第12話 ラティの決意とスカーレットの覚悟
「魔法石って……あの滅多に取れない魔法石ですか?」
「その魔法石です」
魔法石とは魔法の杖などやアイテムの錬成など様々な用途があるとても貴重な石だ。非常に高値で取引をされている。その魔法石が広い空間の壁全面を覆っている。
『KSYAAAA!』
クイーンビックアントは僕達を威嚇している。普通のビックアントと比べて10倍ほどの大きさ……体長は10メートルを余裕で超えていた。
そして青、黄、緑色の3匹のウォーリアアントがクイーンを囲むようにいる。
スカーレットさんは苦い顔をして、
「魔法石は惜しいですが……この空間は爆破してクイーンビックアントを埋めましょう……」
「ちょっと待ってください。魔法石を売れば街は経済的に余裕がでるんですよね?」
「将来的には余裕は生まれるのは間違いないですが……クイーンビックアントを倒すのが優先です。街の民の命がかかっていますから……」
「でも……」
僕は諦めたくなかった。今の僕には街の危機と将来を救えるレアリティ変更士がついているのだから。
「ねぇ、あそこにいるの……人?」
ラティはクイーンビックアントがいるところとは別の場所に指をさす。
「あれは!?」
クイーンビックアントと3匹のウォーリアアントの取り巻きがいる空間に4人の女性が横たわっていた。遠目から見ても彼女達はそれなりに良い武器や防具を付けている。きっと腕利きの冒険者なのだろう。
「くそっ! これじゃあ爆破なんてできないじゃないか!!」
スカーレットさんは魔法銃を即座に展開させて飛び出していった。
「はああああっ!」
スカーレットさんは赤色のウォーリアアントに弾幕を張る。
「こっちだ!」
『GSYAAAAAA!』
スカーレットさんは移動しながら赤色のウォーリアアントのヘイトを溜めていく。3匹まとめて相手するのは危険と判断して、各個撃破に狙いを定めたのだろう。
3メートルの距離から弾を撃つが、キンキンキンと弾かれた音がする。
「クソッ!!硬いな!! ……ならこれなら」
スカーレットさんは魔法銃の下についている筒のレバーを引く。すると小規模の爆発が起きた。
「魔力グレネードなんて使いたくなかったんだけど」
そう言いつつ、魔法銃の弾丸をリロードする。
赤色のウォーリアアントの甲殻が一部剥がれていたが、スカーレットさんは魔法銃のトリガーを撃ち込む。
それに関係なく赤色のウォーリアアントがスカーレットさんに突進するが、
「アイススピア!!」
ラティが水属性中級魔法のアイススピアで赤色のウォーリアアントのヘイトを貯める。
「スカーレットさん。私も一緒に戦います!」
「ラティ第四王女……ありがとうございます!」
「ラティでいいよ! 今から詠唱するから、もう少しの間ウォーリアアントを引きつけて!」
「ははっ! 難しいこと言ってくれますね!」
スカーレットさんはもう一度丸薬を飲み込む。
ラティは魔法の片手杖、スカーレットさんは魔法銃をリロードして構え直した。
赤色のウォーリアアントに移動しながら、再び弾幕を張る。
『GSYAAAA!!!!』
「はあああああっ!!」
射撃、移動、リロードを同時に行う。スカーレットさんの動きは洗練されていた。
「ちょっとキツイか?」
「お待たせ! 上級魔法に震えて眠れ!! アイスメテオ!!」
ラティは5メートルほどの巨大な氷塊を叩き込む。
『GSYAAAA……』
赤のウォーリアアントは氷塊に潰れて倒れた。その証拠にピクリとも動かない。
「はぁはぁはぁ……さすが魔力がきついね」
「はぁはぁ……とはいえ、さすがラティ様……その年で上級魔法とは……天才ですね」
「いえ、スカーレットさんがいなければ詠唱なんてできなかったから……ありがとうだよ」
ラティとスカーレットさんは笑みを浮かべている。
ラティが砕けた話し方になっているあたり、スカーレットさんに心を開いたのだろう。
『KSYAAAA!』
クイーンビックアントは顎を大きく上げて魔法石の塊をラティとスカーレットさんに放り込んだ。
「危ない!!」
「「きゃあ!!」」
僕は飛んできた魔法石を素手で殴り破壊する。
普通の人なら死んでいてもおかしくない攻撃だ。それにラティの【体力】のステータスは『E』だ。当たってしまったら即死は免れない。
「二人とも大丈夫?」
「アーク君……! 助かった。ありがとう」
「アーク様……! ありがとうございます! 冷静さを失っていました。さすがのフォローですね」
『KSYAAAA!』
クイーンジャイアントアントは僕を敵として認識したような気がした。
「二人とも!! 冒険者の人達はボス部屋の前に避難させといたから、後は任せて!!」
とはいえ、安全に女冒険者達を運べたのはスカーレットさんが先陣を切って助けたおかげだ。スカーレットさんは本当に正義感が強い人だ。
「申し訳ありません。アーク様……」
「え? アーク君。他の女に……その女、羨ましい……!」
ラティが顔をしかめている。もしかしたら怪我をしたのだろうか? それは許せない。さっさと倒さないと。
と思っていた矢先、青のウォーリアアントが僕に向かって突っ込んでくる。
しかしながら一撃が大きい技だと洞窟が崩壊してしまうし……だとしたら動きが小さい技の方が良いと思う。だとしたら、これがいいかな?
『初級剣術【4連撃】のレアリティを変更します』
【4連撃(N)】→【4連撃(SSS)】
「初級剣術スキル【4連撃】……!」
青いウインドウが教えてくれる。僕の【4連撃】のレアリティが変更されたことを。




