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第1話 剣聖じゃないから追放らしいです

「お前はザマール公爵家から追放する」


 十四才のジョブ付与の儀の日。僕、アークはお父様から見捨てられた。


「お、お父様……! 待ってください!」


「うるさい。この出来損ないが。お前の声なんて聞きたくもない」


 ドネイクお父様は深く大きな溜息を吐いては、僕を冷ややかな目で見る。


 この世界の人は十四歳になると神様からジョブを授かる。誰も神様なんて見た事がないけれど、僕達にとっては一生を左右するものだ。


 そして僕が生まれてから過ごしたザマール家は代々剣聖ジョブの家系だった。基本的には親が剣聖なら子も剣聖になる。この世界の常識だ。


 しかし僕は、


「【剣聖】のジョブでない時点で貴様は公爵家の人間ではない。やはり、あの女の汚れた血が」


「お父様! お母様の事は関係ないじゃないですか!」


「黙れ! 公爵家は代々剣聖の家系なのだ! 剣聖じゃない時点でお前は公爵家の人間ではない! それになんだ? 貴様が授かった【レアリティ変更士】とかいう聞いたこともないジョブは。本当にガッカリだ」


 そう。僕が授かったジョブは代々公爵家であれば授かるべきはずの剣聖のジョブではなく、【レアリティ変更士】とかいう意味不明なジョブだった。


「でも剣術は磨いてきました。それにジョブの使い方はまだ理解していませんが、もしかしたら、このジョブがきっと役に立つかもしれません! いつか強くなる日が来るかもしれないじゃないですか!?」


「うるさい! こんなジョブが役に立つはずがないだろ! 当然!! 強くなる事もないわ! それにジョブを授与した神官も『こんなジョブは聞いたことがない』と言っておったろう! それに剣聖より剣に優れたジョブなんて存在しないわ!」


 僕は説得を試みるがお父様はさらに激昂する。お父様は僕の言葉には耳を貸すつもりはなさそうな雰囲気だ。僕は父の見た事の無い怒り具合に困惑していた。


「この世界ではジョブが全てだというのは知っているだろう? その人間の一生を決めるものだ。例えば、賢者のジョブを授かった者は多くの人間から必要とされ、ならず者のジョブを授かった者は姑息な盗っ人になるのだ!」


「そうかもしれませんが!」


「故に我が公爵家の家系は【剣聖】だから貴族なのだ。それなのに【レアリティ変更士】? 意味が分からない……! 一族の面汚しめ!」


 お父様は苛立ちを隠そうともしない。僕の事をもう家族として見ていないのは明白だった。


「たしかに貴様が剣聖になるために努力をしていたのは知っている。それ故に少なからず期待だけはしていた。私の血が入っているから剣聖になれるという前提の上でのことだからな。それがこの 結果(ザマ) だとはな」


「――お父様。努力をしていたとはいえ、少し練習すれば誰でも覚えられる初級スキルしか習得できない出来損ないはこの家から追放すべきだと思いませんか?」


「おお、我が跡取り息子のガイアではないか!」


 僕は後ろを振り向くと、兄のガイアがいた。ガイアは僕の黒髪とは違ってオールバックの金髪をしている。その兄のガイアは僕を見てうすら笑いを浮かべている。


「お前もこんなゴミみたいな弟を持って、さぞ大変だっただろう」


「えぇ、大変でしたよ。こんな初級スキルしか取得できないゴミクズ。三人兄弟で一番の無能ですからねぇ……こいつさえいなければザマール公爵家は完璧だったでしょう」


 ガイアは馬鹿にしたような見下した視線を僕に送る。


「そうだな。お前さえいなければザマール公爵家は完璧だった……だがまぁいい。次期当主はガイアで決まりだ。ガイア、お前にはこの代々伝わる家宝を授けよう」


 お父様は一本の剣をガイアに渡す。黄金と無駄に煌めく数多くの宝石で装飾された柄。お父様は剣を抜く。そこには黒色の剣が姿を現した。


「こ、これは! 我がザマール家に伝わる【アダマンタイトソード】ではないですか! これを頂けるということは……」


「あぁ、ガイア。お前を正式にザマール家の後継者に任命する」


「ヒヒッ! ありがたき幸せ!」


「ガイアがこの武器を持っていれば安泰だ! 例えドラゴンが攻め入ろうとも、この屋敷を攻め落とすことなどできんわ!」


 僕は完全に蚊帳の外だった。同時に僕の目標への努力が無意味になった瞬間でもあった。


「ん? お前、まだここにいたのか?」


 ドネイクお父様は僕を再び冷ややかな目で見る。ガイアお兄様には見せた表情を僕に見せる事はない。


「それにしても私はどうしたらいいのだ。このゴミをこの屋敷に置いてはおけぬ。かといって殺してしまっては我が一族の名誉を汚す事になりかねん。だから追放という手段を取るのだが、どこに追放したらいい」


