ソウマ、出陣
兵の行軍は順調。
予想通りのタイミングでシスカの町から程よく離れた草原に、ミハエルの軍勢は現れた。
歩兵、騎馬兵の人間の兵士たち。その後ろから、見たことの無い異形の魔物-おそらく造魔だろう-が控えていた。
そして、その一番奥。
これだけ離れていても、その存在感は圧倒的だった。
10mはあろうか。
頭に巨大な角を生やし、全てを噛み砕かんとするかの如く上下に生えた強大な牙。
一つしか無い目は大きく、視野角も広く取れることであろう。
山のように盛り上がった筋肉は、鋼でできているかのように強靭でその手に握られた武器は、武器と呼ぶのもおこがましい。
その大きさ、重さだけで、一つの町を破壊できるのではないかという、金属の塊だった。
サイクロプス。
一つ目の巨人は広く陣形をとる軍隊の最奥あってなお、一人立つソウマに、あり得ないほどの殺気を送り続けていた。
『やっと着きましたよ、ソウマ君。ツクヨミの街を通してくださって、ありがとうございます。……おや、エグゼ君の姿が見えませんが、せっかくの剣が、完成しなかったのですか?』
そのサイクロプスから発せられる声は、先日聞いたミハエルと同じものだった。
ただの怪力だけではない。
天才と賞された、ミハエルの戦術をそのまま大軍に伝えることのできる、知将でもあるのだ。
なんという恐ろしい敵なのだろうか。
しかし。
「なに、この程度の兵力なら、俺一人で十分だから、エグゼには休んでもらってるだけさ」
不敵に笑うソウマ。
実際。
剣自体は出来上がっている。
あともう少し。
この地にいる、日の大精霊サニーとの契約をしなければならない。
果たして、この戦いが終わるまでに、間に合うのか?
『さて、この大群を前にお手並み拝見と行きましょうか、ソウマ君』
10万にも届く大軍を前に、ソウマはただ一人、その孤独な戦いを開始した。




