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第19話 温泉の効能

「ただの温泉じゃない?? どういうことだ!?」


 王様は目を輝かせている。僕の言葉に興味津々といった様子だ。今のところ、我ながら上出来だ。問題はここから先だ。しっかりやらないと。


「はい。中央に大きめの石がありますよね? その中央に僕のジョブの能力で加工した魔法石が埋め込まれています」


 僕は大きく息を吸って、


「効力は聖水に匹敵していると思います」


「聖水に匹敵だと!? まさか!?」


 王様は驚きつつも温泉に入る。


【上質な魔法石(SSS)】


『特殊能力:液体であれば触れた時の効果を聖水並みにすることができる』


 これが作成できた時、僕は大きく喜んだ。聖水として売ることもできるだろうが、あくまで聖水ではないから、別の形で売り出さなければいけない。それに持っていかれては街が儲からない。それならば、生産数を少なくして付加価値を高めた方がよほど良い。だから僕は温泉化ということにした。


 理想論だけどジャポリも街に人が泊まり、物を買う。そのお金を循環できれば、ジャポリの街の経済は活性化できる。これが僕の狙いなのだ。


「とはいえ、このあらゆる液体が温泉化するものは一つしか作れませんでしたが……」


 と、いいつつも最近はある程度は狙って望み通りの効果を付与できるようになってきた。まだまだ鍛錬が足りないのも事実だけれど、そのうち完璧に扱えるようになるだろう。とはいえ、全てが神話級……SSSレアにアイテムを変更できるのだ。近い能力でも使い道しかない。


「い、癒される!? 古傷が癒される……!」


王様の腕や腰にある古傷が薄くなっているように見える。筋肉に温泉が浸透している証拠だ。これならば数日もすれば完治も難しくないだろう。


「か、神の水だ……」


 王様は驚きを隠せないようだ。それもそうだ。聖水は聖女のジョブを授かりし者が7日間の祈りを神に捧げた時に生成される副産物である。あくまで副産物だ。聖水を生成するために祈りを捧げても生成はされない。だから聖水とはかなり貴重のアイテムなのだ。


「アー坊……お前の授かったジョブ……【レアリティ変更士】だったか?? 本当に恐ろしいな……! どうだ?? いっそジャポリの領主は誰かに任せて、俺の側近にならないか??」


「ごめんなさい。嬉しいですけど、僕はジャポリの人達が大好きなんです。だから少なくとも今は行けません」


「さすがにダメだったか。ならば今後はアー坊としてではなく、ジャポリの領主として気兼ねなく王宮に来い。もちろん困ったことがあったら手助けしてやるよ」


「ありがとうございます」


「アー坊。本当に立派になりやがったな」


 王様の提案は少なからず政治的な配慮もあるかもしれない。


しかしそれ以上に父親に似た優しさを感じた。


 僕の本当の父……ザマール家当主は【剣聖】のジョブではない僕を見捨てた。実家から追放したのは、僕を実子ではなく【剣聖】やラティとの婚約関係になるかもしれない期待として、利用価値があるから実家に置いておいたのだ。


 正直に言えば腹が立つ。だって僕は最初からザマール家の子供ではなく道具として見ていたのだから。


 でもこれからは気にしない。今後は僕の味方でいてくれる人達に恩返しができるように生きていきたい。いつか皆の幸せがきっと僕にとっての幸せにもなるだろうから。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ドネイク様ちゃくちゃくと準備が整っております。ヒヒッ」


 ザマール家の屋敷内。主人の間でドネイクと闇商人――キーチクは密談をしている。キーチクは突然訪問したにも関わらずドネイクは人払いを済ませていた。

 

 普段のドネイクならば、無礼の一言で切り捨てるところなのだが……。


「おお!! 仕事が早いではないか!! それで?? 今はどんな感じなのかね??」


 そのせいか静寂の中、ドネイクと商人のゲスな含み笑いを含んだ声がいやに強調されていた。


「そうですね。今はネズミを飼っていることだけお伝えしておきます。あとは準備でき次第、詳細をお知らせ致します。どこにドブを被ったネズミが潜んでいるか分かりませんからね。ヒヒッ」


「おぉ〜!! 用心深いではないか!! だが待つのもまた一興!! いいだろう!! その時を楽しみにしているぞ!! なにか必要なものがあったら私が支援しよう!」


「ヒヒッ。ありがとうございます」


 ドネイクは大物であるかのように振る舞う。ドネイクは内心では嘲笑に近い笑みを浮かべている。完全に自分が優位に立っていると思いこんでいるのが、キーチクも内心ではほくそ微笑んでいることには気づいてない。


利用しあっている仲ではありながら、お互いがカモと思っている滑稽な絵面が広がっていた。


『商人とはいえ、相も変わらず全く平民とは愚かな存在だな。まぁ、せめて慈悲でもくれてやるか』


 ドネイクは立ち上がりワインの栓を抜く。自身のグラスにワインを注いだ後、キーチクに問いかける。


「そうだ。これから一杯どうかね??」


「光栄ではありますが、申し訳ございません。これからも準備で忙しい身でありまして、またの機会でお願いします。ヒヒッ」


「そ、そうか? まぁ? 残念ではあるが同時にまったく頼もしいな!! はーはっはっは!!」


「とんでもございません。それではわたくし目はこれにて。ヒヒッ」


 キーチクはそういって、主人の間から立ち去った。


「まさか我の酒を断るとはな。まぁいいわ。これであの目障りなアークが死ねばなんでもいい。まぁ、なにかあればあの商人にすればいいだろう」


 ドネイクのクツクツと声を殺したようなゲスな笑い声が屋敷に響くのであった。


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