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MagiaLostFantagia  作者: 葛葉龍玄
亡国の魔法騎士

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14/23

決着

 ミハエルの気配が消える。遠隔操作を解いたのだろう。だが、目の前の脅威が過ぎ去ったわけではない。

「さて、これは本気でかからないとな」

 未曽有の大災害へと向かいたいところだが、目の前のノームがそれを許してはくれないだろう。



「ソウマ!!」

 一度は避難したエグゼとアーニャの姿があった。傷口は塞がってはいるようだがそれはあくまでも表面上に過ぎないようだ。無理をすればまた傷が開くような最低限の治療。

「ノームは僕とアーニャに任せろ。もしソウマにあの山崩れを何とかすることができるなら、そっちを頼む」



 逡巡したソウマ。エグゼの力量では本気を出したノーム相手に一秒も持たずに殺されることだろう。

 そんな相手をエグゼと、戦闘力皆無のアーニャの二人に任せる。それこそ自殺行為だ。

 なんの策もなくただ玉砕するほど愚かなエグゼではないとわかっている。なにかノームを抑える手立てがあるのだろう。



「わかった」

 ソウマは二人を信じて山崩れを止めに行く。

「させない……」

 それを阻止しようとするノームだが、それを遮りエグゼが叫ぶ。「ソウマ、アーニャ目を閉じろ!!」

 エグゼが放った一つの魔水晶。その中に込められた魔法は。

──閃光。 



 かろうじて目を閉じるのが間に合った三人は即座に次の行動に移れたが、目をかばえなかったノームはもろにその閃光を食らい、体をよじった。

「アーニャ、頼む!」

「うんっ!」

 アーニャとともにノームの懐に飛び込む。いくら閃光を食らったと言ってもノームの隙を作れるのはほんの一瞬。

 その一瞬にアーニャはノームの歪んだ魂を見る。

 変わらずに醜く融合した魂だが、確かにノームと造魔の結合部分が見えた。この場所に寸分たたがわずに剣を入れることが出来れば。



 失敗は許されない。造魔の魂をノームの魂に残さないように。ノームの魂を傷つけないように。

『大いなる精霊王の剣』が淡く光り始める。

 ノームという精霊の魂とパスを繋ぎ、違和感の正体を探る。アーニャの言葉通りに剣を進めると、そこに違和感の正体が現れた。



 造魔の魂は激しく抵抗するが、今のエグゼにもアーニャにも反撃する余裕はない。大けがを負ったエグゼはさらに傷付きながら剣を振り下ろした。

「やったよ、エグゼっ!!」

 切り離した造魔の魂に最後の剣を振るう。

(ありがとう……)

 造魔の魂と同時に『大いなる精霊王の剣』の剣が砕け散る。

 そこでエグゼの意識は途切れた。



 木々を飲み込みさらに勢いを増して崩れていく土砂は全てを破壊しつくしていく。

 山に住む動物、植物。麓に住む人々の命。

 さらに力を使い果たしたノームが消滅すれば、ここら一帯の土地は草も生えぬ死の大地となるだろう。

 そんな自然の驚異にたった一人でソウマは立ち向かっていた。



 異変を感じたスミカの村人が山を見上げて絶望の表情を浮かべている。

 人々の絶望をその背に受けて大きく息を吸い、丹田に気を溜める体の中で練りに練った強大な力は丹田に集められ、ソウマの体中を駆け巡る。



「深淵流『鶴翼双々』!!」

 両の拳から放たれた衝撃波は絶大な威力を秘めて山崩れと対峙する。

 あまりにも巨大な力と力のぶつかり合いに、空気がビリビリと震えて弾ける。

「おおおおおおぉぉおぉぉぉおっ!!!」

 正に鶴の翼のように両腕から広く発生したソウマの気が。



 未曽有の大災害を巻き込み消滅していく。

 しばらく。地鳴りが止み土煙が晴れる頃には山はいつもの静けさを取り戻していた。

「ふぅ。こんなもんかな」

 さすがに息を切らしながら、ソウマがエグゼたちのところに戻ってくる。



「そっちもなんとかしてくれたみたいだな」

幸いエグゼはすぐに気を取り戻すと、消失しかかっていたノームを再び『精霊の寝所』に運び、スミカの村へ戻ることが出来たのだった。

 


 夜。スミカの村の酒場は昼と打って変って明るい声で賑わっていた。

「いや、さすが魔法騎士団長! まさかこの難題を見事に解決してくれるとは!!」

 昼には暴言を吐き、今にも攻撃してきそうだったドワーフたちが、エグゼと肩を組み酒を飲み交わしている。苦笑いでそれを受け止めながらエグゼも普段飲まない酒をちびちびと飲んでいた。



「俺たちは恥ずかしいよ……。あんたのことを少しも知らないであんたを責めちまって……」

 泣き上戸、笑い上戸、絡み酒。様々な人たちの中でエグゼは一歩引いたように酒場を見渡していた。

 傷の絶えない炭鉱夫たちは幸いにも素晴らしい回復薬を持っており、魔法が使えない中でもエグゼの傷が治癒するほど優れたものだった。



「いや、山が崩れた時はどうなるかと思ったが、急に収まったからびっくりしたぜ!」

「だから、あの山崩れは俺が止めたんだってーの!」

「ホラ吹くなよ!あんなん止められる人間がいてたまるか!!」

 間近で見てたアーニャですら信じられないのだ。遠い村から見上げるだけだった村人たちからすれば、災害が自然に収まったように見えただろう。



 ソウマの話は受け入れてもらえはしなかったが、それでも村のために戦ってこの事件を解決した英雄としてドワーフたちの仲間に加わっていた。 

「お、お嬢ちゃん、俺と一緒に酒でも飲まないか? おじさんの隣にお出で?」

「嫌よ!っていうか未成年にお酒を飲まそうとしないで!」

 アーニャの方は何やら変質者に絡まれていた。



「ごめんな、こいつロリコンなんだ……」

 そういって変質者はドワーフの一人にボコボコにされて連れていかれた。

 束の間の。ほんのひと時の平和。

 炭鉱夫たちはまた明日から日常に戻るだろう。

 そしてエグゼたちも良質の武具を手に入れるために大陸の最西端の町、シスカに向かう。

 夜が深けていく。

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