第16話 アークの決意・屈辱のドネイク(SIDEドネイク)
僕の元お父様……ドネイクは僕を見て舌打ちをした。小声で僕にしか聞こえない音量で「まだ生きていたか」と言った。王様の御前にも関わらず。
ドネイクはわざと周りに聞こえるように続ける。
「どうしてお前みたいな卑しいものが、ここにいるんだ? ここにいて良いはずがないだろう?」
「いえ、僕は王様に呼ばれてきたのですが?」
「嘘を吐くとは!! 貴様!!本当に恥知らずだな!! お前の母の血のせいなのか!?私まで辱められた気分だわ!! ……しかし、魔法石のことは褒めてやろう。後で採掘した魔法石をザマール家に送る手続きをしろ」
僕がザマール家を追放された日のように、ドネイクは僕のお母様のことを侮辱する。恥知らずはどっちなんだ。
でも今は我慢をしなければならない。唇が切れ口の中に鉄っぽい味が広がった。
「そこまで。ここをどこと心得る」
「も、申し訳ございません」
王様がピシャリと言うとドネイクの態度は小さくなった。
「ドネイク。お前に任せてたジャポリの土地、没収してアー坊に渡すから。あとアー坊に貴族の爵位を与えたから。ザマール家から正式に独立するからな」
「はぁ!? こいつが爵位!? 何かの間違いでは!?」
「……続けてみろ」
「剣聖と同格の職業ではないと無理ではありませんか!? いや、それともラティ第四王女に媚びたのではないのですか!? そうでなければありえません! 本当に貴様は卑しい人間だな!」
熱くなるドネイクとは対照的に王様は言葉を発する。ドネイクは気づいていないかもしれないが、この場にいるドネイク以外の人間は、王様の逆鱗に触れたのではないかとヒヤヒヤしていた。
「今のは聞かなかったことにしてやる」
王様は溜息を吐いて、呆れたような視線をドネイクに送る。
「ドネイク……貴様には罰を与える」
「罰ですとっ!? どうしてですか!?」
ドネイクは信じられないといった形相をする。そのまま大きな声で王様に尋ねる。
「どうしてだと?? ジャポリの民の窮状に何もせず、さらに重税を課して圧政まで敷いてたらしいな?? 確証はなかったが、今回ラティからの調査報告と執事からの密告で証拠があんだよ」
「そ、それは……」
「だから土地を取り上げる。あと、ザマール家に年々渡している俸禄の金額も十年間下げるから。以上。そういうこと。もう帰っていいぞ」
「なっ!? いくらなんでもそれはあんまりでは!?」
「うるさい。処刑しないだけ有難いと思え。お前の先代が剣聖としての責務を真っ当してなかったら殺していたからな。次はないぞ」
王様は冷たく言い放つと、ドネイクは拳を強く握りしめて、悔しそうな声を捻り出す。
「くっ……ありがとうございます……。それでは失礼致します」
「あぁ、その前に言っておこう。お前が管理を怠ったことにより街に被害を与えていた盗賊のライザという男だが、そこのアークが捕えた……捕えたついでに王都内で即刻死刑にしといたぞ。なーに、感謝はいらない……我はお前が同じ末路を辿らないように祈っているぞ?」
「……っ! つ、つまりを忠臣である私を殺すと言っているのですか!?」
「さぁな? だが殺すことに躊躇はないぞ?」
「……肝に銘じておきます」
元お父様は苦虫を嚙み潰したような表情をする。逃げるように元お父様は王の間を出て行った。
「よし! ということで正式にアー坊はジャポリの領主となったな! 期待してるからな!」
そうして僕は正式にジャポリの領主となった。
ここから先、僕は領主としてジャポリの人達の幸せのために頑張らないといけない。笑顔で過ごす民の姿を見せられ続けるようになれば、きっと天国のお母様も安心してくれるはずだ。
僕は決意を胸にジャポリに帰るのであった。
******
ザマール家主人の間。
「くそっ! どうしてこの私がこんな屈辱を味わなければならんのだ!!」
ザマール家の屋敷に戻った私は苛立ちに任せてワインボトルを投げつける。ボトルがパリンと割れて葡萄酒の匂いすら腹が立って仕方ない。
全ては剣聖のジョブにもなれなかった愚息のせいだ。黙って死ぬことはおろか、育ててやった恩を返さずに仇で返すとは。やはりあの時に殺してやるのが正解だった。
「それにしてもどうして王はアーク……あのゴミを認めているのか……? 外れジョブではなかったのか? いや、剣聖では無い時点で外れジョブなのだ。きっと汚い手を使ったのだろう! どこまでも下劣な!」
「ほほっ! ドネイク様は随分ご立腹のようですな」
私の横にやたらと髭を生やした太った商人がいる。蝋燭に照らされた茶色の髭が特徴的だから覚えている。
たしかここ最近になって取引を始めた商人だったはず。金になることならなんでもやるだとか。人身売買などロクでもない商売をしているらしいが、別にこちらの懐に金が入ってくるのであれば私は気にしていない。だが今は話が別だ。
「なんだ貴様……今は機嫌が悪い」
「そう言わないで下さいな。実は妙案がありまして……」
「妙案……?」
「あの剣聖にすらなれなかったジャポリの新領主、いや落ちこぼれが鬱陶しいのですよね?」
「ずいぶん耳が早いな」
「生きた情報ほど価値はありませんので。私も我が弟……ライザを殺されて復讐をさせて頂きたいのですよ!」
なるほど。こやつは弟を殺されたのか……いや、先ほど王宮の間で王が死刑にした盗賊がいたと言っていたな。
「死刑にされた盗賊がいたが……そやつはお前の弟か?」
「……その通りでございます」
「いいだろう。申してみろ」
私に取り入れるためではなく復讐とあらば、その妙案とやらも少しは期待できるだろう。そちらの方がよほど信用できるというもの。
「それででして……妙案と言うのは……」
髭を生やした太った商人は私の耳元で妙案とりを伝える。なんと……!
「はははははっ! それは良い! それでは早速やって頂こう!! 成功にした暁には我がザマール家が今後の商売の後立てになってやろう!!」
「ほほっ! ありがあき幸せ……! あのアークに必ずや絶望を与えましょうぞ!!」
「待っていろ!! この私をコケにした報いだ!! ゴミにはゴミに相応しい末路を辿るがいいわ!!」
アークだけではない。ジャポリの街に関わる全ての人間に絶望と後悔を植え付けてやる。
そうでなければ私の気が済まない。
「そういえば、貴様の名は?」
「私ですか? 私はライザの兄――闇商人のキーチクと申します。以後、お見知りおきを」
あのゴミ……アークが泣いて絶望する姿が目に浮かぶわ!! 生まれてきたことを後悔させてやる!
しかし、この時はまだザーマル公爵家が衰退の一途を辿るとは夢にも思わなかった。
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