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異人  作者: 蒼蕣
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使命

商品企画開発部に配属された私の仕事は新しい、画期的な商品の開発だ。

新商品を作る上で大事なのはまず、コンセプトを考えること。

そして同じような商品がすでに発明されてないか他社の企業の詮索、もしあった場合どう他社に対抗するか。

ある程度商品のイメージが出来上がれば、次はデザインを考える。

そして最後に価格設定という流れだ。

デザインと価格設定は商品開発部の仕事であり、私の配属している商品企画部の仕事ではない。

コンセプトを考えることは意外に難しい。

てっきり斬新なアイデア、発想の転換というべきだろうか、誰もこんなこと考えたことなかったというようなことを思いつくことができればいいと思っていたのだが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。

コンセプトを考える上で必要なことは顧客が何を求めているかを調査し、それを実現すること。

その顧客の要求にリンクしているのが流行、つまり今世間で何が流行っているのかまたは流行るだろうと予想されるものである。

しかし今まで社会から隔離された施設にいた私にとって何が流行っているのかなど知る由も無い。

なら他社の新商品からアイデアをもらい、その商品に改良を加えた独自の商品を開発するのも一つの手だろう。

事実我が社と依頼主の会社を含む大手三社の売り上げは拮抗している。

我が社が新商品を売り出せば、依頼主の会社が同じような商品を開発し、その後を追うようにもう一つの会社が同じような商品を販売する。

しかし後の二つの商品は基本的には我が社のものを似せたものだが、それに加えて自社の個性を入れ込んでいるため、総合的に見て我が社のものが劣ってしまう。

そこで我が社も自分たちが最初に開発した商品の改良版売り出す。そして負けじと他の二社もイタチごっこのように我が社の後を追う。

しかし不幸なことに、我が社は同じ業界で先駆者と評されているため、常に我が社が先陣を切って、斬新なアイデアを社会に発出しなければならないという使命がある。

これが最大手の永遠の壁となる。

そこで役に立つのはお客様アンケートだ。

ほぼ毎日のように三十件程度のアンケートが届き、私はそれら全てに目を通している。

基本的には商品に対する感想だが、私はそこから顧客が何を求めているかや日常で不便に思っていることを導き出すことができるのだ。

しかしアンケートには顧客の商品に対する不満や素直にこうしてほしいという意見をもらってはいない。あくまで我が社の商品を使った時の感想をいただいているだけだ。

人間が作ったものは全て完璧ではない。我が社の新商品も例外ではない。

しかし日本人の謙虚さが文面に表れているせいか、率直にこれが嫌だ、であったり、ここが不満であるといった意見は書かれていない。

しかしなぜだか心理学を独学で学んでいる私にはただ感想が書かれただけのアンケートから顧客が何を求めているのかが手に取るようにわかる。

その洞察力が上司の目に留まったのだ。

その後、毎日のように届く顧客からのアンケートを元にアイデアやコンセプトを生み出すことが私の仕事となったことは言うまでもない。

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