第3話 レアリティって?
「僕の力が、剣聖よりもずっと強い……?」
「これは本来、王族にしか伝わらない秘密だから他言無用ね。アーク君だから言うけど」
ラティは立ち上がり、ゆっくりと話し始める。
「私達王族の一部のジョブには『慧眼』というスキルが使えるの」
「『慧眼』?」
「『慧眼』というのは、本質を見抜くことができるの。それが人であろうが、モノであろうが。レアリティはその中の一つの本質。簡単に言うと、この世界にとってどれだけすごいものか簡単に理解できるの」
ラティは話しを続ける。
どうもレアリティは、大まかに六つに分類されるらしい。
『N……どこにでも落ちてる』
『UN……少し高価なアイテム』
『R……希少なアイテム』
『S……家宝クラス』
『SS……国宝クラス』
『SSS……神話クラス』
僕が追放されたザマール家の【アダマンタイトソード】はSランクらしい。
『おめでとうございます。モンスター初撃破により能力が解放されます』
頭の中に青いウインドウが浮かんだ。
能力というのは一体なんなのだろうと思っている。さらに青いウインドウが続けて表示される。
【ただの木の枝(SSS)】
と記載されていた。ラティの言っている事は嘘ではないようだった。
つまりこの世界にはレアリティというのがあって、この【レアリティ変更士】の力は、そのレアリティを変更できるものらしい。だとしたら……すごいジョブなんじゃ……?
「アーク君のジョブ。とんでもないジョブだよ……それこそ世界がひっくり返るような……」
「そうなんだ。このジョブの力で僕はラティを守れたんだね。良かった。本当に良かった」
世界がひっくり返るかどうかは実感が湧かないけれど、僕の眼の前にいる大事な人を護れるのであれば、僕にとっては十分だ。
「そういう優しいところが、私は好きなんだけどね。優しくて馬鹿みたいにお人好し。でも私はスキルで見た本質を信用して一緒に居たの……卑怯な私でごめんね」
ラティは本当に申し訳なさそうな顔をした。だけど隠しごとをしていても、少なくとも一つはっきりしたことがある。
「スキルで僕のことを見て信頼していたとしても、僕の事をいつも気にかけてくれるし、仲良くしてくれていたじゃないか。ラティの方が十分に優しいよ」
「私は優しくない……ないけど、そう言って貰えるとなんだか照れるね」
ラティは目に涙を浮かべて、嬉しそうに笑った。僕はその笑顔を見て、助けられて良かったと心の底から思ったのだが……僕は純粋な疑問が浮かんだ。
「そういえば、どうしてラティはこんなところにいるの?」
「それはアーク君が心配で……この調子だと【剣聖】じゃないから追い出されたんだよね?」
「そうだけど。どうして知ってるの?」
「アーク君の兄……ガイアがベラベラと話をしてたからよ。剣聖だろうがなかうろが、アークを追い出すつもりだって、笑いながら言ってた」
ラティの瞳は怒りで震えているようだった。僕は幼馴染みで長い付き合いだけれど、こんなに怒っているラティは初めて見る。
「私、あの人嫌い。【慧眼】で見なくても分かる。本当に気持ち悪い。下心が見え見えなの。アーク君の兄じゃなかったら話もしたくもないんだから」
「お兄様はそんなことを……!?」
「だから心配で急いで来たの。結果としてアーク君に助けられちゃったけど。ありがとう。すごくかっこよかったよ」
「本当に無事で良かった……」
僕は不覚にも照れてしまった。剣聖ではなかったけど、僕はこの【レアリティ変更士】で良かったと思った。未だにこのジョブがよく分からないけれど。ただの木の枝であの威力。これでもし、普通の武器などのレアリティを変更できるのだとしたら……。
僕は自分が授かったジョブの可能性に胸の高鳴りを感じて、手を握りしめる。
そのことに気づかせてくれたラティに感謝しかない。
「アーク君はこれからどうするの?」
「いや、極東の地に行くために街に行こうと思って」
「それなら私もついていくね」
「本当に?」
「うん。何かあってもアーク君が守ってくれるし」
ラティは僕に気を遣わせないために言ってくれているのだろう。やっぱりラティは優しいと思う。
**************
僕とラティは近くの街に辿り着いた。
この街しか極東に向かう馬車は出ていない。そもそも極東の地になんて向かう人自体が少ないのだ。
とはいえ身支度をするには丁度良い。公爵家を追放されて準備できるものは少なかったから。ここで装備や身の回りのアイテムを揃えよう。
「はい。毎度あり」
僕は道具屋で5シルバーを使って【刃こぼれした剣】1個と【低級ドーピング】を5個買った。
もしも【レアリティ変更士】でこのアイテムのレアリティを変更したらどうなるのだろう。そんな期待を込めて購入してみた。
これで残されたお金は4ゴールドと5シルバー。
お母様が残してくれたお金はなるべく使いたくないのが本音。馬車の金額も考えなきゃいけない。でもちゃんと用意しないで旅に出るよりマシだろう。
ラティは先に服屋で服を買ってから馬車を取ってくれるという。身分の問題とか気になったけど『一応、お忍びの格好だし、身分は明かさないから大丈夫』だと言った。
極東の地には一緒に行けないだろうけど、最後まで良くしてくれて僕は嬉しい。
僕は道具屋で購入した【低級ドーピング】のレアリティを変更してみた。
【低級ドーピング(N)】→【低級ドーピング(SSS)】
【低級ドーピング】は本来効果時間が30秒しかなく、能力の上昇値が微妙で使用する人は滅多にいないのだが……レアリティを変更した後の【低級ドーピング(SSS)】はどうなんだろう。
僕は試しに【低級ドーピング(SSS)】を飲んでみた。
「あ、なんか身体が軽くなった気がする」
でも何が変わったか分からない。どれくらいの効果時間なのだろうか? きっとSSSレアだとすごいのだろう。すこし楽しみになっている自分がいる。
「これはどうなんだろう?」
僕は【刃こぼれした剣(N)】のレアリティを変更した。
【刃こぼれした剣(N)】→【刃こぼれした剣(SSS)】
【刃こぼれした剣】のレアリティを変更しても【刃こぼれした剣】のままだった。そこは別に刃こぼれが直るとか、そういうものではないらしい。見た目も一切変わらない。
僕は布で剣を覆うと、馬車を取ってくれているラティの元に向かうことにした。
道具屋から馬車までは歩いて五分くらいの距離である。アイテムのレアリティを変更してみたとはいえ、ラティを待たせているかもしれないので少し急ごう。
僕は早足で馬車乗り場に繋がる角を曲がると、
『あなた達!! 恥を知りなさい!!』
ラティの怒号が聞こえた。




