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13.街の住人(後編)

チャオ族と名のった女性は独特な雰囲気を称えたままニコリと微笑んだ。

彼女の服装はインドの僧侶を彷彿とさせるもので、肩からかけた大きな布地が目を引く。白地に朱色で複雑な紋様が描かれており、この街では珍しい茶色の髪を後ろで一つに纏め、腰の辺りまであるその髪を同じ紋様が描かれた布で縛っている。


チャオ族?と私が疑問を口に出すと一瞬おや?と顔をくずし首を傾げるが、すぐに笑顔に戻り


「チャオ族とは皆が呪術師であり医師であり薬師である一族のことです。

チャオの村の外で名前を明かすことは禁じられており、私たちは総じてチャオと呼ばれています」


「名のりが禁じられている?なぜですか、なぜ名のってはいけないのですか?」


と、つい疑問に思ったことを口にしてしまい何か重要な掟に関わることを不用意に聞いてしまったかと後悔したが、特に気にする風も無くあっさりと説明してくれた。


チャオ族は男女共に呪術、医術、薬草学を幼い頃から学ぶ。

両親を師とし、最初は産まれたチャオの里で学び5歳になると師である親と共に各地にあるチャオの村々を巡る、そしてその道中で野草を摘み集め乾燥させ薬にする術を学び、人々を無料で診察し医術を学び、飢饉や疫病に遭遇すれば呪術を施しその疫を払うのだという。

人々はチャオ族が訪れれば無料で宿を提供し、歓迎の宴を開いて迎え、旅に必要なものを提供する。

その後独り立ちすると女性は街に定着し、男性はそのまま各地を巡り薬草を集めて各地に配りながらチャオ族同士で意中の相手を探して結婚すると里に戻り子を成す。


「私たちが名のらないのはチャオ族の行いを個人の行いにしない為です。

名のった時点でその行いは個人のものと成ります、いい行いも悪い行いも。

しかしチャオ族として行なった行為はそのまま一族の行いとなるのです、いい行いをすれば一族皆に易になり、悪い行いをすれば一族皆にその責が及びます。

一人一人がチャオの代表であり、一人でも多くの人を救う為に私たちは名を封じ村をでるのです!」


「まぁお陰でアタシの中ではチャオ族=寝ボスケなんだけどな」


「うあー!」


ルビスの一言にチャオ族の、以後チャオは頭を抱えて苦悩する。


「す!すばらしいです!」


そんな二人を無視して私は叫び、それに二人がビクッと一歩引くがそれより早く私がチャオに詰め寄りその両手を捕らえながら一気に捲くし立てた。


「そんな素晴らしい一族が存在するとは!まるで国境無き医師団のようです、もうこれは祝福するしかありません!残念ながら今はまだできませんが力を手に入れた暁には真っ先に行使いたします、ええ!いたしますとも、というかこれにしないで何にするんだって感じですよ!!」


あぁん!なんでまだ力がないんだー!と、尚も一人で悶えていると、


「妹さんだいじょうぶ?」


「ああ、時々どっかにぶっ飛んでいくけどすぐ戻ってくるから・・・・」


「そう・・・・」


と生暖かい目で見守られていたが、気づくのはもう暫く後のことでした。







コホンと小さく咳払いし、


「お騒がせいたしました」


「どういたしまして」


騒いだことで喉が渇き、それを察して入れてくれたお茶を飲みながら会話を仕切りなおした。


「大変感銘いたしました。今後もし私で手伝えることがあったら協力させてください」


「ありがとうございます。チャオの総意として貴方に感謝いたします」


互いにニコリと微笑み合っていると、顎に手をやりう~~んと思案していたルビスがそっと私の耳に近づき声を潜めて話しかけてきた。


「ミユキ、チャオにアンタのことを話そうと思うんだけど、どうだろう?」


「え!?」


と突然の申し出に驚くと、


「チャオたちは信用できる、私たち家族以外にもアンタの事情を知ってる奴がいたほうがもしもの時にいいと思うんだよ」


もしもの時って・・・?と思いつつもルビスが信用できると断言するなら異論は無いので頷くと、


「チャオ、この子をちょっと見てくれ」


と言ってローブのフードをソッと捲くり、私の顔と髪を晒すと目の前のチャオが!っと息を呑むのが感じ取れた。各地を巡るチャオが息を呑むほどにこの地方以外でも黒髪と白い肌は珍しいのかと、改めて己の異質さにやれやれと思っていると、チャオはスッと手を合わせ瞑目しつつこうべを垂れた。


「ちょ、ちょっとどうしたんだい?」


驚いたルビスは椅子から立ち上がり、私は事態にに着いていけずポカンとした。


「チャオの伝承にこう有ります。黒髪黒瞳の白い乙女は赤き従者を伴い幸福とともにやってくる・・・・と」


「なんのことだいそりゃぁ?」


というルビスの言葉も聞こえないほど、私は心底驚いていた。

黒髪黒瞳で白い肌・・・・うん私だ。赤き従者・・・・パートナーだと渡された水晶は淡く赤く染まっていた。そしてサンタクロースから託された力は『幸福にする力』・・・。

そっかぁ・・・パートナー君は従者でもあったんだねぇウフフ・・・とか現実逃避している間に話は進みチャオはポンッと手を叩くと、


「まぁ、そういう言い伝えがあるんですよ。

ありがたいので拝んでみました♪」


その軽い言い回しにルビスの肩がストンと落ち私は椅子からズリっと滑り落ちた。


「あ!アンタはー!紛らわしいことするんじゃないよ!」


「んひゃぅ!」


ルビスがペシっと頭を叩くと聞き覚えのある悲鳴を上げて痛いですよー!と文句を言っているチャオと一瞬目が合うと、フッと真剣な視線を向けられた・・・・ような気がしたが、次の瞬間にはなおも怒りが収まらないルビスから逃げる為にスルリと外された。

気のせいか?と思っていると、あっ!こけた・・・・。


床に置いてあった箱に躓きビッタン!と音をさせてチャオは顔からダイブしていた、あれは痛いなぁと思いつつも慌ててルビスと駆け寄ると頭の上にピヨピヨとヒヨコが見えるような半笑いの顔で気持ち良さそうに失神していた。



重要な人物・・・というか一族がやっと出せました。

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