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14.良薬

べちょっ・・・という音と共にチャオの顔に濡れ布巾が被せられる、顔全体を強打しているためご丁寧に顔全体を覆うようにすっぽりと・・・。


「ちょっとルビスったら、ちゃんと絞らなきゃ水が垂れて床まで濡れちゃうじゃない」


「いや~この方がよく冷えるかと思ってさぁ」


口まで覆われている為、当然のごとく呼吸のできないチャオはぷるぷると震えだす、チワワみたいでカワイイ。


「あ~お腹空いたなぁ」


「そうだね、チャオが起きたら3人で食べに行こうか」


ぷるぷると震える手がもがく様に空を彷徨い、やがて静かにぱたり・・・と地に落ちていった。


「「あ、死んだ?」」


「ぶふぁ!げほげほげほ・・・」


予備動作の無い状態から勢い良くがばっと起き上がると、布巾が落ち自由になった口から貪るように空気を吸い込むチャオに、


「「おはよう」」


「ぜぇぜぇ・・・・他に言うことがあるでしょう・・・・」


「「お腹空いた」」


ぴったりと息の合った二人に力なくパタリと倒れこみながら、も、いいです・・・とシクシク泣くチャオでした。


果たしてミユキがルビスに感化されたのか、ルビスがミユキに感化されたのか、とても仲の良い二人は外見こそ血の繋がりを感じさせないが確かに姉妹なのだと思わせる何かを持っており、倒れこんだままのチャオはじゃれ合う二人に微笑ましい気持ちになりながらも伝承のことが脳裏を過ぎり、二人に見えないようにそっと悲しげな表情を浮かべていた。






「んで、どうする?アタシらお昼食べに行くけどアンタも一緒にいくかい?」


「そうですね、この後は予約も入っていませんしご一緒させていただきます。

・・・と、その前に先にテーブルに出しっぱなしの薬草を片付けちゃいますね」


ゴソゴソと無造作に置かれていた薬草を片付ける手元を見ていたミユキは、ふと見覚えのある物を見つけ目を見開き、よくよく見てみれば他にもいくつか自分の知識に触れる物が有ることに気づいた。


「まままままって!それちょっとみせて!」


「きゃ!」


半ばしがみつくようにチャオに抱きつきその動きを止めてテーブルの上の薬草達をみる。

やっぱりこれは月桂樹の葉だ、それにこれは山椒の実っぽい、あぁ!この匂いはシナモンだ、と注意深く観察してみれば探していたスパイスが周囲のいたるところに保管されていた。

薬屋にスパイス、この状況でやっと私は自分の過ちに気がついた。私の認識ではスパイスは調味料だったがこちらの世界ではスパイスは現役で薬なのだと。


チャオに他の薬草も見てもいいかと尋ねると、どうぞと笑顔で了承され、ありがとうと言いつつ壁に備え付けられた小さく分類された引き出しを開けて行くと、


「あった!」


小さいコロコロとした黒い粒、黒胡椒だ。


「ケヒトの実ですね、蜂蜜と混ぜて処方したりしますがそれ単体では粘膜が炎症を起こしたりするので取り扱いが難しい薬です」


いくつかの薬草を売ってくださいと言うと少し考えた後に了承してくれ、黒胡椒の実とシナモンパウダー等数種類、貴重なものも多く今日の売り上げの大半を使い切ってしまった。

さっそく今日の夕ご飯にこれを使って1品作ろうと言うと、ルビスとチャオが料理に使うのかと心底驚いていたので味は食べてのお楽しみにね♪とニッコリ微笑むと、


「ミユキの料理の腕を疑うわけじゃないけど、薬草で作った料理となると・・・・・う~~ん」


と項垂れるルビスの肩をポンポンと叩きご愁傷様とニコニコしてるチャオに、今度街に来るときにはちゃんとチャオにも作ってきてあげるよと言うとルビスにポンポンと肩を叩かれ項垂れるチャオがいた。

二人とも失礼な!今に見てろよ、と思いながらも予定していたカレーから無難なシチューに密かにメニューを変更するミユキであった。


ほら、味覚の差とか色々あるし、いきなりスパイスからカレー作りって難易度高いし、最初はやっぱり食べて優しいシチューからだよねっと心の中で誰かに言い訳をしながら三者三様さんしゃさんよう悲喜ひきこもごもで店を出る三人だった。




チャオの店からまた商店街のほうへと戻り、二人の馴染みの店へと入店し二人はさっさとメニューも見ずに今日のお勧めを注文し、慌てて私も同じものを注文してしまった。


「ゆっくり選んでよかったのに」


「いや、あの流れ的にはそういうわけにはいかないかと・・・」


「そういうもんかねぇ?」


「さぁ?私にはちょっとわかりません・・・」


と、ここでちょっと日本人特有の流され的民族性などを披露しつつ他愛も無い会話で盛り上がりながら楽しく昼食を終えると、


「こう言っちゃなんだけどミユキのパンを食べなれちゃうと、もう以前のパンじゃ味気なく感じるね」


「なんですか?ミユキさんのパンて」


「あぁ、ミユキが考案した不思議なパンさ、フワフワで柔らかくていい香りがするんだ、スープに浸さなくたっていくらだって食べられるのさ」


「へぇ~美味しそうですねぇ~私も食べてみたいなぁ」


「そうだね今度来るときにはチャオの分も作ってきてやるよ。

ね、ミユキ」


「もちろん、しっかり取ってくれた薬草の代金分、私もしっかりパンで稼がなきゃいけないからチャオにもちゃんと『売りに』いくよ」


「あうぅぅ、貴重な薬草もあったしあれでも結構オマケしたのにぃ~」


冗談だよ~と笑い合いつつも、まぁと前置きしてポツリと一言。


「パンと一緒に薬草料理も持っていくのは確定なんだけどね♪」




だからそこで項垂れるの失礼だから!

ルビスもそこでポンポンと肩叩かないの!



良い子は冒頭の行為は危険なので真似はしないでくださいね。

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