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18.本音

まだ日も昇らない暗いうちから私は動き始める。


それは街に行った日より数日前からの日課になっており、暖炉に火をおこしオーブンとかまどに火を入れた後に井戸から水を汲み上げ手洗い桶に注ぎいれる。桶の冷水で顔を洗いその冷たさに身震いしつつも、ペシンと頬を叩き気合を入れ新たに桶に水を注ぎ足し飲み水用の水も汲み家にとって帰す。


次に少し前から考えていた酵母パンの代わりになる保険のレシピの製作に着手する、酵母を使わずともバター作成の知識と手順さえ公表すれば家庭でも作れそうなパイ生地作成にチャレンジしているのだ。

前回好評だった焼き林檎をあれから新たに作り足し冷やして保存してあるので具材はOK、外で固めておいたバターを回収しつつ家に入り粉をよくふるいにかけバターを細かく刻みサックリと混ぜ合わせる。混ぜすぎて粘り気を出してしまわないように注意しつつ塩と冷水を入れ更に混ぜ合わせ30分程寝かせておく。

生地を取り出し麺棒で伸ばし数回折り重ねては伸ばすを繰り返す、生地3:1で切り分け大きいほうの生地をバターを塗ったお皿に敷き余分な生地を切り取り、具材を敷き詰め切り分けておいた生地を1センチ幅に切り格子状に上に並べていく。


今まさに作ったアップルパイをオーブンで焼きながらも深い溜息が漏れた。


「ダメだ・・・作り方は簡単でも冷蔵技術がないココでは冬はまだしも夏場はできない・・・」


と最初からわかっていた問題点に行き当たり、ただの逃避行動だよねぇこれ・・・・と自嘲気味に笑っていると


「おはよう、相変わらず早いのね」


「おはよう、おかぁさん・・・・・なに、どうかした?」


いつもの時間に起きて来たセリスに朝の挨拶を返すも、ジッと顔を見つめる様子に聞き返すと、


「また何か変わったもの作ってるんだね・・・・ホント、ミユキは不思議な子だね」


「不思議・・・・変・・・かな?」


と困った風に笑うと、いいやと前置きして


「誰も知らない不思議な料理を作ったり、あっという間にアタシらの中に溶け込んできたり・・・・


本当ならね、アタシらはもっとミユキに警戒心を持っても良かった筈なのさ。見たこともない外見をして誰も知らないことまで知っていた・・・・でも、何でかねミユキをはじめて見た時何処かに置いて来ちまった大事なもんが戻ってきたような、そんな感じになったのさ」


私も、私も初めてセリス達を見たとき置いて来てしまった家族が、私を追い越し先回りしてここで居場所を作って待っていてくれたように思えた。


「ミユキはアタシらが独占してていいような存在じゃないのかもしれないね・・・・でも・・・でもね、それでもアタシはミユキを手放したくないんだよ」


なんでこんなに怖いのかねぇ?と私を抱きしめながらのセリスの言葉に、どれだけ自分の身勝手さがセリスや家族に負担を強いていたかを改めて認識させられるも力いっぱいギュッと抱きしめ返し


「ごめんね、心配ばっかりかけちゃってごめんね。でも、これだけは・・・今回のことだけは最後まで自分でやり遂げたいの、私がここへ来て初めて家族の一員としてやり始めたことだからちゃんと最後まで責任を持ちたいの」


しばらく無言で抱きしめあっていると不意に、そうかい・・・と呟き体を離すと私の頭を両手で包むようにしオデコとオデコをコツンと合わせて


「ならミユキ、フィールランド家の娘として街に行ってちゃんと落とし前つけてきな!

そして胸を張って戻っておいで!」


「はい!ありがとう、おかぁさん」


「まったく、頑固なんだから・・・・誰に似たのかしらねぇ」


「おかぁさんに似たんじゃないかなぁ」


などと言いつつ再び抱き合っていると立ち込める匂いに気づき、慌ててオーブンからアップルパイを出すも少し焦げてしまい顔を見合わせて笑いあっていると、起きて来たルビスが扉のところでなにがあったの?と呆気に取られていた。


その後街へ行いく許可を貰った事をルビスに話すと


「まぁ元々今日から許すって言ってたしねぇ」


「はぁ?!」


慌ててセリスを振り返ると明後日の方を向いて吹けもしない口笛を吹いていた。

もう!と言いつつポカポカとする私に、少しはお灸も据えないとねぇと言うセリスだったが、さっきのは紛れも無く本音なのだろうと心の中で再度謝りつつ怒った振りをしながらアップルパイを切り分け朝食の準備をするのだった。








(何か忘れてる・・・・・あ、そうだ!)





少しして起きて来たトルビスがいい匂いだなぁと言いつつも


「なぁ、セリオスが居ないんだがアイツはどこへいったんだ?」


セリオス?・・・・あぁ、おにぃちゃんか、そういえばどこに行ったんだろう?

皆でどこに行ったんだと悩んでいるとバンッと勢い良く扉が開き泥だらけでヨレヨレになったセリオスが入ってきた。


「とぉさん、かぁさん、徹夜で畑の仕事を終わらせてきた!

俺も街に行ってミユキを守る、だから今日ミユキが街に行くのを許してやって欲しい!」


「ごめん、もう許してもらっちゃった、エヘヘ♪」


ポリポリと頭をかきながら言う私に皆の視線が集まり、次いでセリオスに移される。


「あぁ、そうか・・・・・よかったね」


とセリオスは夢の国に旅立った。



皆様の視線が痛いです。





ミユキ視点かルビス視点かで悩み更新が遅れてしまい申し訳ありません。


そしてホントは兄のがんばりに折れるセリスの筋書きだったのですがセリスが勝手に動き変わってしまいました・・・。


名前出したから許してねセリオス君。


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