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人外娘さんと真面目にファンタジーしちゃう本  作者: 葛葉龍玄
亡国の魔法騎士

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大いなる精霊王の剣

 精霊石を高炉に入れ、溶けたら鉄槌で叩き、不純物を取り除き、鍛え、また高炉に入れる。この時点で、剣の中心となる精霊石は、折れないために柔らかく作る。

 その上に、切れ味を良くするため、曲がらないために、硬い精霊石でくるみ、更に鍛え上げる。

 宙に浮く鳥の羽根をも両断する切れ味と、鉄を切断しても折れず、曲がらない柔軟で強靭な剣を打ち上げる。

 不純物を取り除き、剣を作るに値する精霊石のみを残す。



 この技術は何百年と剣を作り続けてきた、たたらをもってしても、未だに困難な作業だ。

 しかし、これだけではただの切れ味のいい剣で終わってしまう。

 特に素材が「石」である。

 そんなものから、鉱石から作るどのような剣にも勝る剣を作らなければいけないのである。

 そのため、今までは魔法力を使、剣に強化魔法を付与した鉄槌で鍛えていた。

 しかし、今回は魔法は使えない。

 その対策としての房中術だ。

 今まで。

 エグゼが倒され、ミハエルが政権を取るようになってからたたらは、この日が来ることを予見していた。

 エグゼなら、必ず生き延びて、ミハエルに反旗をひるがえすだろう、と。

 今日、この日。この時のためにたたらは気を溜め続けた。



 剣を作り続け、更に質の良い武器を作る試行錯誤を重ね、気を練り、房中術をマスターした。

 昨夜エグゼと交わった気は、今までの魔法力を遥かに上回る強大なチカラとなり、たたらの体内で渦巻いている。

 それをあらん限りの力を込めた両の腕に託し、鉄槌を打ち下ろす。

 その度に火花が散る。

 その輝きは、正に命の煌めきそのものだった。

 一つ打ち、気を込める。

 二つ打ち、人生の集大成を掛ける。

 三つ打ち、その生命全てを捧げる。

 二人いる鍛治場に、言葉はなかった。

 あるのは、この大陸を救うために、今まさに生まれ落ちんとする、伝説の剣の産声だけだ。



 ……。一方。

 エグゼは、たたらから渡された精霊石をひたすらに磨いていた。

 たたらに指定された大きさの球形にするために……。

 


 夜の帳が降りる頃。

 台所には、鼻歌を歌いながら夕食を作るソウマの姿があった。

 たたらからお金を預かり好きに使っていい、と了承を得ていた。



 朝、日が昇る前からこの時間までたたらとエグゼは、ずっと鍛治場に籠りきりだった。

「ふたりはごはん。食べないのかなぁ?」

 ティアラが不安そうな声をだす。

「お腹が空いたら、そのうち出てくるわよ」

 アーニャは、節足の先でティアラと遊びながら答える。

「あの様子だと、たたらは出てこないだろう。エグゼはそろそろ出て来そうだけどな」

 煮物を作っている間に、パンをテーブルに運び、メインディシュの仕上げに入る。

 料理も仕上がる、という時にエグゼが鍛治場から出て来た。



「えぐぜ〜!」

 嬉しそうにティアラがエクゼに飛び寄る。

「もういいのか?」

「あぁ。僕が出来ることはほとんどもう終わったよ。あとは剣が出来上がるときに、チョット手伝えばいいって。

 剣ができ次第、サニーと契約しに行くよ」

 エグゼはご飯を今か、と待ち構えているアーニャに目を向ける。

「姫……」

 ぽつりと呟いて、席に座る。

 そんなエグゼの様子に気づくことなく、アーニャは運ばれてきた料理に手を出すのだった。



「おい、アーニャ。ちゃんと頂きますしたか?女の子なんだから、女の子らしくしとけよ」

「あんたは、私のパパか!しかも、女だから女らしく、とかなに?差別?そんなの今時流行らないわよ!」

 お肉を口いっぱいに頬張りながら、アーニャが口答えをする。

「差別、というか、女の子が女の子らしくするのは、女の子の特権だろ?

男が女の子らしくしたって、吐き気がするだけだ。特権は使えるなら使わないとな」

 エプロンを外し、自分も食卓に着く。

「特権、ね……」

 そう言われると、なんとなく納得してしまった。

「ところで、エグゼはなにか予定はあるのか?」

「僕か? 僕は明日、この町の町長のルドルフさんに、状況の説明をしに行こうかと思ってるんだ。町は必ず守る、ってね」



「なるほど。それには、俺もメリクリウスの代表として、着いて行くか。そして、空いた時間は最後の悪あがきをするか!

