カウンセリング
「克さん、あなたの性格上あなたに寄り添ってくれる人がいるのはいいことですよ。なので、突き放さないでくださいね」
我々収監者は二週間に一度の頻度で心理カウンセリングを受けられる。
主に犯罪を犯した収監者を相手にするのだが、私のような犯罪歴がないものでも自由に受けられる。
「あなたは常日頃から劣等感に見舞われてきました。そのため、家族といる時などは臆病で親の言うことをなんでも聞く優しい性格を演じて来ました。しかしクラスメートなど同年代の間では自分が優位に立ちたいという欲望から、相手にきつく当たることもしばしばあったようですな」
「…」
そんなことはもう覚えていない。
「そして、相手が自分より弱いと感じるや否や、初めての優越感を忘れられなくなった。と」
カウンセラーは僕の経歴や顔つき、息遣いなどを観察して、そう分析した。
「よかった。犯罪を未然に防げたと言っても過言ではないでしょう。あのままだといつか理性が支配欲に奪われ、人をいたぶり、暴行を加えたり、最悪の場合死なせてたかもしれませんし」
そう言われて、気持ちが安堵する…わけない。
まるで、ここにい続けてくれた方が自分のためになるとでもいいたそうな顔で、微笑むカウンセラーを横目で見た。
「君は寂しいんだ。君は人が怖いんだ。だから、自分より弱い人を見つけると自分が上であることを見せびらかしたくなるんだ」
私はカウンセラーから目をそらした。
「しかし、それは相手にとってはいじめに感じるんだ」
「…」
まるで五歳児に対して言っているような口ぶりはおそらく私を安心させるためのカウンセラーの話術だろう。
「だからね、君には同じ立場で接してくれる友達が必要なんだ。ここには自分のことしか考えられない子たちが多いが、彼は違う。龍興くんは孤独に悩まされている。昔から一人で、祖父母の家で育ったけど、やはりどこか打ち解けなかった。もしかしたら自分はいらない存在なんじゃないかって思い始めた。どうにかして自分を認めて欲しい彼は、総理大臣暗殺計画を立てた。これが見事成功すれば、彼はたちまち有名人になる。違う意味でね。でもそれを未然に防ぐことができた、彼の人生も総理大臣の命も助かった。彼は人と話すことで自己価値を見いだすことができる。だから君のような話を聞いてくれる存在は彼にとって安心材料となる」
カウンセラーは右手を僕の方に差し伸べた。
「どうだい、君たち二人にとって互いは幸福をもたらすヒーローなんだ。だからね、これからも話を聞くだけでいい、彼に会ってくれるね」
私は少ししてから無言で頷いた。
みなさん、こんにちは。最近一つ一つが短くて申し訳ありません。昔は書きたいことを書き終えるまで書き続けていたのですが、最近は1000文字ほど書いたら満足してしまっています。停滞期でしょうか。
多少短くなるでしょうが投稿は続けていきますので、これからもよろしくお願いします。