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3.旅立ち

やっと旅立ちます。

文章を書くって難しいんですね・・・。

願い事を伝えるときに声だけは聴いていたものの、実際にサンタクロースを見るのは当然はじめてで・・・。


「ふわぁ・・・サンタクロースだぁ・・・・」

と、マヌケにも呟いた私を責める人は居ないと信じたい。


目の前のサンタクロースは暖かそうな生地の赤い服に、襟や袖口に白いファーを付けズボンも赤く黒いブーツ、赤い三角帽にも白いファーが付き、帽子の先と胸のボタンには白いボンボンがチョンと可愛らしく付いている。

背には白い大きな袋を担ぎ、帽子からあふれる白い髪はフワフワと緩くカーブして、1番の特徴かもしれない白くて長いお髭と合わさってとても優しい空気を与えてくれる。


まじまじとサンタクロースを見やっていると、ふと、その優しい双眸そうぼうと視線が合い自分が失礼にもジロジロと見つめていたことに気づき、軽く脳内で雄叫びを上げ悶絶しつつも慌てて頭を下げた。


「あぁぁぁあの、この度は私の願い事を叶えてくださりありがとうございました、お陰様でちゃんと家族にお礼とお別れを伝えることができました。今は悲しんでいるかもしれませんが、きっと家族もわかってくれると思います。でも、みんなはこのことを知らないので私が代わりにお礼を言わせていただきます。

本当にありがとうございました。」


息継ぎも忘れそこまでを一気に話し軽く肩で息をしていると、


「ホッホッホ、いいんですよ、お礼は必要ありませんよ」


と、優しく微笑まれる。


いやいやしかし、そうは言われてもほとんどの日本人は「あ、そうですか? じゃぁ気にしませんね」と言える民族性は持ち合わせておらず、両親も礼儀作法には厳しいほうだったので恐縮した私は再度さらに深々と頭を下げ、多々テンパりながら


「いえ、本当に心より感謝しておりまする。」


と多少時代を遡ったお礼を返した。


「いやはや、困りましたね、そんなにかしこまられたのでは私の頼みごとが言いづらくなってしまいますね」


その言葉に、思わず「うっ・・」と肩をすくめ恐る恐る顔を窺うと笑顔は変わっていないはずなのにニンマリとしか形容できない雰囲気でこちらを見つめるサンタクロースと目が合う、すると、その笑顔に背筋がゾクリと泡立つ。


「では美雪さん、貴方には私の存在しない世界に行ってもらい私の代わりにサンタクロースになっていただきます。」


「・・・・は?」


と、呆気に取られる私を意にも介さず淡々とサンタクロースは説明を続けていく。


「サンタクロースの力として『幸福にする力』を授けますが、この力は単体としては効果を発揮しません。これは人々が生まれながらに持つ『幸福になろうとする意思』と合わさり始めて『幸福』という形を取ります。」


は?幸福にする力?なろうとする意思?頭の中に目まぐるしく飛び交う?マークを整理する間も無く、尚も説明は続いていく。


「そして『幸福にする力』の作用は力の強さと効果範囲が反比例する関係にあります。私のように世界中の人々に幸福を与えようとすると、範囲は世界中に広がりますが力は弱くクリスマスという限られた日に皆が強く『幸福になろうとする意思』を示した時だけに限られます。が、対象者の範囲を狭め力の範囲を限定すれば巨万の富をも与えることが出来る様になるでしょう。」


矢継ぎ早の説明に頭がついていかずアワアワしているといつの間に近づいていたのか、サンタクロースがすぐ目の前に立っており笑顔を浮かべつつも少し困ったような申し訳なさそうな微妙な表情を浮かべ、そっと私の頭を撫でた。


「一度この力の方向性を決めると変えることができません。よ~く考え、貴方は貴方の物語を作りなさい。

そしてこれは貴方のパートナーとなる者です、大事に持っておいきなさい。」


「パー・・・トナー・・・?」


と、そっと渡され今は自分の手のひらにある物に視線を落とすと淡く赤く色づいた2センチ程の丸い水晶の様な物に気づいた。


「あの、これは・・・」


しかし、視線を上げるとそこにはサンタクロースの姿は既に無く、それに気づくとフッと落下する感覚に襲われた。

反射的に何かを掴もうとするが元々フワフワと浮かんでいたので、都合よくわらが有る筈も無く私はドンドンと加速して落ちていった。

加速し光に飲み込まれ薄れていく意識に遠くから声が届く


・・・・応援していますよ 新しい紡ぎ手


・・・・新たな サンタクロースよ


「ふえぇぇ でもでも お髭はイヤですーーーー・・・・」


と、的外れな返事を返しながら美雪は異世界に旅立って行った。

サンタ「・・・髭・・・そんなにイヤかのぉ・・・」

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