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21.波紋(前編)

少し復調してきました、今年の風邪は中々にヤバイです・・・長引きます。

皆様、お体にお気をつけください。


まずお前が気をつけろよ!・・・・・ハイ、御尤もで御座います。

最初は気にもかけずに通り過ぎていたんです。

でも好奇心旺盛なうちの子が目敏く見つけて少し話しているうちに味見をすることになり、雰囲気に推されてついつい買ってしまったんです。

買ってはみたもののパンを買うなんてと段々贅沢をしたんじゃないかと、無駄使いだと亭主にも怒られるかと不安にもなったのですが折角買った物を出さない訳にもいかず、お昼ご飯に帰ってきた亭主に料理と一緒に出してみました。最初はやはり不振がっていましたがいざ食べ始めてみると、いつもの料理にも良く合い会話も弾み楽しいひと時を過ごせ亭主も笑顔で仕事に戻っていきました。

そして子供の「また食べたい」の言葉に頷き、私は広場へと足を向けたのです。



騒ぐ子供につい好奇心が刺激され何の気なしに覗き見ただけだったんだ。

ローブを目深に被った見るからに怪しげな商人が売っていたことにも更に好奇心が刺激され、味見をどうぞと差し出された物を受け取りつつも聞こえた声が女のものに更に興味を引かれた。

渡されたパンを食べてみるとフワフワとした食感にいい香り、それにパン自体にも味が付いており女性が好きそうなとても美味しいものだった。

これなら最近疎遠になりつつある愛娘ともいい話題になるのではと買う意思を示すも、値段を聞いてみれば少し高めであり、買って買えなくは無いが少し渋って焦らしてやると焦れたらしい商人は渋々と値段を下げた、してやったりと思っていると他の奴等も便乗して買い始めた、ワシのお陰で安くなったんだぞ。

その後予想通り娘の反応は上々でまた買ってきてと強請ねだられたワシは意気揚々と広場へと足を向けたのだ。



俺は疲れていたんだと思う。

父は若い頃から無理をし仕事に励み一代で起業した人で、最近その無理がたたり体を壊し半分寝たきりになっていた。

元々が精力的に動き回る人だっただけに自分の体が思うように動かないことに戸惑い打ちひしがれていたし、そんな父を見て母も心を痛め同時にその介護にも追われ一気に老け込んだような気もする。

父の仕事を手伝い働いてはいたがいきなり全てを引き継ぐことになり、仕事に追われ余裕の無かった俺は母の「最近おとうさんが食べ物が美味しくないって全然食べてくれないんだよ」という相談すら頭の片隅に追いやっていた。

そんな時、広場で変わったパンを見つけ母の言葉をふと思い出しコレでいいかと軽い気持ちで買って久しぶりに家に帰ると、痩せて小さくなった父と母に愕然とした。

俺からパンを受け取り嬉しそうに父の元へと行く母に後ろめたさを感じながら、「あぁ、美味いなぁ、お前の買ってきてくれたパンは美味いなぁ」、「おとうさんが食べてくれたよ。あんたのお陰だよ、ありがとう、ありがとうね」との言葉に俺は心の底から謝罪した。

すまない、すまない2人とも。忘れていたんだ軽い気持ちで買ってきたんだ、今度はちゃんと2人のことを思って買ってくるから、だから以前の力強く綺麗な2人に戻ってくれ。

だから俺は広場へと駆け出したんだ。



広場で売られてるパンを私は藁にもすがる思いで買ったんです。

私の子供は生まれた時から病弱で、成長しても食が細く同い年の子と比べると痩せて小さい子でした。

何を食べさせても食が進むことはなく、この子の将来を考えると毎日が不安で一杯でした。

そんな時に私はこのパンを見つけ望みを託し家に帰り早速食卓に並べてみました。そっと子供の前に並べるとそのパンの形に驚きその柔らかさに驚き更にその優しい味に驚きながらぺロリと自分の分を食べきったのです。

初めてちゃんとした量を食べきったことに感激しているとジ~と私の分のパンを見つめているのに気がつき、これも食べる?と聞くとうんと嬉しそうに頷き更に食べ始めました。

生まれて初めての満腹感に幸せそうな笑顔を浮かべる我が子を見て私は決めました、どんなことをしてでもこの子が望む限りこの子にこのパンを与え続けようと。

決意を固め私はパンを買いに走りました。



本人の知らないところで幾つかの物語が紡がれ、自身が起こした波紋がどんどんと大きくなっていることに未だ気づかないミユキが今まさにチャオの家で高笑いをしている時、波紋は次の獲物に狙いを定め襲い掛からんとしていた。


長い列に並びながら彼はナゼ俺はこの列に並んでいるんだろうと、ふと思い返していた。

普段は彼は遠く離れたこの領地の首都ザッカスに住んでいる、その彼がナゼここフィーリスに居るかと言うと彼の仕える主が王都に赴くことになり、その間に休暇をもらい馴染みにしている鍛冶屋に剣の手入れを頼みに訪れていたからだった。

そしてナゼ並んでいるかと言うと


「明日には仕上げてやる、朝一で取りに来い。

んで俺の店の隣に行列が出来てるから並んでみろ、面白いもんに出会えるぜ」


とニヤニヤと笑いながら鍛冶屋の爺さんが言ってきたのだ。


ふ~と溜息をつきながら言われたからといって律儀に並ばなくても良かったんじゃないかと考えつつも、ノロノロと進む列の流れに合わせ足を進めていく。

少し前に若い男女の乗る馬車が現れ、男が馬車から馬を離し何処かへ連れて行き女が露店の準備を進めていった。テキパキとよく動く女で程なくして準備は済み


「ただいまよりパンの販売をいたしま~す、列を乱さないようゆっくりと進んでくださ~い」


と良く通る声で販売開始を告げてきた。

列の目的がパンだと判ったが今度はナゼわざわざパンを買うのかと疑問が浮かんできて、思わず目の前に並ぶ男に声をかけていた


「皆はパンを買うために並んでいるのか?」


「なんだアンタ、何も知らずに並んでたのかい?ご苦労なこったなぁ」


「いや、知人に並んでみろとだけ言われてね」


「ふ~ん、まぁここまで並んだんだ騙されたと思ってあのパン買ってみな、正直驚くと思うぞ」


またもやニヤニヤとした顔を向けられ何やらはかりごとでも企まれてる様なウンザリとした気分にもなったが、実際これだけの人々が並ぶのならそれだけの理由があるのだろう。

列が進み馬車が近づくと段々とパンの様子も見えてきた。

四角い箱のようなパンに大きめな丸いパン、小さなパンが2種類だろうか・・・どれも今までに見たことも無い形をしており、まだ少し距離もあるというのにここまでフワリといい香りが漂ってきていた。



また前編とか・・・。


オチないしね・・・。

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