「ヒヒッ。ドネイクお父様。ご提案があるのですが」


「む? なんだね? ガイアよ」


「こいつを我が領地である極東の地に追放してはいかがでしょう?」


「ほう? 極東の地か」


「あそこなら、それなりにモンスターも強いと聞きますからね。愚弟……いや、ゴミは生きていけないでしょう」


「ふむ」


「仮に死んだとしても、表向きはあくまで極東の地の開拓を命じただけ。私達が非難を浴びることはありません。例え、ゴミが不慮の事故で死んだとしても、ね……」


「なるほど! それは良い! 我、ドネイク・ザマールが命じる。お前は極東の地に追放する。ササッと死んでくれ」


「そんな……」


 こんなに薄情だとは思わなかった。心のどこかで肉親だからと期待をしていたのだけれど。まさか『死んでくれ』と言われるとは思わなかった。


「おい、お前のジョブは何か変えるものなのか? だとしたらこの【アダマンタイトソード】をより良いモノにしてみろよ」


 ガイアは僕に【アダマンタイトソード】を押し付ける。


 しかし僕だってこのジョブがどういうものか分からない。だから何をしていいかが分からない。そもそもレアリティってなに?


「なんだ。何も起きないじゃないか。俺からの最後の慈悲ですら無駄にするとはつくづく無能な弟だったな。俺とは大違いだ」


 ガイアは僕を嘲笑う。こうなる事を分かっていた上で僕にアダマンタイトソードを押し付けたのだ。


「お前みたいな無能じゃ生存できるか分からないけどな。お前の良い所なんて無いもんなぁ……いやぁ? 一つだけあったなぁ? 唯一の取柄が第四王女に取り入ることだったけかなぁ?」


 第四王女は僕の幼馴染みだ。仲は良いが取り入ったつもりは無い。


「いや、僕と第四王女はそんな関係じゃ」


「んなこと知るかよ。まぁ? 第四王女はお前を憐れんで仲良くしてたんだからなぁ! そんなことすら察することもできないなんて、お前はあまりにも愚かだわ! 今後は俺が第四王女と仲良くしてやるからよぉ! 身体も心もなぁ!」


 僕はガイアの言葉に嫌悪感を覚えた。あまりにも下品だから。


「あれは上玉だからなぁ。俺と同じ金の髪に男なら誰でも惚れちまうような瞳……お前と違って俺には優しく微笑んでくれるからなぁ。あれは絶対俺の事好きだぜ? まぁ、お前には分からないかもしれないけどなぁ!」


 僕と第四王女は本当に仲が良いだけの関係なのだ。たしかに身分の差は大きい。だけど身分の差が大きくても大好きな幼馴染みの幸せを願うくらいの事はできる。


 だから兄のガイアの言い方に嫌悪感を覚えた。


「じゃあ、さっさとこの屋敷から出て行ってくれや。せいぜい無能らしくネズミのように息を潜めて無様に生きてくれや。ケヒャヒャ!」


 ガイアは僕を馬鹿にする。どうせ死ぬだろう。お前では生きていけないと言っているのと変わらない。剣聖のジョブではないというだけで、家族の縁が切られると心が沈んだ。


**************


「極東の地に追放か……」


 僕は近くの街に向かうために草原を歩いていた。極東の地に向かうための装備を整えるためには、まずは街に行かないといけない。だけど歩き慣れた本来見通しの良い草原も、今日は涙で霞んで視界が悪い。


「まずは旅支度を済ませないと」


 お母様が亡くなる前のこと。


 お母様は僕にお金の入った麻袋を渡した。


 僕はそのお金の入った麻袋をずっと隠し持っていた。とはいえ、剣聖になるためのスキルの練習で使うことが無かっただけなのだけど。


 お母様はなにかあった時にと貯めてくれていたのだ。お父様……いや、あの公爵から貰っていた小遣いの一部を貯めて。累計すると普通の人が1ヶ月くらい生きるためのお金になった。それが僕の全財産。


 だから僕を一番に想ってくれていたお母様が侮辱された時、僕はとても悔しかった。


 でもくよくよしていても仕方がない。父やガイアには罵られたが、僕は新たな土地に向かう。そこで僕にできる何かを見つけたい。


 天国のお母様が遺してくれた優しさに報いるためにも。このままだと天国のお母様が悲しんでしまうだろうから。


 そうして、僕はお母様から受け取ったお金の入った麻袋を握りしめた。


 その時だった――。


『GYAAAAAA!!』


「なんでここにワイバーンが……?」


 ワイバーンは灰色の鱗を纏い、大きな翼を持つ生き物である。よくドラゴンの近縁種などと言われており、危険度はドラゴンと変わらない。


 僕の視線の先にいるワイバーンは再び大きな咆哮を響かせ、空気や大地を震わせている。


 どうしてワイバーンがいるのだろう。ワイバーンは草原を越えた人類未踏の深い森の最奥を住処としているはずなのに。


 ワイバーンは一台の馬車を襲っている。


 馬車は白をベースに金の紋章が記されている……あれは王家の紋章だ。


「いやっ!! こないで!!」


 馬車の近くには見覚えのある短めの金色の髪の女の子が尻餅を着いていた。


 どうして第四王女がここにいるんだ!!?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 設定がめちゃくちゃで、恐らくしっかりと世界観が考えられていない。 ・主人公は嫡子では無く、かつ母親も良い生まれではない。 ・スキルは親と同じものが得られるのが当然という世界観。 ・長…
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