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異人  作者: 蒼蕣
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斥候

私の仕事は単純明快。複雑なことなど一切ない。

朝は他の人たちが出勤する三十分ぐらい前、つまり七時半に出勤する。

まあ、別に早く来たところで特別何かするわけでもないのだが、いつだったか何もできないくせに人より遅く来やがってと難癖をつけられたので、早く来るようになった。

出勤時間というのはその者たちの性格やその会社での地位が明確に現れている。新参者や気の弱い者、仕事に真面目に打ち込む者は予定の時刻より早く出勤する。対してこの会社に長年勤め、上からの圧力に縛られていないて中年者や、怠け癖、ズボラな者たちはいつもギリギリで会社に来る。

私は前者である。しかし私は別に上の人から叱られるのが怖いからとか、仕事に並々ならない愛着を持っているからではない。私はこれまで規則正しい生活を強いられていたので、それがすでに身に染み付いてしまっているのだ。

全員が出勤して来たところで上司の号令で朝礼が始まる。

営業部は部長をトップにその下を大きく分けて六つに分類されている。それぞれを束ねているのが係長。

いつも朝礼で部長はそれぞれの係長に大まかな仕事の内容、そして今日の目標を伝え、係長はその仕事を下の者たちに均等に分担させる。

私も六つに分類されている中の一つに配属されているが、私は雑用が主な仕事である。というのもパソコンもろくに使えない自分にはここでやれることは少ない。

かと言って暇というわけではない。パソコンを使わない仕事を私はしっかりとこなしている。

あれを取って来てくれと言われて、資料庫から言われたファイルを探して来たり、茶を入れたり、明日の会議に使うとかで資料を会議出席者全員分コピーしたりと何かとやることはある。

やる気を見せ、そして与えられた仕事を丁寧かつ迅速にこなす。これでなんとか今はクビにならずに済んでいる。信頼されてきている証なのか、徐々に自分の名前が呼ばれる頻度が多くなった。

いつか自分も彼らのように連携のとれたパソコン作業をしたいなと思っているが、自分のデスクにあったパソコンは他の者に渡ってしまったため、持ち合わせいない。

正直いろんなところを行ったり来たりしていることがほとんどなので、自分のデスクにいることなど必要ないのだが、備品はパソコン以外全て揃っている。

いつか自分も他の者たちと同じようにあのキャスター付き回転椅子に座って作業をするのだろうか。今あの椅子に座ったら何休んでるんだって叱られそうだ。今の自分はの目標はこの会社に溶け込むことだ。だったらせめてみんなと同じような仕事をしなければと考えてしまう。

いくら他の人の仕事を見ていたとしても実践を積まないと覚えるものも覚えられない。

雑用の時は先輩たちの仕事をよく観察して技術を盗めと言われるが、いくら盗んでも実践する場所がない。

いっとき、パソコンを叩いていた先輩にアドバイスを送ろうとした時、雑用風情がしゃしゃりでるなと言わんばかりの眼光をこっちに向けて来た。

それでもめげずに同僚にパソコンの使い方も教わろうとしたが、彼らも暇ではない。そう簡単には教えてくれなかった。

ならばと潔く上司にパソコンを要求するも、君の仕事はあるだろう。君にパソコンで作業させても時間の無駄だと言われた。

根気強く諦めなければ、いつか実ると根拠もない言い訳を自信に変え、頑張った。

全ては他の人と同等の扱いを受けるため、などではない。

蔑まれる、見下されるのは慣れている。それで人が遠ざかろうが構わない。

しかし完全犯罪計画のためには会社の人間とそれ相応の関係を築いて行かなければ、上司に媚びを売るくらいしなければ昇進もできない。

昇進できないとこの会社の機密情報を手に入れることもままならないのだ。

しかしそんなことを嘆いても何も始まらないことは目に見えていた。

だから私は精一杯他の人以上に努力した。

雑用をする傍ら、いろんな人の仕事を観察した。

上司が他の部下を叱咤するのを見て、彼が我々部下に何を求めているのかを考察した。きっと上司一人一人の価値観によって部下に求められる技量も違うのだろうが、今はとりあえず自分の上司に集中する。

毎朝部長が朝礼で与える仕事を数値化、パターンを見出し、この営業部が会社の業績にどう関わっているのかを分析した。

自分の周りの人をよく観察して彼らの好きなもの、嫌いなものを覚え、何かあった時に媚びを売れるように準備をした。

定時でみんな上がった後も私は最後の最後まで残り、一人一人に挨拶をした。

仕事ができなくても態度が良ければ報われる、とまでは行かないが良い関係性は築けると思った。いざとなれば助け舟を出してくれると踏んでいた。

退社した後は本屋へ通い、新しい犯罪の本が入荷していないか確認する傍ら、仕事を効率よく捌く方法やビジネスマナー、上司や同僚といい信頼関係を築く方法などを調べた。

全てはそう、依頼人のため、自分の唯一の欲望を満たすため。

そのために私は今日も精進した。

最近は自伝の方ばかりに気を取られて、こちらの方がおろそかになっていましたね。皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか。九月に入りまして、私の方は再び学業の方に戻ります。しかしこれまでのように投稿は続けて行きます。

私がこちらに自分の小説を投稿して四年ほどになります。当時は高校生でしたが、今や大学生。推察ですが、最低でもあと二年ぐらい投稿は続けて行きますので、その時はもう社会人ですね。無事卒業できればの話ですが…

私が投稿するようになって四年経ちましたが、小説は中学生の時から書いていたので七年ぐらい経つでしょうか。スローペースで覚えの悪い私でも流石に少しは上達しましたでしょうか。これからも励んで行きますので宜しくお願いします。

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