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お茶友

「ご挨拶が遅くなり大変申し訳ありません。私の名前はアーリィ・アレストフ。こちらのオリバー・マカロフ公爵令息と三ヶ月後に結婚する予定のものです。皆様、どうぞよろしくお願い致します」


 出来るだけ自然に、爽やかに。


 うん。自分ではけっこう上手く自己紹介出来たと思う。


 私は満足気にオリバーの方へと視線を送る。


 私の視線の先、彼は眉間の辺りに手を当て何か考え込んでいる様子だった。


「どうしたの? オリバー。頭痛?」


「えっ? ああ、い、いや、何でもないよ」


 明らかに何かある様子のオリバー。考えてみたら昨日からずっと変だ。


 そんなオリバーから視線をきって他の御令嬢達の様子を伺うと、なぜか皆驚いたような表情で私を見つめていた。


 やがて、


「ああ、あなたが。そうだったの。まあ、そうじゃないかとは思ったんだけどあまりに想像と違っていたから、ね。そう、あなただったんだ」


 マシュー嬢は私を品定めするようにしながらそう口にする。


 他のお二人も私の全身を余す事なく眺めるので、私としては非常に居心地が悪い思いだ。


 このまま三人の御令嬢達の視線に晒されていると、私の身体のあちらこちらに穴が空いてしまいそうなので、御令嬢達の注意を逸らすために私は夢中で口を開いた。


「そ、それでその……皆さんはオリバーとはいったいどういったご関係なのでしょうか?」


 一番に頭に浮かんだ言葉を何も考えずそのまま口に出してしまった。


 こういう自分の浅はかなところが心底嫌になる。


 今、ここでこうしてお茶会をしているぐらいなのだからオリバーと御令嬢達は明らかに面識のある間柄なのだ。


 親友とは言わないまでも、友人ぐらいの関係性ではあるはず。


 先日と今日、オリバーと彼女達のやり取りを見てもそれは明白なのだ。


 だから、そんな事は初めから聞くまでもない事なのだ。


「え……それは……えっと……」


「あー、私達はー……」


「ふっふふ、私達の関係性? それ、聞く?」


「あ、あ、あっと! 僕達は……僕達は……そう! お茶友だよ! お茶友!」


「お茶友?」


 初めて聞くお茶友という言葉が私の脳内を彷徨う。


 お茶を飲む、友人。で、お茶友なのだろうか?


 であるならば、とどのつまりオリバーと御令嬢達は友人という事になるのではないだろうか。


 私の読みは当たっていた訳だ。


「では、定期的に皆さんで集まってはこうしてお茶を楽しんでいるのね?」


「そ、そうなんだよ! 本当に最近始めたばかりなんだけれどね。今回で二回目……かな。アーリィにはまだ伝えてなかったね。ごめん」


「別に謝る事ではないでしょう? オリバーは友達が多くて羨ましいわ」


「そう……かな?」


「そうよ、絶対」


 私とオリバーが会話をしていると、オリバーの右隣に座るガイアン嬢が口を開いた。


「アーリィ嬢、あなたずいぶん変わっているのね。それに不思議な魅力を持っている」


「不思議な魅力?」


 私には身に覚えのないものだ。それよりも私に魅力なんてものを見出したガイアン嬢に驚きだ。


「あ、それ私も思った」


 オルテン嬢は小さく手を上げてガイアン嬢に賛同した。

 

「想像とは違ったけど……何ていうのかな? 可愛らしいんじゃなく、どちらかと言えば綺麗なんだけれど、それもどうもしっくりとこない……あ、ごめんなさい。そういう意味じゃないの。うん、上手く言えないけれど、とにかく変わった魅力を感じるわ」


「そう、ですか」


 変わった魅力。


 お父様が私を鉄女と呼ぶ理由と同じなのでしょうか。


 女らしくなく、男のようである。


 ひどく中性的で、可愛らしくなく、綺麗でもない。それが変わった魅力ということなのだろう。


 そう、私は決して美人ではない。お父様がいうように鉄の仮面を被った鉄女なのだ。


 全ての物事に興味が薄く、淡白で、あっさりとしている。


 感情の起伏の乏しい鉄女。それが私だ。


 だから、私の言動は必然的に女性らしくなくなり、どちらかと言えば男性らしい言動になってしまう。


 その事は自負している。


 逆にオリバーは中性的な顔の作りでいて、女性らしさがある。


 男性らしい私と、女性らしさを持ったオリバー。そんなちぐはぐな二人が私達なのだ。


「オリバー様は本当にアーリィ嬢のことを好いてらっしゃるのかしら?」


 ガイアン嬢はオリバーの首元に後ろから手を回し、肩にあごを乗せて笑った。






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