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第9話 アークのステータス

「え? どうしたんですか?」


 フワリさんは明らかに困惑している。ひょっとして僕が壊してしまったのだろうか? だとしたら弁償かぁ……。それは少し困る。


「いえ〜、ちょっとこの数値はおかしいので〜、焦ってしまいました〜。ちょっと、故障かもしれません~。なにせ久しぶりに使ったものですから~」


 フワリさんは僕にギルドカードを見せる。そこには、


【アーク】

【体力】SSS

【筋力】SSS

【俊敏】SS

【魔力】SSS

【神聖】S


 と記載されてあった。


 ひょっとして前に飲んだ【ドーピング(SSS)】の効果が残っているのだろうか。そのせいかもしれない。フワリさんに正直に言おう。


「フワリさん。ごめんなさい。実は一週間くらい前に【ドーピング】を飲んでしまって……その効果が残っているのかもしれません。だから日を改めてもいいですか?」


 僕が頭を下げる。効果がいつ消えるか分からない。ひょっとしたら効果はずっと残っているかもしれない。お金を受け取れないのは残念だけど……それは仕方ない。


フワリさんは申し訳ない顔をして、


「アーク様〜。ご気分を悪くさせてしまったら申し訳ありませんが〜。【ドーピング】の効果は最上級に良いものでも最高で『一時間』しかありません〜。それに〜」


 え? 【ドーピング】の効果って最高で一時間しかないのか? じゃあ未だに効果が続いている【ドーピング(SSS)】は未知数なのだろう。しかも僕は一つしか飲んでいない。


「この水晶は【ドーピング】の付与ステータスは【ディスペル】で消えるようになっています〜。【ドーピング】やバフを使ってステータスを持ってから測定しようとする人が〜、昔は多かったんですよ〜。」


 しかし、僕の予想はフワリさんの言葉で良い意味で裏切られた。


「そんなことをする人がいるんですか?」


「はい。その方が見栄えがいいですから〜。おかげでドーピング対策としてバフを無効化する【ディスペル】が自動でかかるようになったんですよね〜。副作用もありますし、ステータスを偽っても周りが危ないだけですから~」


「そんな……ということは」


「もしも本当にドーピングを使っていると仰っているなら『永続的』にステータスが付与されてないとおかしいです〜。永続的ではなく一時的ディスペルでも消えませんから~、まぁ〜、そんなものあるわけがたりませんが〜」


 フワリさんは冗談混じりに言う。


「ということで申し訳ありませんが~新しい水晶を持ってきますので~、もう一度測定の方をお願いします〜」


「は、はい……」


 苦笑いをしたまま説明を終える。フワリさんは新しい水晶を取りにいった。


*************


「変わりませんね〜」


 フワリさんはそう言って、ギルドカードを僕に渡す。


【アーク】

【体力】SSS

【筋力】SSS

【俊敏】SS

【魔力】SSS

【神聖】S


 僕はステータスの測定をするために再度、水晶に手をかざしたが、結果としても何も変わらない。


「あ、ありがとうございます」


「正直〜SSSは見た事がないので驚きです〜」


 フワリさんは【魔力】が Sのラティを一万人に一人の逸材と言った。ではSS以上はどれくらいなのだろうか。


「SSはいるんですか?」


「この国最高の魔法使いの〜、賢者様の魔力が SSですね〜」


「え、えぇ……!?」


 つまり僕の魔力量はこの国最高の魔法使い以上ということになる。


 てっきり【ドーピング(SSS)】を飲んだ時、身体能力だけが上がるものと思っていたけれど、まさか【魔力】や【神聖】などのドーピングと関係なさそうなものまで上がっていると思わなかった。


 これで武器を持ったらもっと強くなるのだ。しかもドーピングは一個しか飲んでいない。まだ強くなれる。


 改めて数値として他人と比較するとこのレアリティ変更士はとんでもないジョブだと実感した。


「ひとまず、登録は終わりましたのでギルドカードに賞金を振り込んで置きました〜。ただ今は現金がないので直接欲しい場合はお申し付けください〜」


 大量のお金を持ち帰らなくて済むのはすごく便利だ。落としてしまったら大変だから。


「一応、商人ギルドであればカードでの決済も使えます〜。個人間でのお金のやり取りはトラブルだらけなので使えません〜」


「それはなんか予想着くかもしれないです」


「あとギルドカードは身分証なので失くさないように気をつけてくださいね〜」


 フワリさんは僕にギルドカードを渡す。


 裏面には10ゴールドと書いてあった。ライザの首にかかっていた賞金はお母様が残して下さった倍以上の金額だ。嬉しいのだけれど少し複雑な心境になった。


なったのだけれど、


「あ、あの。一ついいですか?」


「はい〜? どうされました〜?」


 僕はフワリさんの目を真っ直ぐに見る。


「この賞金は街の復興に使いたいですけど、大丈夫ですか?」


「アーク君!?」


 ラティは驚いた顔をしていた。


 そこまで驚くことだろうか。このお金で少しでもジャポリの人達が幸せになるのならば、きっと僕達だってここで過ごしやすくなるはずだ。


「えっと〜……ご用意することは可能ですが、賞金だけで復興させるのは難しいです〜。ですので、本当に必要になった時まではアーク様ご自身でお持ち頂いた方が良いかと思います〜」


「そうですか……それではそうします」


「正直〜、お気持ちは嬉しいです〜。その優しさを大事にしてください〜」


「いえ、ありがとうございます」


 僕はフワリさんに頭を下げる。フワリさんは僕のことを思ってアドバイスをしてくれているのだ。その言葉は大事にしないと。


「いえいえ〜。こちらこそです〜。また何かありましたらいつでも来てください〜」


「是非! その時はよろしくお願いします!」


 僕は再び頭を下げた。先程よりも深く下げて。


 その後、僕とラティはギルドを出た。


「お疲れ様でございました」


 ギルドを出ると目の前に馬車があり、その手前にエドワードさんがいた。きっと待ってくれていたのだろう。


「エドワードさん……いつから待ってくれていたんですか?」


「いえ、カード作成の時間を逆算して今しがたお迎えにあがりました。一応、これでも元冒険者でしたので、ある程度の時間は読めるのですよ」


 そういえば、騎士団長のエリザさんと同じくらいの実力と言っていたはずだ。おそらく腕利きの冒険者だったのだろう。


 エドワードさんは目の前の馬車の扉を開ける。


「それでは早速ではありますが、屋敷に向かいましょう」


 僕達は主人のいない屋敷に向かうのであった。


*************


「お待たせ致しました。こちらがジャポリ領主の館になります」


 屋敷は思ったより以上に綺麗だった。ただ、前領主の趣味なのか建物が全体的に白をベースに金色で装飾されている。今まで見てきた街の風景と比べてしまったせいか、素直に良いとは思えなかった。


 僕とラティは部屋に案内される。


 椅子に腰掛けるとドアがノックされた。


「入りなさい」


「し、失礼します……! ご、ご主人様……!?」


 エドワードさんが入室を促すと、そこには銀のウルフヘアーの少女――ユリナがメイド服姿で立っていた。


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