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(0)技術は、存在する!

 ――何ということだろう!


 拙紙をご覧の諸君は、サイエンティズムという言葉をご存じだろうか。

 一部の道楽者達が悪戯に口にしているのを、耳にされた方もいるかも知れない。サイエンティズム、即ち、普段から私達が駆使する魔術ではない、技術なる異端の術。

 本稿は、技術を定義し、技術の存在を検証するものである。

 技術とは何なのか? 技術とは実在したものなのか? 技術はどこから現れ、そしてどこに姿を消したのか? そして技術とは、果たしてどういうものなのか――。

 先人の知恵を拝借し、また最新の研究も交えながら、疑問に答えを導き出したい。

 結論を先に述べよう。私は確信している。確信したのだ。技術は存在すると!

 勿論、このような絵空事を信じる方など一握りに満たないだろう。もしかしたら誰もいないかも知れない。私は明日には、狂人扱いを受けることになるかも知れない。

 しかし私は、それでも断言する。《《技術は、存在する》》! 人はかつて、魔術もなしに空を滑り、地に潜り、炎と氷を生み出し、拳大の鉄塊で何百人もの人間を吹き飛ばすことを可能としていたのである!


 技術に関して、面白い話がある。

 普段、我々が用いているのは言うまでもなく魔術であるが、もう一つ、遺術(いじゅつ)の事も忘れるわけにはいくまい。私達は遺術によって糸を縒り出し、水を汲み上げ、紙を作り出し、鉄を熔かして加工している。

 他でもない、後の世に《制作者》と称されし天才、阿蘭(あらん)の生み出した遺術こそが技術の一端だというのである。世界が《災厄》に見舞われる以前のことは全ての人類にとって未だ謎の多い領域であるが、かの天才は、それを知っている素振りさえ見せたという。

 更に驚くべきは、技術の性質である。技術は魔術と全く同様に、理論的に論理的に説明され、体系立てて考えることが可能なのだという。

 無論、作り上げられる公式は我らの知るそれとは完全に異なる。これが一体、何を意味するのか。それこそ、これから人類が考察すべき大きな命題であるに違いない。

 完全に理性的な、二つの異なる公式。もしかしたら、魔術にとっての技術がそうであるように、技術にとっての魔術もまた、――妖術のようなものなのかも知れない。私は、そう考えている。


 暁暦五〇四年五月 莉人(りひと)(『先端オカルティズム』削除論文『魔女の実在』より、一部抜粋)

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