部署移動
「君はこれから商品企画部に移動だ」
その日、出社して最初に上司に言われた言葉がそれだ。
「一昨日の商品企画部への研修でお偉いさんが君をほしいと言って来た。よかったな」
よかったのか…
まるで左遷されるような言い方だが、ここでは何もできないことを私は知っている。
何より計画遂行のための情報収集においてこの部署にとどまる理由はない。
もうここの人たちには迷惑はかけられないと思っていたところだ。
そのお偉いさんとやらが私の腕を買って引き抜こうとしているんだ、願ったり叶ったりじゃないか。
喜ぶべきだろう。
「適材適所とはまさにこのことだな」
私には私の居場所がある。
同僚に見送られ、私はその場を後にした。
彼らの目は同期である私の移動を悲しんでいるのか、はたまた邪魔者の私が去って喜んでいるのか。
人はやはり不気味だ。このような場で本心を顔に出すことは決してない。
私は静かに頭を下げた。
上司に連れられてエレベーターへ乗った。
「よかったな、君に見合った部が見つかって。てっきり若者は裏方の仕事は好かなそうだし、体力も有り余ってるからうちの営業部がいいと思っていたが、君は人と話すのも嫌いだし、パソコンもろくに使えないから、経理や人事、広報部も向かなかっただろうな」
この上司にも世話になった。短い時間だったがいい経験をさせてもらった気がする。だが相変わらず相手の心が読めない。怖いな。いや、自分に分からないことがあるから探究心というものが芽生えるのだろう。探究心無くして人は成長しない。探究心があるからこそ人生薔薇色になるというものだ。
「やあ待っていたよ。白谷和俊くん」
白髪交じりの髪に、適度に太った体の商品企画部部長は、すごく優しそうな顔をしていた。
しかしそう簡単に気を許してはならない。第一印象は人を騙す。
私に商品企画の才能があるから優しく振舞っているのだろうか。いや…
「んじゃあ俺はこれで。今までご苦労だったな」
「はい。今までお世話になりました」
静かに去ってゆく営業部の元上司の背に深くお辞儀をした。
「そんな今生の別れのような顔しなさんな。社員食堂とかでまた会えるよ」
「そうですよね」
私は営業部で培った渾身の技、作り笑顔を見せた。
「まあ、普通は商品企画プランナーの資格を持った人たちが集まるところだけど君みたいな初心者も歓迎するよ。何より一昨日の研修の時に君の才能は私を含めて多くのものに認められているから、弾かれることはないと思うよ。んじゃあ早速だけど我が社の商品とライバル社三社の同じ製品の資料だ。比べてみて、我が社のものに何が足りないのか文面にまとめてくれるか」
「わかりました」
新しい上司は私の新しいデスクに案内すると、その上に重ねてあった紙の束を軽く叩いた。
みなさんお久しぶりです。いかがお過ごしですか。私は会社に勤めたことがないので、その辺の仕組みを全く理解しておりません。経験がないため私の理想の会社像とアニメなどを頼りに今回のような場面を書かせていただきました。ここから主人公が会社で活躍していく場面が続くのですが、おそらく現実味に欠けると思います。温かい目でご覧いただけると助かります。




