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異人  作者: 蒼蕣
16/59

自由

完全犯罪計画者取引所

それが三つの目の施設の名前だった。

私たちはずっとここは職員たちの働き場所と聞かされていた。

しかし実態はこうだった。ここは”卒業試験”に合格したものたちを完全犯罪計画者として世に売り出す。

世の中には犯罪を犯そうというものが数多く存在する。しかしそれを実行に移すものは少ない。

それは犯罪を犯せば十中八九警察に捕まり、その後の人生を棒に振るってしまうのを恐れているからだ。

しかし完全犯罪なら如何だろう。完全犯罪なら警察に捕まらなくて済む。事実私たちは警察に絶対に捕まらない”完璧”な犯罪計画を手がけている。

今まではその計画書を売買するだけだったが、いつしかその計画書を手がけた者達も取引の対象になったのである。

値段はまちまちだが、競りで行われるため、人によっては数千万出すものもいる。そして、買った有権者や資産家は計画者をどのように扱ってもいいという。犯罪を何度も計画させる者もいれば、一度成功したら用済みのように捨てる者もいる。

私たちの作る計画は確かに芸術的だが、完璧ではない。警察に捕まるかもしれない。そんな時は私たち計画者を贖罪の山羊(スケープゴート)として差し出す。そんなこともしばしばあるという。

つまり、私たちに真の自由はない。

なら、卒業試験に合格しなければいいのではないのか。

否、前も述べたように三十年をすぎると死刑宣告がされる。

なら、Bランクに下がればいいのではないか。

そこは看守達の頭の良さだ。

一度Aランクに上がってしまうと、その生活環境の違いに驚き、もう二度とBランクに戻りたくないと思ってしまう。

この結末を知らされておらず、Aランクの卒業試験を終えれば社会に戻れると教えられれば尚更だ。

Aランクに上がった瞬間から、私たちの運命は決まっていたのだ。いや、この施設に入った瞬間といったほうが正しいか。

計画の質によってランク付けされ、飼育環境が変化するこの施設、つまり生きるためには完璧に近い犯罪を打ち立てなければならない。

しかしそれを作り上げてしまうと取引所に移され、売られ、奴隷扱いとなる。

下にいても上にいても私たちに真の自由などなかった。

看守達の思惑に気づけなかった自分を憎むということはしなかった。

なぜだろう。もしかしたら、彼らに買われたほうが、より良い生活ができるのではないかと心の隅では思っているからではないか。

見るからに彼らは社会のトップに君臨する大富豪だ。いくら奴隷でも大富豪の奴隷なら中流階級ぐらいの扱いになるのではないかと内心思っている。いや、思い込んでいる。

競りが始まり、人々が口々に値段を叫んだ。そして小槌が打たれると、一人また一人と連れて行かれる。

そんな光景をただ眺めていた。

反逆の意思?

そんなものやったところで無意味だ。

彼らの反逆に対する対処は”完璧”に近い、一人反逆したところでねじ伏せられてしまうことを知っている。

なぜなら私たちは同じ”完璧”を求める人間なのだから…

みなさん、どうお過ごしですか。暑いですね。体に気をつけてください。

ところでこれでこの作品の第一章と呼べる部分は完結いたしました。当初の予定ではこの施設での暮らし、そして脱出だけで物語を完結させようと思っていたのですが、思いの外書くことがなく、すぐに終わってしまいそうだったので、この施設を抜けた後の生き方も書くことにしました。これからは社会で生きていくうちに徐々に変化する主人公の心情に注目して読んでいただければなと思います。

それでは、これからもよろしくお願いいたします。

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