 とりあえず、飯を食ったらまた鍛錬だ!」

「ちょっと、あんたはなんでそんなに元気なのよ! 帰ってきてからさっきまで、散々馬鹿みたいに筋トレしてたのに、まだ運動する気? いい加減やすんだら?」



 信じられない、と言った表情でアーニャはソウマを睨みつけた。

「それに、エグゼだって、疲れてるわよ」

「ありがとう、アーニャ。確かに疲れてるけど、でも、身体を動かしていた方が気がまぎれると思うんだ。今の僕にできることなんて、ないからね」

 エグゼは、そう言って少し寂しそうに優しく微笑む。

 その笑顔をむけられたアーニャは、少し頬を染めて、

「ま、まぁ、エグゼがそう言うならいいけど……。でも、この筋肉バカに付き合ってたら明後日も満足に戦えなくなるくらいしごかれるから、気をつけてね」

 と言った。



「うん。その辺は自分の限界はわかってるから、大丈夫だよ」

「う、うん! 頑張ってね、エグゼ!」

「ありがとう」

 頬を紅潮させるアーニャと、それを爽やかスマイルで返すエグゼ。

「なんと言うか、アーニャは乙女だな……」

「え〜。エグゼが、天然のおんなたらしなんだよ〜。あーにゃも純粋でかわいいけど」

 そんなふたりを、ソウマとティアラはニヤニヤとしながら、見ているのだった。



 翌日。

 エグゼとソウマは二人、このシスカの町の代表に会いに来ていた。

 この町に来たときにも会った、ルドルフだ。

「久しぶりだな、エグゼ、ソウマ」

「お久しぶりです、ルドルフさん。」

「エグゼに、ソウマ。スミカの村を救ってくれたそうだな、そのことについては礼をいおう。石炭がなければワシ等も仕事ができんからな」

「いえ、こちらこそ、いい経験になりました。

 僕の方は国の大事だというのに、一人おめおめと生き残りましたよ。

 しかし、どうせ拾ったこの命。最後に、ミハエルに一矢報いてから、散らせてみせます」



「ふむ……。まぁ、ワシ等は特にお前さんに恨み辛みは抱いていないがな」

 口元に蓄えた立派なヒゲを、片手で撫でつけながらルドルフは答える。

「もともとこの町は、ミハエルに攻められ、落とされそうになったらどういう対処をするか、もう決めてある。お前さんら二人の英雄が勝てなかったとしたら、ワシ等も諦めて、最後の切り札を使う。だから後ろにいるこの町の住人のことは気にせずに戦ってくれ」

 ルドルフは、そういうと奥に引っ込もうとする。

「待ってくれ!」



 特に言葉を発しようとしなかったエグゼに対して、ソウマはなぜかルドルフを呼び止めた。

「もし。もしも、だ」

 立ち止まりはしたものの、振り返ろうともしないルドルフの背中に、ソウマは語り続ける。

「俺たちが、たたらとの約束を守り、敵味方の『普通の者たち』に死者を出すことなく、この戦闘を終わらせることができたら、ぜひこの町の力を貸して頂けないか? この大陸を救い出すために、あなた方の能力を、ぜひ!」

 振り返りもせず。

「たたらが言っていたな。奴等が従える、造魔以外の死者を出さなければ、か。

 そんなできもしない約束を、よくもしたものだ。

 いいだろう。もし本当に成し遂げたのなら、チカラを貸そう。できたら、な」

 ルドルフはそういうと、今度こそ奥の部屋へと戻って行った。



エグゼとソウマは、ルドルフ宅を後にしていた。

 その部屋の奥には、スミカの村の村長ビーンがいた。

「叔父貴も素直じゃねえな。期待している、とはっきり言ったらどうなんだ?」

 はっきり言って、敵の大隊を前に一人で戦場に立つこと自体がばかげてるのだ。

 シスカの町の住民からも、多くの抗議が出ている。

「確かにあの男は強い。ワシがあった人間の中でも、最強だよ」

 ルドルフは話す。

「しかし、強いだけではこの戦は勤まらん。だからこそ、無理難題を押し付けたんだ」

 あの男が、どこまでこの難題を解決できるか。

 そして、伝説とまで歌われたエグゼの復活。

 その二人がタッグを組めば、打倒グランベルトも夢ではないかもしれない。



「だからこそ、町の人間にも、見せてやりたいのさ。本当の希望という奴をな」

 山の麓の高台にあるこの町からは、戦場になるであろう、草原がよく見える。

 ならば、この戦いも町人たちに見せる格好のタイミングだ。

 この大陸を救おうとしたら、どれだけ強くなくてはならないのか。

 それを目撃してもらうのだ。

「叔父貴は10万の軍勢に、あの二人だけで勝てるとおもっているのかい?」

「もちろんだ。じゃなきゃ、ワシたちこの町の自警団も一緒に戦うさ」

 それは期待であった。この大陸を守る勇者たちへの。

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