第45話 馬車でのやり取り(SIDEカンユウ)
「まさかあの晩餐会が決起集会だったとは……」
王国との戦争に向かうための馬車の中、私はザマール公爵と同じ馬車に乗っていた。
「ふむ、カンユウ殿は伺っていなかったのですかな?」
「そうですね……ザマール公爵様と違って私は何も聞かされておりませぬ。正直、あの晩餐会の意味を知ったところで、私の示す道は変わらないですが」
あのリュミエールというメスガキを聖女の地位から引きずり下ろすことができればなんでもいい。
「まぁ、それもそうだな」
簡易的に木材で作られた馬車は、硬い木の板から伝わる振動が直接的に私のお尻に試練を与える。だが耐えられないほどではない。
そういえば、以前の話。ネクソンとかいう男の馬車に乗ったが、このクソみたいな木の板の馬車とは乗り心地は段違いだ。
おそらく馬乗りの技術が高いのだろう。王国を打倒し、法王になった暁にはあのネクソンという男だけは専属の馬乗りにしてやろう。私の専属馬乗りだ。喜ばないはずがない。
「あぁ……紹介をしてなかったな。我が愛しのせがれ……ガイアだ」
「ご子息様でございますか。私は聖職者――いや、未来の法王となる予定のカンユウと申します。今は簡単な挨拶になりまして申し訳ございません」
「ヒヒっ……父上の知り合いとあれば、挨拶は受けよう。今後とも宜しく頼む……まぁ、所詮、愚弟のアークの土地なんざ、この剣聖の俺が秒で沈めてやるからよぉ、おっさんは大人しくみてな」
「おぉ! 頼もしいぞ! ガイア!」
ずいぶんと失礼なガキだが、仮にもザマール公爵家を象徴する剣聖のジョブなのだ。
「あの時は不覚を取ってスライム如きに屋敷を壊滅させられたが、人間相手……しかも無能のアークであればすぐに戦果を届けることができるだろう! ザマール家に恥辱を与えた王国など潰すのが正解なのだ」
剣術系のジョブの中では最強クラスのはずなのだが……スライムに屋敷を壊滅させられるとは一体、どういう状況なのだろう。
「お父様の言うとおり、あの無能のアークを殺すことは容易――それに、あのラティ王女もいるらしいじゃないですか……折角なんで第四王女であるラティを俺のペットにしてやりましょうかね。ヒヒッ!」
「…………」
あまりにも下種すぎて言葉が出ない。しかし私はこいつらと一緒に行動している以上、同格の扱いをされているのだ。私の中の神に申し訳がないという気持ちが強まる。
「まぁ、なんにせよ。楽しみじゃないか……私に楯突いたジャポリの街が跡形も無く消えて行くのは。カンユウ殿もそう思うだろ?」
「それは……とてもそう思います」
あのリュミエールはまだジャポリに滞在している。
何故断言できるのかというと、私はクロイド帝国に協力する条件に聖女の動向を追うという契約を結んだからだ。
だからジャポリの街を潰すことは、結果としてリュミエールを潰すことと同義なのだ。
早く生意気にも堂々とした顔を絶望一色に染めった顔にしてやりたい。
「そう思うだろ?? まぁ、我らザマールの力を持ってすれば、あんな辺境の土地、一瞬で灰燼に帰してやるわ」
「さすが剣聖。期待しております」
私は未だにこいつらに媚びを売らなければならない。だがそれももう少しの辛抱だ。
私は紅魔晶がはめ込まれたブレスレットをゆっくりと眺める。
ブレスレットを眺めていると全てが上手っていると感じた。私の中の神もお喜びになっている。
あとは私に恥をかかせたジャポリと聖女を潰すだけ。全てが順調だ。




