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4.なんで私がこんな目に・・・。

思うところがあり、サブタイトルだけ変更しました。

本文には修正入っていません。

とある城下町。

不揃いな石畳がお世辞にも快適とはいえない道を作り、その上をガタゴトと馬車が通ってゆく。

しかし案外と道は広く2台の馬車がすれ違っても、端にさえ寄っていれば通行人も安全に行き交える程には整備されている。

道の両側に立ち並ぶ家々も石で組まれており、少し肌寒いような印象を受けるが所々にある街路樹や家の軒先に植えてある花々が優しい印象を付け足している。

窓に干してある洗いざらしの洗濯物の香りや、子供の喧騒けんそう、それを叱る母親の声などを受けて道を進んで行けば、やがて大き目の広場に出る。

広場はかなり広く、小さいながらも中心には噴水がありその回りには荷物を背負い行き交う人や、数人ではしゃぐ子供たちが遊んでいる。

広場の外周付近には馬車を利用した移動式の露店も出ており、雪の時期も近くなり晴れていても肌寒く感じるこの季節でも行商人や買い物客で賑わっている。


そんな露店群の一角で、自身の馬車の周りに所狭しと商品を並べ半ば商品に埋もれながら一人の女性が景気のいい声を張り上げていた。


「はい、そこのねぇさんウチの野菜は新鮮だよ。コレなんか今朝採ってきたばかりさ、いい色に熟してて美味そうだろう。」


そう言いながらトマトに似た真っ赤な野菜を指差した。

露天商の女性は張り上げる声に良く合う活発そうな明るい笑顔を振りまいていた。

レンガ色の髪は肩辺りでぞんざいに切りそろえてあり、肌は日に焼けた健康そうな褐色、彫りの深い顔立ちをしており、髪より一段と濃い赤めの瞳をしていた。

周りを見れば茶色や金に近い色と若干の色味の違いはあれ、街行く人々は概ね同じような外見をしていた。

身なりも似たようなもので麻でできた荒めの生地になめし皮でできた防寒着を着込み、皮でできたブーツのようなものを皆が身につけていた。


「あんたんとこの野菜は美味しいからね、それ5個もらっていくよ。」


「はい、250リーブになります。」


「あぁ、それと小麦粉も欲しいんだけど引いたやつはあるかい?」


「ええ、ありますよ、どんくらい包みましょ?」


と、客との軽快なやり取りをしつつ慣れた手つきで小麦粉の入った大袋に手をかける。

すると、ヒュルルルル~・・・と、どこか気の抜けた音が聞こえてきた。

何だ?と思いつつ音のする上を見上げたとたん、バリ!ドバサー!と天幕を突き破り小麦粉の袋の上に何かが落ちてきた。

驚きつつも視線を下に向けるが、その時には既に舞い散った小麦粉が濛々と視界を塞いでいた。

舞い散る小麦粉に売り物が台無しになり、キャーと悲鳴をあげて離れていく声に折角食いついた客も逃したこたことに気づく。

あたり一面真っ白になっていくその場に、


「な! なんじゃこりゃぁぁぁぁーーーーー!」


と、空しい彼女の雄叫びが轟いた。





その後、近くの露天商や気のいい客を巻き込みワアワアとあわただしく周囲を片付けどうにか体裁を整え、何故か彼女が周囲の人に謝り倒し、休む間も無く自身の馬車の大惨事を片付け終わった頃にはまだ高かった日もどっぷりと暮れて客足も途絶え、皆、家路に付く頃になっていた。

沸々《ふつふつ》とマグマのように煮えたぎっていた怒りも、時間の経過とヘトヘトになった体で維持し続けることは難しく、馬車の横に引いた枯れ草を編みこんだ御座ござの上に寝かせた元凶の横に座り込み呆けたように見つめていた。

御座の上では一人の少女がスースーと寝息をたてていた。

全身余す事無く粉まみれでお世辞にも綺麗とはいえないが、とても整った顔立ちをしているのがうかがえた。

彫りは浅めだがスッと通った鼻梁は形良く、うっすらと開いた唇も整っておりなんとなく高貴な印象すら受けてしまう。

同じ女同士でちょっとドキっとかしてしまった自分に軽く咳き込みつつ、馬車を掃除するときに使った所謂いわゆる雑巾でチョイチョイと少女の頬を拭いてみた。

しかし小麦粉がこびり付いているのか少し拭いたくらいでは肌は見えず白いままだった。

スッと指を伸ばしその頬に触れてその違和感に思わず指を離した、その頬の粉は拭き取れていたにもかかわらず、その肌の白さの為にまるで粉が落ちていないかのように見えていたのだ。

その白さに驚きつつも、改めて恐る恐る触ってみてると更にその肌触りに驚いた、それはまるで絹のような肌触りだった。

絹なんて行商人が広げている物を冷やかしで触ったことしかないが、それでもそれ以外に例えれるような物が他に浮かんでこなかった。


呆然としながらもその感触を楽しんでいると、少女の体がブルっと震えだした。

その事に辺りがスッカリ薄暗くなり始めており外気もかなり下がってきていることにハッとする、この時期、日が落ちると一気に気温が下がっていく。

そして目の前の少女は薄い布地の服を着ているだけだ、このままでは凍死はさせないまでも風邪くらいは引かせてしまうかもしれない。

チッと小さく舌打ちし、女は片手で少女を抱え込み御座を馬車に投げ入れ御者台の後ろのスペースに毛布で包んだ少女をそっと寝かせ、あわただしく馬車を走らせ家路についたのだった。

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