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第27話 悲しき再会

「私は闇商人のキーチク。お前が殺したライザの兄だ。この時を待ち侘びたぞ!」


 キーチクは僕を見て笑う。つまるところ復讐に来たのだろう。


「アーク君はライザを捕まえただけだけど? ライザが死刑になったのは自業自得じゃん。それでアーク君を恨むのはおかしくない?」


 ラティがキーチクの言葉に反論する。ラティの言う通りだと思う。仮にライザが死刑になったのは僕のせいだとしても、そもそもライザが罪を重ねなければ死刑になんてならなかった。だからライザが死刑になったのは自業自得なのだ。


「黙れ小娘。我が弟ライザが死んだのはそこのアークが捕まえなければ死刑にはならなかった。つまりアークがライザを殺したということだ。だから俺はアークを殺す。復讐のためになぁ!」


「それじゃあライザに苦しめられたジャポリの人達に気持ちはどうすんの!?」


「知るか、そんなもん」


「なにそれ……めちゃくちゃだよ」


でも復讐をやろうとしつつ僕だけを狙わないということは明確にジャポリの民を狙っているということだ。


 ラティが言うようにライザはこの街の住民を苦しめた。どうしてこの兄弟は無垢なジャポリの民を攻撃しようとするのだろう。僕には理解ができない。


「この日のために公爵家と手を組み準備をしていて良かった。これで心置きなくお前達を殺せる……目撃者を全員殺せば誰が犯人か分からないからなぁ!」


 公爵家……つまり僕を追放した元実家が1枚噛んでいるらしい。言っていることは間違いないだろう。


 ここまできたら、僕の敵だ。


 僕の守りたいモノに危害を加えるなら僕だって許せない。


「そこまでアーク君にする!? いくらでもひどすぎるわ!」


 ラティはキーチクを睨みつける。明らかに怒っていた。


 そうだ。今の僕は1人じゃない。あの人達が僕を捨てたとしても、今の僕には仲間がいる。それだけでとても心強い。


 僕は後ろをチラッと見ると、僕の背後でラティと僕の仲間達はキーチクに憤りを感じて、武器を構えていた。


……1人を除いて。


「ハルカお姉ちゃん……?」


「うそ……ユリナなの……?」


 ユリナがお姉ちゃんと呼んだ長い銀髪の少女は驚いたように大きく目を見開いて驚いた表情をした。小さくもはっきりとユリナの名前を呼んだ後、長い銀髪の少女はスッと目を逸らす。


 たった1秒程度の出来事だったが、それだけで2人はとても大事な間柄だと理解できた。


「もしかして、ユリナのお姉さんなの?」


「は、はい。私のお姉ちゃんです。間違いないです。唯一肉親で私のことをずっと心配してくれたハルカお姉ちゃんです」


 ユリナは困惑と驚きが混じり合ったような声をしていた。


「おっとお前がユリナとかいう小娘か。感動の再会だぁ……! だけどもうお別れだ……そう! その顔!! その絶望した顔が見たかった!! 素晴らしい! 素晴らしいぃぃい!! これでお前も立派な素材になるなぁ!」


 キーチクはひとしきりに笑った後、スッと真顔になり冷たい声で言い放つ。素材とは何の事を言っているのだろう。

 

「あー。それと|コレ≪・・≫はハルカとかいう名前じゃない。3号だ。人の名前は間違えてはいけないと習わなかったか?? 次から気をつけ給えよ。まぁ、次があるといいけどなぁ!!ヒヒッ!」


「キーチク!! 貴様!!」


 僕はこいつが許せない。頭に血も熱が昇って、全身に駆け巡る。全身が怒りで熱い。


「仲良しごっこはあの世でやってな!! こいつでお前の全てを終わらせてやるからなぁ! ヒーヒッヒッヒ!!」


 キーチクはポケットから赤い石を取り出した。あれは紅魔晶……?


「では用意した一万体の魔物をお前らの街に押し寄せらせて壊滅させてやる!! さぁ!いけ!」


 闇商人のキーチクは赤い紅魔晶を天に掲げた。勝ち誇ったように魔物を呼び寄せようとする。紅魔晶は赤く怪しく光る。辺りを血で染めたような赤色に染める。


 しかしキーチクが思い描いてたことは起こらない。空を飛び回る小鳥の鳴き声だけが虚しく響いた。


「あ、あれ……? さぁ! 魔物達よ! 従え!!……なぜだ。なぜ魔物は来ないのだ??」


 キーチクは何度も何度も叫びながら、魔物を呼ぼうと紅魔晶を光らせる。


「くそっ! どうして魔物が来ない! たしかに紅魔晶を使っているのに!」


「馬鹿ね!! 私とアーク君の|愛≪共同作業≫から生まれたディスペルで紅魔晶を無効化してるんだよ!」


 ラティは僕の腕を抱く。なるべく近くにいるならば守りやすい。


「ば、馬鹿な!! そんなことはありえない!! 聖女だってそんな力はない!!」


 キーチクは愕然としていた。ありえないと思えることを実現してしまうのがレアリティ変更士のすごいところなのだ。


「もう諦めて投降したらどうです??」


 僕はキーチクに提案するが、キーチクは下を見て落ち着きなくブツブツと呟いている。今のところ街に被害はない。できることなら、最小限でこのまま終わって欲しい。


「だったら仕方ない。奥の手を使うしかない……ぐわぁぁああ!」


 キーチクは紅魔晶を自身の右手をナイフで斬り、血を滴らせる。その右手で紅魔晶を握りしめた。紅魔晶は血で濡れたまま、地面に叩きつけた。


「なにを!?」


「魔界に住まう悪魔よ! 我と契約を結びて、願いを叶えよぉぉおおお!!」


 地面に叩きつけられた紅魔晶は砕けた。砕けた紅魔晶を中心に魔法陣が描かれると、地面から這いずるように悪魔が現れる。


「我はバフォメット。伯爵の位を持つ悪魔貴族の一人である」


 それはあまりにも不吉な存在。


「矮小な人間よ。我を呼び、何を願う」


 バフォメットが口を開くと空気が震えているような気がした。


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