると、目の前のルビスからユラリと怒気のようなものが立ち込める。
内心を気取られたかと警戒を強めつつも、
「あの・・・・?
どうかしましたか?」
と、さり気無く声をかけるとフッと怒気は消えうせ気遣うように部屋に促された。
さっきのなんだったんだろう?と思いつつも促されるまま部屋に入ると、何事か話していた会話は途切れ一斉に皆の視線が集まった。
ピタリと動きを止めた3人分の視線にジッと見つめられる迫力はかなりのものだ。
その中でルビスとよく似た女性が、器用にもこちらを見つめたまま手に持ったサラダの盛られた皿をタンッとテーブルに置くと、まぁまぁまぁと言いながら近づいてきて私の前で小さな子にするように視線を合わせると、
「いきなり起き上がってだいじょぶなのかい? 顔色は悪くなさそうだけど、どっか痛いとことかないかい?」
と、気遣わしげに頭を撫で頬に触れてくる。
向けられる優しい笑顔に、今はもう会えなくなった家族が重なり自然と笑顔が浮かんできていた。
私の体が冷え切っていたことでルビスがナゼか怒られていたが、
「今すぐ温かいスープ用意するからね・・・・ん~でもホントかわいいわぁ♪」
などと頬をスリスリとされ、耳元で優しい言葉をかけられると思わずトロンと甘えてしまう。
私の所為で怒られたルビスも、やれやれといった風で特に怒った様子も無くテーブルの向こうから向けられる視線も優しげなものにホッとする、若干二人が固まったままなのが気になるが・・・・。
その後テーブルにつき、カップに入れてもらったスープをコクリコクリとゆっくり飲む。
野菜と塩だけの質素なスープだったが、煮込まれた野菜はトロリと溶け絶食状態だった体に優しく染み渡っていった。
冷えた体が温まり頭がポワポワとして若干眠くなるも、おちおち寝てもいられない。
「じゃぁ、ミユキはあの時の事は覚えてないって言うんだね?」
「はい・・・・すいません」
軽い自己紹介の後、いよいよ本題とばかりにルビスが話しはじめた。
ルビスの説明では私は彼女の馬車の天幕の布を突き破って売り物の小麦粉の袋にダイブしたらしい。
確かに「彼」と居たあの空間からは落下するような感覚と共に意識を失ったけど、まさか本当にこの世界に『落とされる』とは・・・・。
売り物を台無しにされたルビスには悪いが袋の上で良かったとホッとしつつ、もっと他に方法あっただろう!ウガァァァァ!!と心で「彼」に罵声の制裁を与えた。
「それ以外のこと・・・・自分の事とかは覚えてるんだよね?」
「・・・・はい」
しまった!と思いつつも既に名のっている以上、記憶喪失という手は使えない。
「家族の人は?随分と心配しているでしょう、早く連絡を取った方がいいとおもうわ?」
ルビスの母、セリスが気遣わしげに言ってくる。
「家族は・・・・父と母と姉が居ましたが・・・・死に別れました」
実際には死んだのは私だが、まぁ嘘ではない。
内心で家族に謝りつつ神妙に俯くと場に重い空気が立ち込める。
しばらく全員無言でいると、それまで腕を組んで瞑目して話しを聞いていたルビスの父、トルビスがはじめて口を開いた。
「君は・・・帰るところがあるのかい?」
その言葉にピクリと肩を震わした私だが、ナゼか顔を上げることができず俯いたままプルプルと頭を左右に振った。
そうか、と言ったまましばらく黙ったトルビスだったが思わず私が「え?」っと聞き返す発言をした。
「なら、この家に住むといい・・・・
身寄りの無い子を放り出すわけにもいかんだろうしな。
なぁ?かぁさん」
「そうねぇ、その方がいいでしょう・・・・
でもひとつだけ条件があるわ」
予想外の話しの流れにポカンとしながらも、その条件が気になりセリスを見るとニッコリと笑って、
「私のことは『おかぁさん』って呼ぶこと♪」
「「はぁ?」」
と、その言葉に私とルビスの返事が重なると、
「ず、ずるいぞ かぁさん! もちろん俺のこともちゃんと『おとぅさん』と呼ぶんだぞ!」
もう展開に付いていけず頭が真っ白になっていると
「ちょっと二人とも何言ってんのよ!」
とルビスが詰め寄る、まぁ、当然の行動であろう。
「だって~、ずっとこんなカワイイ娘が欲しかったんだもの~」
「娘ならここにいるじゃないか!」
「お前は娘というより、どっちかというと息子に近くてなぁ」
「そうなのよ、不器用だから一緒に料理を作ることもできないし、そんなにでっかくなっちゃってお洒落させることもできやしない・・・・」
「うぐぐぐぐ・・・・・」
「なんだ?お前はミユキを引き取るのに反対なのか?」
「まぁ!!」
と二人に非難めいた視線を向けられると、
「そ、そんなことは言ってないじゃないか!アタシだってその事には賛成だよ」
「じゃぁ決まりね!」
「そうだな」
結果、当事者である私の意見は聞かれぬまま私はこの家族の一員として迎えられた。
失くしてしまった家族にまた会えたような不思議な感覚に、私の目からは涙がボロボロと零れ落ち、それを見た『新しい家族』に囲まれ安心させようと笑顔を浮かべるも、流れる涙は止まる事無く流れ続けた。
こうして私はこの世界でも優しい居場所を見つけることができた。
パンを口に運ぶ途中の姿勢で固まったままのルビス兄がちょっと気になったが、気にしないことにしておこう・・・・・。
名前が出てないぞ兄・・・




