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24.交渉(前編)

フィーリスの街は少し歪な形をしていた。

噴水のある広場を中央にして街全体を見ると南側より北側の方が広く、東側よりも西側に大きく迫り出すように広がっていっている。

最初はほぼ円形に近い街の外観だったが、この地方には丘が多く緩やかな傾斜が掛かっておりより平らな方へと家を建てていった結果、木々が枝葉を伸ばすように無秩序に発展していった。

質素な生活を望むチャオの家は古くから代々使われいて旧市街地に属する発展の少なかった南側に建っており、孤児院も万年財政難から移転はおろか改修すらおざなりに同じく旧市街地の東側にポツンと建っていた。


約束通り馬車の荷台に隠れながら移動する間、隙間から外を観察していると家々の外観は段々と古めかしくなっていき石畳から伝わる振動も大きくなっていった。

チャオの住む南側は旧市街とは呼ばれるもののちゃんと改修工事などが施されているらしく作りは古いが綺麗な印象を受ける、しかし同じ旧市街でも東側に来ると明らかに寂れた印象が拭えなくなっていく。


「ミユキ、孤児院が見えてきたぞ」


兄セリオスの言葉に御者台の方へ移動し2人の間から顔を出して正面を見ると


「う~わぁ・・・・」


「ははは・・・大分古い建物だし記憶に有る限り改修工事もしてたことないし、初めて見るとちょっと引くかもなぁ」


段々と近づいてくる建物はお世辞にも綺麗とは言い難かった。

敷地をグルリと囲む塀には所々に大きな穴が開いており防犯の役目は全く見込めなかったし、建物の外壁にも遠目から見てもわかるヒビが所々に走り、蔓系の植物が我が物顔でその上を這い回っていた。もしこの建物が日本の住宅街にあったなら・・・・間違いなくお化け屋敷として近所の子供達の噂になっていたに違いない。


長年の風雨に晒されてすっかり寂びれ切った建物は、しかしそれでも今も多くの子供たちを守っているのだろう、近づいていくと子供達の騒ぐ声が段々と聞こえてきた。

楽しそうに騒ぐ子供達の声に寂れてはいても此処は彼等にとって優しい場所なのだろうとホッと胸を撫で下ろし、ならばなお更この計画に加担してもらおうではないかと決意を新たにしていると


「ここ数年来てなかったけど相変わらずきったねぇ建物だなぁ」


「おにぃちゃんはココに来たことあるの?」


「あぁ、まだじぃさんが生きてた頃はかぁさんに付いてきて街に遊びに来ててな、孤児院の奴等とも何回も喧嘩したりしてな、でもそのうち仲良くなってなぁ」


「へぇ、そうだったんだぁ」


「院長が体を壊してからはココから独立していった数人が戻ってきて代わりに子供達の世話をしててな、その中の1人がマイセルって言って俺達の幼馴染って間柄なんだ」


「ほぉ~~♪」


と馬車に乗ってから黙ったままムスッとした顔で正面を睨んでいるルビスを覗き見ると


「・・・・なんだよ」


「ん~、マイセルさんは後でちゃんと紹介してもらうとしてぇ」


「マイセルは関係ないだろ!」


「マイセルさんの事は後でちゃ~んとするとしてぇ」


「だから関係ないって!」


「だ・い・じょ・う・ぶ♪ おねぇさんに任せときなさいってえぇぇぇ!!!!」


言い終わる前にガシッと頭を掴まれ半笑いのルビスにギリギリとアイアンクローをされたミユキが


「ギブギブギブギブ!」


と叫び、ペシペシペシペシペシペシペシとルビスの腕を叩く姿を子供達が呆然と見送る中を、孤児院の今後を大きく変える馬車がゆっくりと進んでいった。





勝手知ったる様子で建物に入っていく2人に付いて頭を抑えながらミユキも着いていくと奥からパタパタと足音をさせて1人の女性が走ってきた。


「ルビス、それにセリオスさんまで。

今日はどうしたんですか?」


「こんにちはルイ、今日はちょっと院長先生に用が合ってね」


そうですか、と言いつつチラッと私のほうを見る女性に、妹のミユキだよとルビスに紹介され互いに自己紹介をした後、ルイというその女性に促され院長室へと案内されて行った。


院長室の扉をルイがノックするとすぐにどうぞと声が聞こえ、室内に入ると1人の老人が揺り椅子に腰掛けこちらを見つめていた。

白いものが多くなってきている髪を後ろに流し穏やかな目をこちらに向けて微笑む顔は、どことなく「彼」を思い起こさせた。


「院長先生、ご無沙汰してます」


「おぉ、セリオス君か立派になったね、ルビスさんもよく来てくれたね。

・・・・そちらの方は、はじめてかな?」


「はい、はじめましてフィールランド家の末子でミユキと言います。一身上の都合によりあまり人に顔をお見せすることが出来ず、このような無礼な服装のままご挨拶をすることをお許しください。

本日は院長先生にお願いがあって伺わせていただきました」


「うん、礼儀正しい子だね。

フィールランド家の方々には以前からお世話になっています、私達でできることならお手伝いさせていただきますよ」


ローブで顔を隠したままなのを承諾されホッと胸を撫で下ろすも、ここからが勝負所だと密かに気合を入れなおす。


「まず最初にコレをご覧ください」


そう前置きしてテーブルの上に持ってきたパンを並べていく




はい、また前編とか言っちゃってます。


続けて後編を書いてますが・・・。

時間かかってしまったらすいません。

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