16.貢物
コトコトコト・・・・と、キッチンで煮立つ鍋を木のヘラを使って焦げ付かないようにグリグリグリと無心で掻き混ぜる。
目の前には2つの鍋があり、1つは玉葱と人参、鶏肉を買ってきた植物性油で炒めたあと月桂樹を加えアクを取りながら煮詰めているもの、2つ目はバターを多めに溶かしそこに小麦粉を加え良くバターと混ぜ合わせたあと少しずつ牛乳を加えて作っているホワイトソース。
玉葱を微塵切りにし飴色になるまでよく炒めたがコンソメスープの元があったらなぁとソースを掻き混ぜながら、ふと脳裏を過ぎったが横で仁王立ちしているセリスのオーラを感じ取り再び無心!無心!と無我の境地に逃げ込んだ。
広場の騒動の後、少しでも早くパンの問題を進展させる為にルビスに連れて行って欲しい所があると言うと、とても良い笑顔でアイアンクローを決められ万力のような力と共に
「ミユキはとっても疲れてるようだから今日はこのまま家に帰ろうね♪」
「ぉぉぉぉおおせのままに!!」
と家に強制連行され、パンが売れたことチャオに私の容姿を話たこと、そして広場での私の武勇伝までこと細かく話していただき、言い付けを守らなかった私にセリスからの笑顔の制裁が降り一頻り私の悲鳴が木霊したのだった。
そして今現在、食べ物でご機嫌を取ろうと・・・いやいや当初の計画通り仕入れたスパイスで料理作成に挑んでいるのですが、後方から仁王立ちでジッと見つめられていると流石に気が滅入ってくるので、
「お、おかぁさん・・・・ちょっ・・・と気が散るかなぁ・・・」
「・・・・・何か問題でも?」
「どうぞご覧ください母上様」
ルビス以上の眼力に早々に白旗を揚げ無我の境地に行き着いたのです。
その後、煮込んだスープとホワイトソースを混ぜ合わせ塩と挽いた胡椒で味を調え、空いた鍋を手早く洗い新たに湯を沸かしブロッコリーを塩茹でする。
ブロッコリーは水で冷やし軽く絞って置いておき、もう1品できそうだと林檎を取り出す。
林檎は皮を剥かずに1センチほどの厚さに切り、バターと砂糖とともに軽くソテーしお皿に重ならないように並べ、トルビス秘蔵のお酒をちょっと拝借して振り掛けオーブンで焼く。焼き上がった林檎にシナモンパウダーを振り掛けると独特の香りがキッチンに広がり食欲をそそる。
ブロッコリーを鍋に入れ温めた後お皿に盛り付け、パンを添えて焼き林檎と共に皆がくつろぐテーブルへと運んでいく。
「はい、お待たせしました~、噂の薬草料理です」
「薬草だ薬草だってルビスが脅す割にはいい匂いがして美味しそうじゃないか」
「これは林檎を焼いてるのか?!それに変わった香りがするなぁ」
「チャオの所で見た薬草が入ってるとは思えないなぁ、ホントに入れたのかい?」
「しっかり入ってるよ、ね!おかぁさん」
「あぁ、ちゃんと入れてたね」
薬草料理というネーミングから想像してた見た目とは違う料理に安堵しつつも、誰も料理に手を付けようとしない。
へぇ~そう~一生懸命作ったのに食べないんだ~あ~そう・・・・
と目で語ると、皆恐る恐るシチューを口に運び出す。
「「「美味い!!」」
その後、美味い美味いとパンの時のように大好評だったが他に表現の仕方もあるだろう・・・と思いながらも、スパイスの独特な風味も受け入れられて小麦粉料理第2弾も成功したことにガッツポーズをする。
ちなみに女性陣には焼き林檎が特に好評で、バターと砂糖の甘さと林檎の酸味にシナモンのアクセントで大いに女性中枢を刺激し、後日冷やして食べようと多めに作った全てを別腹スペースへと格納した。
デザートを食べ満腹になり上機嫌なセリスとルビスを観察し今なら行ける!と確信し、お怒りモードの時に降された『しばらくの間は街への外出禁止令』の解除の交渉を開始した。
「ねぇおかぁさん、」
「ダメ」
「・・・いや、あのね、」
「絶対ダメ」
「お、おねぇさま、」
「無理」
終了した・・・・。
次話ついに彼の出番が!
・・・くるといいなぁ。
てか短かったですね、すいません・・・。




