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マカロフ家

 オリバーが邸に帰って来なくなって三日が過ぎた。


 その頃には邸の中はアリシアの事とオリバーの事で妙に重たい嫌な空気感が漂っていた。


 オリバーが行き先も告げずに邸を開けることなんて今まで一度もなかった事だから、私は内心とても心配していた。


 先日、アリシアの事を知った彼の顔には絶望の色がひどく浮かんでいたから、かなりのショックを受けたのだろうと思ってはいた。


 すぐに追いかけるべきだったのかもしれないけれど、悪いがオリバーの事を心配している余裕が私にはなかった。


 鉄女と言われる私らしくひどく冷たい対応だとは思ったけれど、今はひとりで耐えてもらうしかなかった。父親と母親である私達は事実を受け止めきちんと自分の足で立たなければいけない。


 アリシアを支えていく為には私達は自分ひとりで立ち続けなければならない。


 自分の足でしっかりと大地を踏みしめて、その上で私達が左右からアリシアの手を引いて支えてあげるべきなのだ。


 間違っても夫婦が弱々しく手を取り合っている場合ではないのだ。


 とはいえ、やはり心配にはなってしまう。オリバーはそれほど気の強い人間ではないからひどく落ち込んでいるかもしれない。


 さすがに現実に絶望して滅多な事はしでかさないとは思うけれど……。


 それでも変に悲観的になるところもあるから、気掛かりではある。


 早く帰ってきてほしいものだ。これからの事について色々と話したい事もあるのだから。いつまでも弱音は吐いていられないのだ。




 オリバーが邸を出て四日が経った正午過ぎ、ようやくオリバーが邸へと帰ってきた。


 四日ぶりに見たオリバーの頭髪と着衣は乱れ表情は疲れ切っているようだった。


 力なく肩を落とし丸まった背中からは生気は感じられない。


 ずいぶんと窶れてしまっている。まるで別人のようだ。


「オリバー、大丈夫?」


「…………」


 わずかに頷くような素振りを見せたけれどオリバーは何も喋ろうとはしなかった。


「どこにいっていたの? 平気?」


「……帰って、た……。来てる……ふたりとも……一緒に……」


 オリバーはそう、ぽつりとぽつりと呟いた。


「ふたり?」 


 何の事かと考えを巡らせていると、オリバーのご両親であるダグラス様とメアリー様が部屋へと入ってこられた。


 前公爵御夫妻はそそくさと私の横を通り過ぎ、息子のオリバーの側へと歩み寄った。夫妻はまるで幼い子供を抱くようにオリバーへと身を寄せ合うと、私に厳しい視線を向けた。


「ごきげんよう、アーリィさん」


 私はそんな厳しい視線を受け戸惑いながらも笑顔でご挨拶をかえした。


「お義父様、お義母様よくおいでくださいました」


「ッナー!」


 私の腕の中でアリシアはそんなふうに元気な声を上げた。


「先日はアリシアのために色々な物を送っていただき有難うございます。アリシアも大変気に入っているようです」


 お義母様は眉ひとつ動かさずに私の事を見つめている。


 先ほどからいったいどうしたというのだろう。普段のお義母様からは想像できない冷たい印象を受ける。


 オリバーといい、お義母様といいこれではまるで別人ではないか。


「そう、気に入ってくれたの、良かった。選んだ甲斐があったというものだわ」


 もう、どうでもいいことだけれど。と、お義母様は小さく呟いた。


「えっ……」


「アーリィさん、実は今日はお願いがあって来たのよ」


「あっ、はい。何でしょう?」


 お義母様は両手で弄んでいた扇子をパチンと閉じると、私にそれを突きつけるようにして言い放った。


「オリバーと、別れていただきたいのよ!」


 その言葉が私の脳内で激しく反響した。


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