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神モドキと狩人  作者: 鳥津 紀伊
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蕩々誓湯剣

晴れた砂塵とウルフの死骸の中央には、1人の女性が立っていた。黒百合の柄が入った紺色の着物を着ており、本来人の腕が存在するはずの場所には大きな百足が蠢いている。


「人の仔よ、我は神殺せし神なり。 神を超越せして如何で神と呼ばれざらむや」


「三竦みの法則も知らねぇ馬鹿に神は名乗れねぇよ」


…不味いな。 非常に不味い。 神モドキの中でも知性を持つヤツぁ危険度が総じて高い。 前回の水たまりは知性無くともそれなりに強かったが、例外とする。


つまりはどんなに見た目がヒョロっちかろうが、知性がある以上は前回のヤツ程度の強さが保証されてるって訳だ


「猶々我を愚弄すや! 我、蠱毒ノ神蟲(こどくのしんちゅう)の名におきて、定めて汝を殺す!」


「ハッハァ! お前の沸点低すぎだろ! 闘いじゃ先にキレた方が負けるんだぜ!」


新武器の初舞台がクライマックスとは責任重大だな! だがこんな峠も乗り越えられなきゃ今後やってけねぇ…!


「何も性能把握してねぇが行くか!【蕩々誓湯剣(さばきのとうけん)!】」


「笑止! さる剣には我は傷つけられず!」


「試してみなけりゃ分からねぇだろうが馬鹿野郎!」


恐らく一番食らっちゃならねぇ部位が腕…あのムカデ絶対ヤベェよな。 というか腕がヤバそう以外何も分からねぇ…一体ここからどうすりゃ


「呆なけりそ」


「速ッ…!?」


腕が目の前にまで迫って…どうする、後ろ、無理、屈め!


「ぅおぉぉぉ!!! あっぶねぇ!!?」


「ほう、これを躱すや。 少しぞ楽しめならむ」


「そりゃどうも!」


ちっ! 考える暇も無ぇってか!? クソ、脳死で行くしかねぇ!!


「シッ!」


ビルタルは屈んだ体勢からバク転するように後退しつつ、流れるように袈裟斬りを神蟲へ繰り出す。 が、あまり威力が乗ってない攻撃は着物の帯を少し傷付ける程度だった。


「我を飽かせよ」


「─ッ!」


単純に速ぇ! 剣で攻撃を弾いてカウンターを仕掛けるしか対処法は無さそうだ! いや、カウンターする暇すら無ぇな!?


「オルァ!」


というか、アイツの腕が鞭みたいにしなるのも拙いな…あの速度と相まって穂先が捉えづれぇ…


「弾くばかりか?」


「うるせ…ッ!」


神蟲が繰り出す怒涛の連撃を弾き退くことで、ビルタルは防戦一方を強いられていた。 そんな様子に少々苛立ちを覚えた神蟲は、眉間にシワを寄せながら脚に力を込め…


「ならば、視野所狭し」


「ガハッ…」


上段の攻撃を防ぐことに注力し、無防備にも晒されていたビルタルの胴を蹴り抜いた。 ビルタルは空中で2,3回転しつつも何とか地面に着地する。 しかし、その姿は満身創痍1歩手前のようだった。


「後手に回るばかりには、即ち死ぬるぞ?」


「先手ばかり打っても空回りするんだぜ」


「…よく回る口かな」


アイツの言う通り後手後手だとヤベェなこりゃ…とりあえず攻めつつ考えるっきゃねぇ!


「死に晒せぇ!!」


「…くらし」


ガキィィィン……


身体を前倒しにし全力で駆け、神蟲の首へと放った剣撃は、皮膚を傷付ける事は叶わずに重々しい金属の音を響かせた。


「かっってぇ!?」


「我が肌は大百足の甲殻と同じ程こはくば、汝の攻めは何れも効かず」


ビルタルは痺れる腕を落ち着かせながらもう片方の手で神蟲の顔面を殴り吹き飛ばす。 剣が弾かれたと言えど、それなりに加速が乗っていた身体から放たれる拳は神蟲を吹き飛ばすに十二分の威力を持っていた。


「げに…されど、如何で汝は我を殺すなり?」


「死ぬまで殴りゃ死ぬだろうが!」


クソが! 初っ端から剣が効かねぇとは装備を新調した意味が無ぇじゃねぇか! だが、防ぐには十分に役立つ…この調子で行きゃ本当にいつかは殺れそうだなぁ!


「さりか。 すなはち汝は我へ近寄らせば無用ならむ」


「出来るもんならやってみろ! テメェの動きはもう対処できてんぜ!?」


「そは…」


吹き飛ばされた先で片膝を付かせつつ着地した神蟲へ向かってビルタルが駆ける。 剣で腕を弾く用意をしながら拳を握り、ビルタルの射程圏内へ入りかけたその時…


鮮血が弾けた。


「…()()()()()()


「な…ぁ…!?」


今、何が起こった…!?

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