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オリバーの戸惑い

 落ち着いてください。難聴の傾向がみられますが全く聞こえないと決まったわけではーーーー


 後日、精密検査を受けていただいてーーーー


 幼少期にはたまにみられる症状ですからあまり深く考え込まずーーーー


 ではまた後日、改めましてーーーー


 お医者様とのそんなやり取りを何度も何度も繰り返し思い出していた。思い出す度に目からは涙がこぼれ落ちた。


 お医者様が帰られた後、邸の中は慌ただしいまま静けさを取り戻すことはなかった。


 使用人たちもアリシアの検診結果を知って戸惑っているのだろう。


 それは当たり前のことだ。仕方がない。


 当のアリシアは今、私の腕の中で無邪気に遊んでいる。


 いつものように、いつもの笑顔を振りまいている。


 それは何も変わらない。今までと何ひとつ変わりはしないのだ。


 アリシアは何も変わらないのだ。


 いつものようにアリシアを撫でていると、やがて騒がしい足音が遠くの方からこちらに向かって近づいてきた。


 恐らくオリバーだろう。

 

 家を空けていたオリバーが邸に戻り、健診の詳細を聞きつけたのだろう。

 

 そこまで思い至ったところで乱暴に部屋のドアが開かれ、私の予想通りオリバーが姿を見せた。


「ア、アーリィ!」


「オリバー、あまり騒がしくするとアリシアが驚いてしまうわ」


「あ、ごめん……いや、そうじゃない! アーリィ! アリシアは⁉︎ アリシアの耳は⁉︎」


「アリシアはいつも通りよ。いつもと変わらない、元気なものよ」


「元気って……聞こえてないん……だろ?」


「…………」


 オリバーのそんな問いに私は即座に答えることが出来なかった。


 そんな言葉を簡単に聞き入れてしまえるほど、私は冷静ではいられなかった。


「そうか、やっぱり……本当だったんだね……」


 オリバーは血の気の失せた顔を見せ、力なく部屋を後にした。


「アッタタタ!」


「えぇ、ママも元気よ。大丈夫。みんなみんな元気よ」


 大丈夫。何も変わらない。変わっていない。


 私は自分に言い聞かせるように何度もそう呟いた。


 再び静かになった部屋の中で私とアリシアは互いに見つめあい、いつもと変わらないいつも通りの時間を過ごし続けた。


 変わったことと言えば、あれからオリバーが邸に帰ってこなくなったことくらいだ。














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