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MagiaLostFantagia  作者: 葛葉龍玄
亡国の魔法騎士

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17/24

聖山へ

「聖山という割には普通の山だな」

 ソウマが道なき道を歩きながら声をかける。

「今はまだね。この先にもっと特別な場所があるんだ」


 アーニャも特に息を切らすことなく付いてくる。アラクネ族の彼女は元々こういう場所に住んでいたのかもしれない。

 更に山を登ること数十分。


「ん、なんだ? すごい違和感があるぞ。感覚全てが狂ったような」

 ソウマが身体の異変に気づいた。

 アーニャの瞳が緑色に輝く。

「意識、魔法……?」


 ポツリと呟く。

「良く知ってるね!」

 突如上空から聞こえた、楽しげに弾む幼い声。目の前でにパタパタと飛んできた、小さな陰。


「えぐぜ! ひさしぶり!」

 妖精。体長30センチ程の大きさの森の番人だ。

「意識魔法、と言ったか? それはなんだ?」

 ソウマが妖精の正体とともに使えないはずの魔法について尋ねる。

「意識魔法はねー、シンボルマジックともいって、見つかりにくい紋様とか魔法陣なんかで人の感覚を狂わせる魔法だよ」

 ティアラ、と名乗った妖精は人懐こく話しかけてくる。


「催眠術のようなものだからね。魔力がなくても効果を発揮するんだ」

「ここから先は、わたしか案内するねー」

 これだけ人の感覚を狂わせるような魔法陣がある森の中。エグゼは迷うことなく進んでいくが、ティアラの案内なしではその姿すら見失いそうだ。


「その意識魔法とやらはこんなにも効くものなのか」

 ソウマが感嘆の声をあげる。

「でもソウマはすごいよ。普通の人だと、違和感にすら気付かないからね」

 何事もないように平然と歩いていく。

 しばらく進むと、エグゼが立ち止まる。

「どうした?」

 ソウマが進もうとするが、そこには壁があるように先に行けない。

「これは?」

「ここから先は精霊の寝所。普通の人には入ることもできないんだ」

 エグゼだけはその見えない壁の向こう側にいる。

「僕はこの先に進むよ。ソウマは例の軍隊のことをお願いしたい」

「わかった」 

 エグゼとソウマ、アーニャ、ティアラは二手に分かれて行動することになった。


「いったい何をしておる!」

 大きな声で部下を叱咤している大柄の司令官。

「し、しかし私たちが何度この山を踏破しようとしても、まったく頂上に着くことができなくて……」

 部下らしき騎士が膝をつきながら報告する。

 苛立ちながら話を聞く


「ミハエル様から賜った精鋭部隊の100人が山の麓で立ち往生してるんだぞ!」

 ここに駐屯してからすでに10日にもなろうとしていた。

「何かしらの魔法がかけられているのではないかと……」

「そんなわけないであろう!! 黒のカーテンによって魔法は使えなくなっている!」

 新たに部下が入って来る。

「隊長殿! ここに向かってくる者たちがいます!!」

「ばかな! なぜここの位置がわかる!?」


「この先に奴らがいるのか?」

 ティアラの先導に従ってソウマとアーニャは歩いていく

「うん、この山を登ろうとしてるみたいなの」

 しかし、肝心のティアラにも、彼らがどうやってこの山の麓までやってきたのかわからないらしい。

 このシスカの街にたどり着くには。ツクヨミの街を通らなければならない。

 ツクヨミの街はメリクリウスが支配しているため、この地には来ることができない。

「一つだけ道があるとすれば霊峰メイルストロームを通る経路だが……」


 霊峰というだけあってその山は険しく、とても軍隊を引き連れて越えられるものではない。

「一体どうやって……?」

 ティアラが悩ましく道案内をしているが、こちらにはアーニャがいる。

 彼女の『真実を写す瞳』を持ってすれば、看破することができるかも知れない。

 しばらく進むこと数分。軍隊の駐屯地が見えてきた。

「おぉ、いるいる」

 ソウマは楽しそうに敵を見下ろしていた。

「どうするの?」

 アーニャが最もな質問をするが、事は簡単だ。

「ぶっ潰す」

 嬉しそうに手を合わせる。


 「敵襲だと!?」

 突然の出来事に慌てふためく部隊だが、そこは精鋭。すぐさま態勢を立て直す。

「して、敵はどこからやってきた?」

「それが、正面から堂々と……」

 

「おーい、敵が来たぞ~。対応しなくていいのか~?」

 ソウマが入り口から普通に入ってきて大声で叫ぶ。アーニャとティアラは見つからないところに隠れて、事の正体を見極めようとしていた。

「待て、貴様! 何しに来た!!」

 数名の騎士が駆け寄るが、ソウマは動じない。

「何って、お前らを退治しに来たんだ」

 友達に接するように気楽に手を挙げながら笑いかける。


「き、貴様!!」

 慌てて一人抜剣し、ソウマに斬りかかる。

「まぁそう慌てんなよ」

 とん、と肩を叩いただけで騎士の一人が昏倒する。

「おろ? もう終わりか?」

 だが、敵も愚かではない。その間にソウマは囲まれていた。

「そうこなくっちゃ」

 陣形を整えてソウマに相対する兵士、騎士たち。その動きは洗練され、見事という他ない。

 だが。


「遅いな」

 ソウマは兵士たちが認知できない程のスピードで数人を圧倒する。

 瞬く間に数人が戦闘不能に陥る。

「指揮官殿! 我々ではどうしようもありません!」

「オズマ!! オズマはおらぬか!」

 その声に反応して、ひときわ巨大な騎士が姿を現した。

「お呼びですか」


 耳をほじくっているソウマの前に立ち、名乗りを上げる。

「我が名はオズマ! いざ尋常に勝負!!」

 かつてのクーデターで100人を打倒したと言われる英雄の一人だ。

「はいはい。いいからさっさとかかってこい」


 人の胴体程もある巨大な戦槌を軽々と操りソウマに襲い掛かる。

「くらえ!!」

 上段からの素早い攻撃。

「期待外れか……」

 つまらなさそうに片手を振るう。常人では知覚することすらできないスピードの槌をつかみ取る。

「馬鹿な!!」

 ぱきん、と音を立てて戦槌が砕けた。

 返す左手がオズマの鎧に軽く添えられる。


 ただそれだけ。

 たったそれだけの仕草でまるで糸が切れた操り人形のように巨体が崩れ落ちる。

「お、オズマ様が……」

 指揮官も、そこにいるすべての兵士や騎士たちに恐怖が伝染する。

 こうなってしまっては連携も取れず、ただの烏合の衆に過ぎない。

 しかしソウマはそれ以上の攻撃をしようとはしない。


「いいか、お前ら。さっさとここから帰って親玉に伝えろ。ここはお前たちのいていい場所じゃないってな!」

 それだけ言うと踵を返す。

 唖然として取り残された騎士たちは、司令官の一言で忽然と姿を消す。

「い、行くぞ! お前ら!!」

 

 

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