黒い三令嬢、再び
次の日、私は改めてオリバーの屋敷へと向かった。
昨日、オリバーの屋敷を後にした夜にオリバーから書状が届いたのだ。
内容は今日はあんな事になってしまって申し訳ないという謝罪と明日改めて私と会いたいというものであった。
だから私はオリバーの意に沿って会いにいく事にしたのだ。
書状の内容をぼんやりと思い返しながらしばらく馬車に揺られていると、ゆっくりと馬車が止まった。
どうやら到着したようだ。
馬車から降りるとテラスの方が何やら騒がしい。
まるで昨日の光景を繰り返し見ているようである。
「あの……オリバー?」
「アーリィ、違うんだ!」
だから何が違うのだろう。
私にはその、違い、というものが分からない。
私が悪いのだろうか?
「何が違うの? オリバー」
「ぜ、全部さ! これはその、なんというか、たまたま何かの間違いでこうなってるだけで、その……」
「その?」
「…………」
オリバーは視線を地に落とし、困ったような表情を浮かべている。
「オリバーさまぁ! ねぇ、ねぇ、オリバーさまぁ!」
「オリバー様。見てください、このドレス。今日おろしたばかりなんですよ」
「オリバー様のために焼き菓子を作ったんですー! 召し上がってくださーい!」
例の黒い三令嬢らしき方々は今日もオリバーの身体に寄り添って、一心に自身の思いを伝えている。
だから私は、
「オリバー、今日も忙しそうですね。私、また出直した方がよいのでは?」
「いや! 今日はーーーー今日は大丈夫だよ! そのまま、そのまま、そこにいて!」
「しかし……」
昨日同様多忙な様子のオリバーを慮って出直そうと思った私ですが、なぜだかオリバーはそんな私を引き止める。
「ええっと……あっ! じゃ、じゃあ、みんなでお茶をしようよ! それが良い! 名案だ! みんなで美味しいお茶を飲んで、楽しくお喋りしようよ! ねっ!?」
「えー……ガイアン、オリバー様と二人きりがいいのに……」
「オルテンもこのドレス、オリバー様だけに見て褒めてもらいたいのに……」
「オリバー様のためだけにマシューが一生懸命作ったお菓子なのにー……」
「ええ、私はそれでも一向に構いません」
私とは違って他の御令嬢達は何だか不満なご様子です。
みんなで仲良くお茶が楽しめるというのに、皆さんいったい何がそんなに不満なのでしょう?
何となくだが他の御令嬢達と私とで空気感が違っているような気がするのだがなぜだろう?
オリバーも先日から、違う違う、と繰り返しているし。
けれど、私にはその違いというものがさっぱり分からないのだ。
普段から感情の起伏のない鉄の仮面をかぶった女だとお父様に言われているのは、きっとこういったところが原因なのだろう。
うむ……。
何だろう、オリバーや他の御令嬢達の気持ちが分からない……。
「ーーーーさぁ! そうと決まったら、早く中へと入ってくれたまえ! すぐに支度させるからさ! おい! 誰か! お茶の用意をしてくれないか!」
オリバーが声を上げるとすぐに女中の方が飛んできて、お茶の支度へと向かった。
私と御令嬢達はオリバーに手招きされ、控えの間へと通された。
来客用の部屋として作られたこの部屋には、煌びやかな装飾が多くそれらひとつひとつを眺めているだけであっという間に時が過ぎてしまう。
ニッチに飾り付けられた彫刻もきっと高名な彫刻家に造らせた貴重なものなのでしょう。
部屋の中央に位置するテーブルセット、御令嬢達は長椅子に並んで座り、テーブルを挟んだ向かい側の椅子に私が座った。オリバーは私達の中間、テーブルの側面に位置する椅子に腰掛けている。
オリバーは大きく前のめりになって忙しなく手元を動かしており、表情も優れず何だか非常に落ち着かない様子である。
対し、正面に座る御令嬢達は相変わらず何かに不満があるようで、とても不機嫌そうである。
だから、なぜ私を睨む。三人とも。
明らかに普通ではない現状に、この後のお茶会の行方が心配でならない私であった。
かくして不貞と見做されるのが心配でたまらないオリバー・マカロフ公爵令息と、どうにかしてオリバーを振り向かせたい黒い三令嬢と、空気が読めず感情の起伏に乏しい婚約者アーリィ・アレストフ伯爵令嬢による世にも奇妙なお茶会が今、始まろうとしている。
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