戰場
そして。
そして、ついに。
シスカの町に、今までにない危機が訪れる。
それは、もちろんシスカの住民たちも知らされいた。
戦場となる広大な野原は、小高い位置にあるシスカの町から全体を見渡せる位置にあった。
だからこそ、町人にも見えてしまったのだ。
これから起こる戦いが、どれだけ絶望的なのかが。
人間の兵、さらには見たことのないモンスター軍団。その一番後ろに一つ目の巨人が座している。
それはどれほどの数だろう。
1万は軽く越え、5万、10万まで迫ろうである大軍だ。
「ママ……」
小さな子供はあまりの恐ろしさに泣くこともできずに母親に、父親にすがりつく。
対するはこちらの戦力は、人間の男一人のみ。
子供の恐怖も当然である。
一体ルドルフは何を考えているのだろうか。
これほど戦争なら、無条件降伏をしても恥ではない。
むしろ英断だ。
しかし、町人たちの意見に、ルドルフは頑として首を縦に振らなかった。
王政グランベルトの軍門に降るくらいなら、この町ごと死を選ぶと言っていた。
確かに町人たちも、グランベルトに与するのは願い下げだった。
もしシスカの町の質の高い武具がグランベルトに渡ってしまったら、他の3団体も駆逐され、あっという間にこの大陸全土がミハエルのものになるだろう。
そうなるくらいなら、戦って死ぬ方がまだましだ。
それなのに、ルドルフは旅人の2人に、この戦争を預けたのだ。
自分たちではなく、あの若者たちに。
しかも、どれだけ強いが知らないが、今戦場に立ってたいるのは、たった一人の人間である。
相手は、あの大英雄率いる至高の軍団と呼ばれた魔法騎士団を打ち破ったミハエルの軍勢である。
それこそ衝突してすぐ蹂躪されるのがオチであろう。
後ろにいるモンスター軍団の出番もない。
それが、町人たちの予想だった。
そして、それは百人いたら百人がそう予想してもおかしくない結末である。
しかし、ルドルフだけはあの人間が一人、もしくは亡国の騎士と二人であの大軍を倒すと思っていた。
ーー気でもふれたか?ーー
誰もがそう思っていた。
そう戦闘が、いや、戦争が始まるまでは。
た時と同じだ。お前の気持ちをありったけ込めろ」
「あぁ」
エグゼの心の内。
それは帰ることは叶わない、焦熱地獄。
飾らない言葉で剣を打つ。
聖エルモワール王国。
育ててくれた母
孤児のエグゼを拾ってくれた姫
王、王妃。
魔法騎士団の団員や、城で共に過ごした仲間。
造魔、造反者、ミハエル。
魔法、精霊。
エグゼはたくさんのモノを失ってきた。
それは自分自身の弱さのためだ。
エグゼがもっと強ければ。
ソウマの半分の強さでも持っていたなら、結末は変わっていただろう。
倒すべきはミハエル。
しかし、憎むべきは自分、このエグゼ・トライアドだ。
大精霊の強さに自惚れ、自分自身を鍛えなかった無力な自分。
今一度溶鉱炉に剣を、自分を入れて、溶かし鍛え打つ。
もう二度と敵を逃さぬよう。
次こそは、守るべき人を守れるよう。
自分を地獄の業火で焼き尽くし、ミハエルを道ずれにする。
前回の『大いなる精霊王の剣』が平和の象徴で光だとしたら、今回の『大いなる精霊王の剣』は戦争の象徴で闇だ。
怨敵を打ち滅ぼすための剣。
そこに、エグゼの聖の感情が入る余地はなかった。
(エグゼ……)
エグゼのサポートをしているたたらにも、その感情は身を焼き尽くすように侵食してきた。
このままではエグゼの魂は燃え尽きてしまう。
そうなりそうなとき、たたらは、仲間はエグゼを救うことができるのであろうか。
エグゼが一つ槌を振るうごとに、剣はエグゼの心を吸い込み、強力になっていく。
この剣なら、エグゼの魂の存在力を全て使い果たしてでもエグゼの願いを叶えるだろう。
こうして、復讐のための神剣は産声を上げる。
エグゼの心を反映しながら。




