術後の朝
「いい顔になったな、エグゼ」
朝一番、顔を洗いに出てきたエグゼに、ソウマが話しかける。
「そ、ソウマ! な、なんだよ、藪から棒に!」
慌てているのが何かあった証拠なのだが、エグゼは取り繕うことも出来ず、うろたえている。
「そう恥ずかしがるな!なにもからかいに来た訳じゃない!」
そう言ってソウマはエグゼの肩を抱くと、耳元で呟いた。
「護る者ができることは、いいことだ。なにより自分が強くなれる。窮地に立たされた時に、その護るべき存在を思い出してみろ。絶対にあきらめなくなる。必ず立ち上がれる。必ず勝てる。
特に、お前は一度絶望を知っているからな。二度と同じ思いはしないだろう」
ソウマは、エグゼを離すと。
「さぁ、飯だ。飯!」
と大きな声を上げて、食堂へと歩いて行った。
「……。朝ごはんはまたソウマの手作りかな?」
ソウマの料理の腕は逸品だ。朝から楽しみである。
そして、取り敢えずたたらを起こそう、と一度寝室に戻るエグゼだった。
食卓に並ぶ料理。
朝ーすでに昼に近い時間だがー飯にしては、かなり豪華だった。
「この料理は、どこから掻っ払ってきた?」
開口一番、たたらが不穏なことを言う。
「なにを言ってるんだ、たたら。これは俺が腕によりを掛けて全部作ったんだぞ!」
エプロン姿のソウマがか片腕を腰に当て、もう片方の手で、お玉を振りまわしている。
「なっ!? 貴様がかっ?」
心底驚いたように、たたらが驚愕する。
「そう、この男、こういう所無駄に器用なのよね」
興味なさげに、髪をいじりながら呟くアーニャ。
「すごい! そーまは、なんでも出来るんだね!」
正反対の反応をしてくれるティアラ。
「戦場に長くいるとな、うまい飯が食いたくなるんだよ!
飯は活力の元。しっかり食って、しっかり休んで、いつでも万全の体調で戦闘に臨める様にしないとな」
エプロンを外し、自分も席に着く。
「それに、お世話になってるんだ。これくらいのお礼はしないとな。じゃあ、頂きます!」
「「「いただきます!」」」
なんとなく、みんなで声を合わせて食べ始めてしまう。
「む……。うまい……」
憎まれ口でも叩こうと思ったのだが、悔しいかな、本当に美味しい。
「そーま、そーま! これすごいおいしいよー! それになんか、お祝いみたいだね!」
ティアラは専用の食器と、特別に小さく切り分け、盛り付けられた料理を嬉々として食べている。
「そう言えば、メインの肉なんかは、お祝いの時の料理ね。なにか、お祝い事なんかあった?
むしろ、絶体絶命と言っても、過言ではないんだけど……」
『お祝い』という言葉が出た途端、たたらとエグゼの顔が真っ赤になる。
「あっ」
二人の顔を見て、ティアラがなにかを察する。
「そうなんだ〜! 確かに、お祝いだね!」
といつも以上にニコニコと楽しそうな笑みを浮かべる。
「? なんなの?」
一人、訳が分からず、疑問符を浮かべているアーニャだった。
こうして昼に近い朝食は、たたらとエグゼにとっては、せっかくの料理の味も分からない針のむしろ状態で過ぎて行くのであった。




